きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ある閉ざされた雪の山荘で

人気作家・東野圭吾が1992年に発表した同名ベストセラー小説を、「禁じられた遊び」の重岡大毅主演で映画化したサスペンスミステリー。
劇団に所属する7人の役者のもとに、新作舞台の主演の座を争う最終オーディションへの招待状が届く。オーディションは4日間の合宿で行われ、参加者たちは「大雪で閉ざされた山荘」という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件のシナリオを演じることに。しかし出口のない密室で1人また1人と参加者が消えていき、彼らは互いに疑心暗鬼に陥っていく。
オーディション参加者の中で1人だけ別の劇団に所属する久我和幸を重岡が熱演し、中条あやみ岡山天音西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵間宮祥太朗が同じ劇団に所属する個性豊かな役者たちを演じる。監督は「荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE」の飯塚健。(映画・comより)

数々の作品が映像化されてきた東野圭吾の原作。1992年に書かれたベストセラー小説が30年以上の時を経て映画化。今年の1月に全国公開となりました。私は2月に松江東宝5で鑑賞。

投稿が遅れましたが、アマプラで配信が始まったという事なのでこれを機に感想等等お伝え出来ればと。

原作は未読で鑑賞に臨んだのですが、これは結果的に正解だったかなと思っています。

というのが今作のプロットが若手劇団員のオーディションが軸になっているからです。参加する団員達は支持によって連続殺人事件のシナリオを演じる。殺害された人も実際に殺されたのかシナリオに基づいた演技をしているのか見ている側からはわからないんですよね。

それをストーリーを追いながらそして視聴するこちら側が探偵になったかの如く推理していく。ミステリーの醍醐味ここに極まれりとばかりに東野圭吾の作品に没入していく事になります。

第一の被害者の殺害状況から周囲の残留物、団員達のアリバイは?それを各自で整理しながら見続けていく。もちろん登場人物のセリフひとつひとつも重要なヒントになったりします。

果たして物語の顛末は?そしてこのオーディションの目的は?果たしてこの山荘では本当に事件は起きているのか?あなたの目でご確認下さい!

 

…でレビューが終わっちゃうからこれまで扱わなかったんですよね。

でもそれだとあまりにそっけないのでもう少し触れていきましょうか。

路線バスから始まるシークエンスによってこれから起きるミステリーとの対比を生み出していきます。これはこのオーディションに参加する劇団員の人間関係をわかりやすく伝える事も兼ねながら若者らしいコミュニケーションを写す事で後の惨劇とのギャップを効果的に作り出しているんですね。また、それぞれのキャラクター描写や背景等もしっかりと伝わってきます。

そして山荘に着いてからのオーディションにあたっての指令から本格的に物語が動いていきますが、はじめて事件を発端に団員達の疑心暗鬼からの人間関係の崩壊という描写もリアリティがありましたし、若手の実力派俳優陣を配しているだけあって彼らの演技力によって見ているこちらを作品世界へ誘ってくれます。それから女性陣の間で生まれるわだかまりなんかは単に男目線で「女って怖ぇ…」という感想になるのですが、彼女達の場合は同じ劇団に所属するいわばライバルだからこその嫉妬も絡まりそれがより人間関係をドロっとさせていたりこの場面はなかなかリアルですね。

役者陣の演技はさすがは若手の実力派揃い。皆さんホント素晴らしい演技で見せてくれますね。とりわけ岡山天音さんの演技は良かったですね。元から団員の中でもめんどくさ〜い曲者でありその地の部分から他者に疑いの目を向けてからの嫌〜なヤツ感がよく現れていたなと思います。

また、堀田真由さん。彼女もいいですね。最近だと『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』でのくのいちの役が板についてましたが、コメディもいいですが、シリアスな作品だと非常によくハマる。ワガママな女優感たっぷりだし、前述の嫉妬の感情の出し方が光っていたなと思います。

そして一人また一人と退場する内に残ったメンバーで推理を進めていくうちに核心へ迫っていくのですが、この辺りのストーリーの運びもよく描かれていたなと思います。

しかし、しかしですよ!そこからの流れに関しては違和感ばかりで正直ツッコミどころが満載でした!とりわけ事件の真相に辿り着いてからがなかなかのもんでしておいおいとツッコミ待ちなのかと思ってしまったくらいです。それはネタバレになるので詳細には伝えませんが、真犯人の殺害動機の支離滅裂ぶりですね。また、穴だらけなのに誰一人としてその矛盾点を指摘しない辺りですごいもやっとしてしまいましたよ。

それからこれはサスペンスだから仕方のない部分もありますが、会話劇が多すぎるから途中で飽きやすい。更には説明過多になるのはまだ百歩譲るとして回想シーンを設けるなどしてもう少し映像的工夫があってもいいんじゃないかと思いました。

不満点は多々ありますが、役者陣の演技他見所もたくさんありますので、是非劇場で…ではなく配信にてご覧下さい!