きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

サイレントラブ

ミッドナイトスワン」の内田英治が監督・原案・脚本を手がけ、声を捨てた青年と視力を失った音大生が静かに思いを紡いでいく姿をつづったラブストーリー。
ある出来事をきっかけに声を発することをやめ、毎日をただ生きているだけの青年・蒼。不慮の事故で視力を失ったピアニスト志望の音大生・美夏と運命的な出会いを果たした彼は、絶望の淵に追い込まれながらも夢を諦めない彼女にひかれていく。美夏をすべての危険から守ろうとする蒼だったが、彼女に思いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。そんな蒼の不器用な優しさがようやく美夏の心に届きはじめた矢先、運命の渦が2人をのみ込んでいく。
山田涼介が主人公・蒼、浜辺美波が音大生・美夏を演じ、野村周平古田新太が共演。久石譲が音楽を担当した。(映画・comより)

恋愛映画。普段番組であまり扱う機会が少ないタイプですが、今回は久しぶりにこちらの作品です。声帯を失い声を発する事の出来ない青年と交通事故によって視力を失った音大生の純愛を描いた作品。先週の水曜日に松江東宝5にて見て参りました。

やはりというべきか客層のほとんどは女性。しかし自分も含めて男性の一人客の姿もポツポツと見られました。

声を出せない男性と視力のない女性。故にサイレントラブ=静かな恋となるのですが、役者に求められるのは如何にハンデを背負いながらの自然な演技が出来るかです。しかしそこは山田涼介君も浜辺美波ちゃんもさすがでした!とりわけ山田涼介演じる蒼は声を出せない分如何に顔の表情で感情を出せるかが問われます。それを山田涼介君のナチュラルな演技によって物語とうまく溶けこませていってるのは見た人の多くが納得する事でしょう。とりわけ絶望的な状況に苛まれた時にそれがよく出ておりました。声こそ出せないまでも雨の中でさも絶叫をしたくなる様な表情が見る人の胸を打つ事でしょう。回想シーン以外では全く言葉を発していない山田涼介の感情劇を目に焼き付けて頂きたいです。

一方のヒロインである浜辺美波ちゃん。このところ、「シン仮面ライダー」、「ゴジラ−1.0」等の特撮が続いたのでこういったラブストーリーに出るのは久しぶりな気がしますが、盲目の女性を凛とした佇まいと共に表現していました。

また、カメラワークにも印象的なところがあり、まずは絶望感に追い詰められる美夏がビルの上から飛び降り様とする場面。もちろん彼女の目からその光景を見る事は出来ないのですが、彼女の視点から捉えた階下の様子は映像的なこだわりが感じられました。また、彼女が視力を失ったかを伝える場面。眼科の診察室内で彼女の左目に寄せていき凄惨な事故の場面を映し出していく。見た人に強烈なショックを与える。しかし彼女の視力を失って理由を伝える上でこの上ない説得力のある見せ方だったのではないでしょうか。

こんな二人が織りなすラブストーリーには言葉がない。しかしガランボールの音色だけが効果的にその展開を伝えていく。そんなロマンティックだけど切ない小道具の使い方なども非常に凝っていたなと思います。

それから美夏はピアニストとあってピアノの音色が物語に華を添えてくれます。音楽は久石譲とあって美しい旋律の楽曲が実にピッタリ合う一方でキョンキョンの曲が意外な所で流れたりと変化に富んだ音楽の使い方も良かったですね。

また、彼らの関係に寄り添う野村周平が演じた青年の存在も大きかったですね。はじめのうちこそ癖のあるちょっといけすかない存在だった彼ですが、根は情に熱い。しかし一方での闇の部分も映し出す事で物語にスパイスを与えてくれる様でしたが、ここからはその部分に触れていきます。

というのが割とバイオレンスやグロな部分が出てくるんですよ。ピュアなラブストーリーと思っていたら「ん?これはハイロー?東リベ?」という展開に。そうです。反グレに喧嘩、傷害事件に闇カジノと流れがアウトロー映画に変わっていくんですよ。とある反グレに目をつけられそこから拉致からのリンチ。あ、これ恋愛映画ですからね。まぁ、僕なんかはグロやバイオレンスには耐性があるからいいんですけど、主要な客層は若い女性なんですよ。「闇金ウシジマくん」とか「クローズ」とかって山田涼介君の恋愛映画と思って見にくる女性が普段選ばない映画だと思うんですよ。ここどう思ったんだろうなぁ。

で、後半の流れがツッコミどころが満載でして、拉致からの乱闘というヤンキー映画での鉄板の流れみたいになるのはお伝えした通りですが、蒼が一人泥を被る事になるんですね。しかもその原因って美夏にある。だけど美夏は自己を責めるばかりで他にこれと言って動かないんですよ。いや、おい警察行けよ!と。

それから蒼がお金を用立てする際に週5で夜勤のバイトをする辺り。言っちゃなんだが、毎回5万もポンポンと渡せるくらいにそんな簡単に稼げるんだろうか?怪しいバイトでもしてんのかと疑いたくなりましたよ(笑)

更にラストシーン。ダンプカーが出てくるくだりの不自然さったらねぇ。まずこういう現場って車出す際もっと徹底してるんじゃねぇの?とかさ。

ツッコミはじめたらキリがないくらい出てきますね。で、僕が思ったのは無理にバイオレンスに絡ませる必要あったのかなと。もっと二人の恋愛模様に軸を置いてもよかったんじゃないかな?

う〜ん、なんだか今回は色んな点がモヤッとしてしまいましたね。

ただ、役者陣の演技はホントに良かったです!

是非劇場でご覧下さい!