菅田将暉と本作が俳優デビューとなる「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseの共演によるダークエンタテインメント。「20世紀少年」など数多くの浦沢直樹作品にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志によるオリジナル脚本を、「世界から猫が消えたなら」「帝一の國」の永井聡監督のメガホンにより映画化。漫画家として売れることを夢見て、アシスタント生活を送る山城圭吾。ある日、一家殺人事件とその犯人を目撃してしまった山城は、警察の取り調べに「犯人の顔は見ていない」と嘘をつき、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34」を描き始める。お人好しな性格の山城に欠けていた本物の悪を描いた漫画は大ヒットし、山城は一躍売れっ子漫画家の道を歩んでいく。そんな中、「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生する。主人公・山城役を菅田、殺人鬼・両角役をFukaseがそれぞれ演じる。
(映画.comより)
いわゆるサイコサスペンスものというとこれまでにも数多くの映画があるわけでして、そのパターンだって多種多様です。実際に起こった事件を題材にしたものもあれば全くのフィクションという作られた世界の中に残虐なシーンを盛り込み見ている人にインパクトを与え、そして作中には考えさせる様なメッセージを提示したりと。
本作『キャラクター』もまた、こういったサイコサスペンスの構成を踏襲しつつも、漫画と猟奇殺人を結びつけたオリジナリティ溢れる内容で今、注目の作品です。
当初は鑑賞予定がなかったのですが、映画ランキングの推移が安定しており、各種レビューでの評価も概ね良いので、7月のファーストデイに松江東宝5にて鑑賞して参りました。
結論から言いますね。 冒頭でお伝えした様にこれまでの数多あるサイコサスペンス作品と比較するとリアリティという点では物足りないかもしれない。 しかし、豪華キャスト陣の演技と連続殺人事件が加速していく過程でのスリリングな展開は見ていて引き込まれていきましたし、何よりセカオワfukaseさんのミュージシャンとして見せる雰囲気と全く異なるサイコパスな佇まいがただただ恐怖を感じさせてくれました。
まずはストーリーの展開ですが、冒頭では菅田将暉演じる一人の売れない漫画家の苦心ぶりがフォーカスされます。
業界では知れた有名漫画家のアシスタントとして下積みをするが、自身の漫画はなかなか評価されない。彼自身がサイコサスペンスを描きたいと思うものの、絵は上手いが、キャラクターに魅力がない。中尾明慶演じる編集者にも指摘されるし、付いてる先生からも言われる。
それは彼自身が真面目な好青年ざっくり言えば「良いヤツ」なんですよね。
だからこそリアルな殺人鬼の描写に説得力が生まれず故に読者には伝わらないと。 ここで示される作品の軸となる部分です。
そんな彼がある事件に巻き込まれた事を契機に人生が変わっていく。 その過程でFukase演じるシリアルキラーの両角の存在が浮上していくというものです。
そしてこのFukaseさんがとにかく怖いんですよ。 彼が最初に登場した時、僕は失礼にもこんな事を思いました。感情のないセリフ回し。そこから「まぁ、本業じゃないからね〜。」 セカオワファンの皆さん、Fukaseさんファンの皆さんごめんなさい。 いわゆる棒演技だと思ってました失礼しました。 でもこれは僕の大きな間違いでした。 本物の猟奇殺人犯。もちろん僕は会った事はありませんが、リアルなサイコパスって全く感情を見せないなんて聞いた事があります。その雰囲気を表現するにはこの作品においてのFukaseさんは間違いなくヤバい人そのものでした。 あまりに不気味でしたので、もうセカオワの曲聴けないじゃんなんて思いたくもなりますが、それとこれは別ですからね、一応念の為(笑)
そして彼が起こす事件の描写が生々しいんですよね。はじめの事件で言えば閑静な住宅街。 扉を開けると大音量でクラシック音楽が流れている。灯りの消えた住宅。その食卓には凄惨な殺害方法により手にかけられた一家四人の姿。 実際に日本でも一家全員が殺害されたいたたまれない事件というのが過去に何度となく発生しています。警察の捜査関係者と事件の犯人しかその光景は目にしていないのですが、まるで映画を見ている我々がその事件現場を目撃したかの様なショッキングな描写でしたね。
そこから展開される数々の事件と山城が描く漫画内での事件とのリンクがとにかく恐怖を煽っていきます。
しかし、私がどうしても指摘しておきたい部分があります。 猟奇的な事件が次々に発生し、しかもその手口が山城が描いた漫画の内容が酷似しているとあれば、ネットを中心に世間の一般層が黙っていないと思うんですよね。ワイドショーでも取り上げられる事だろうし、それにより山城の元へも連日の様にマスコミが押しかけてくる事でしょう。 しかし、この件を問題視し、やいのやいのやってるのが、小栗旬と中村獅童が演じた二人の刑事と山城本人だけ。漫画を連載する編集社に関しては気にも止めないどころか山城へ連載を継続する様促したりとこの辺りリアリティに欠けてしらけちゃいましたかね。 他にも鋭利な刃物で刺されたり銃撃された後、比較的早い段階で回復したりとか。
作品自体は見応えあっただけにそこがちょっと残念でしたかね。
でもそれは僕がやや辛めに見てるからであって気にならない人は気にならないでしょう。 小難しい映画通気取りのツッコミはほっといて皆さんは純粋に作品を楽しんで下さい! 何度も強調しますが、映画自体は良かったと思います。
是非劇場でご覧下さい!