きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

北野武が構想に30年を費やして監督・脚本を手がけ、「本能寺の変」を題材に壮大なスケールで活写した戦国スペクタクル映画。武将や忍、芸人、農民らさまざまな人物の野望と策略が入り乱れる様を、バイオレンスと笑いを散りばめながら描き出す。
天下統一を目指す織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい攻防を繰り広げていた。そんな中、信長の家臣・荒木村重が謀反を起こして姿を消す。信長は明智光秀羽柴秀吉ら家臣たちを集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索命令を下す。秀吉は弟・秀長や軍師・黒田官兵衛らとともに策を練り、元忍の芸人・曽呂利新左衛門に村重を探すよう指示。実は秀吉はこの騒動に乗じて信長と光秀を陥れ、自ら天下を獲ろうと狙っていた。
北野監督がビートたけし名義で羽柴秀吉役を自ら務め、明智光秀西島秀俊織田信長加瀬亮黒田官兵衛浅野忠信羽柴秀長大森南朋、秀吉に憧れる農民・難波茂助を中村獅童が演じる。(映画・comより)

アウトレイジ最終章」以来の北野武監督の新作映画「首」。思えば私、この映画の公開発表から公開日をまさに首を長くして待ち侘びていました。そして11月23日の公開日。朝イチでMOVIX日吉津にて鑑賞。入場開始から本編の上映開始時間にも高まる期待感が抑えきれないといったところでして映画泥棒の映像が流れ「さぁ、いよいよだぁ!」と映画を見る僕にも気合いが入りまくり!

それではその映画の内容について触れていきましょう。まずこの映画にあたってお伝えするならば北野武監督が作る戦国モノ。「大河ドラマ等で描かれる戦国時代というのは綺麗にまとめ過ぎている」という事。戦国武将を英雄の様に描くし何なら男女のラブストーリーだってある。昨今は歴史好きな女子も多いしそうなると武将はイケメンであってほしいとか姫とのロマンスだって見たい。言わばそういうニーズに訴求しているのかもしれません。何より大河ドラマだと日曜の夜にNHKが放映するわけだからコンプライアンスに逸れる内容を流すわけにはいかない。そうなると必然的にマイルドな描写になるのは無理もない事でしょう。

しかしそこは北野武監督ですよ。リアルな戦国時代なんて斬って斬られての死と隣り合わせにある様な時代ですから生易しいものではない。更には戦国武将というのは男色の気があるというかむしろ男色が力を持つ者のステータスとされていた面もあるわけでしてその辺りもガッツリ踏み込んでいると公開前の会見でもお話しされていました。

まぁ、この時点でエログロバイオレンスな作品になっている事が事前に予想が出来ていました。そしてよく言われていましたね戦国版アウトレイジと。

この辺りは本編開始から比較的早い段階で出て来ました。それこそが加瀬亮演じる信長ですよ。思えば加瀬亮さんと言えば北野組参加前は素朴で真面目そうな好青年役のイメージが強かった俳優さんです。そんな加瀬亮さんのイメージを一変させたのが「アウトレイジ」シリーズでのインテリヤクザ・石原ですね。特に二作目である「アウトレイジ ビヨンド」でのいちびりぶりそしてピッチングマシーンの連投でボコボコにされて殺されるまでがワンセット。とにかくインパクトがありましたよね。この石原の死に方もそうだし1作目の椎名桔平演じる水野のラーメン屋店主のさいばしグサッからの包丁で指ストンまで等アウトレイジシリーズって凄惨なんだけどその後の流れもあって妙な緊張と緩和からくる笑いがアクセントになっていましたよね。

で信長が家臣の遠藤憲一演じる荒木村重の口に饅頭を詰め込みからの〜て流れは正にアウトレイジ的バイオレンスなんですよ。すっげぇ見ててヒリヒリするんですけどこれがクセになるんですよね。

他にも斬首シーンのエグさですよ。これは処刑であれ戦であれ人の首を刎ねる場面はとにかく容赦ない。ついさっきまで生きてた人が次の瞬間首から上があっという間に落とされるこれは名のある武将であれ庶民であれとにかく容赦ない。無慈悲に人が殺されていく。この映画では一体どれだけの死の場面があるんでしょうか?

更に合戦における死体の見せ方だって惨たらしいんですよね。顔に虫が群がるいや、そもそも顔だって原型留めてないし。

更には男色としての性描写もぬかりない。西島秀俊が演じていた明智光秀荒木村重、更には信長と森蘭丸といった具合に。特に後者の方は完全にレイプじゃん。

う〜ん、これが北野武監督による戦国時代か〜、こりゃ大河ドラマでは放送出来ねぇわな。

とここまでエログロバイオレンス面ばかり話して来ましたが、戦国時代ならではの武将同士の腹の探り合い等の知的戦略部分も描かれていましたね。そりゃ皆んな天下統一を目指して日々戦ってたわけですからこうもするわな。荒木村重明智光秀の場合だってそう。男同士の契りや友情よりも光秀が欲するのは天下であり裏切りその為には仲間を売るなんて事もあるよね。それに秀吉も軍師の黒田官兵衛なり弟の羽柴秀長なり更には噺家曽呂利新左衛門なりと周囲にブレーンをつけていても彼らとてあくまで政治的に利用するコマなのであって。

また、今作が持つ戦国時代らしいテーマというのがあってそれが下剋上なんですよね。今でいうパワハラ上司そのものの信長に何故秀吉や明智光秀荒木村重らは仕えるの?といったらこのパワハラ上司亡き後その座に就いてやろうと皆が虎視眈々と狙っていたわけだし、印象深かったのは本能寺の変での信長家臣の弥助ですよ。南蛮貿易の際にイタリア人宣教師・オルガンティノが連れていた黒人奴隷で信長が引き取り家臣にした人物です。「アウトレイジ」1作目の時の様にアフリカ系の俳優さんかと思ってましたけど日本人‥日本とアメリカのハーフなんですが副島淳さんという方が演じていました。で、この弥助が業火の本能寺で信長にまさかの行動を取るんですよね。史実では諸説ありますが、この弥助は本能寺の変まで信長と行動を共にするも生き延びその後の消息は不明とされています。この辺り監督流の下剋上へのロマンが反映された描写となっていたりで割と僕は好きですね。

さて、その後は史実通り山崎の戦い明智光秀は秀吉によって討たれます。この辺りの合戦シーン‥というか今作は全編に渡って合戦シーンが良いですが、ラストでのシーンにおいての秀吉の言動が全てを物語っています。それはこの映画で描かれた首の扱い方更には武将の首を刎ねて刎ねてのし上がる戦国時代や天下取りという物に対しての秀吉の姿を借りた北野武監督の結論の様な気がします。

以上が半年間待ち望んでいた北野武監督最新作『首』の私なりの感想です。再三お伝えした様に過激な場面が容赦なく写されます。グロに耐性のない方にはオススメしませんが、個人的には期待を裏切らない流石は北野武監督と大絶賛したくなる様な作品でした!

気になってたという方は是非劇場でご覧下さい!

それから最後に歴史好きな私から。織田信長っていうと破天荒な魔王というイメージ強いでしょ?近年の研究では我々が思ってるよりもバランスの取れた常識人だったそうですよ。