きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

沈黙のパレード

東野圭吾のベストセラー小説を原作に、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が難事件を鮮やかに解決していく姿を描く大ヒット作「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作。

数年前から行方不明になっていた女子高生が、遺体となって発見された。警視庁捜査一課の刑事・内海によると事件の容疑者は、湯川の大学時代の同期でもある刑事・草薙がかつて担当した少女殺害事件の容疑者で、無罪となった男だった。男は今回も黙秘を貫いて証拠不十分で釈放され、女子高生が住んでいた町に戻って来る。憎悪の空気が町全体を覆う中、夏祭りのパレード当日、さらなる事件が起こる。

キャストには内海役の柴咲コウ、草薙役の北村一輝らおなじみのメンバーが集結。前2作に続いて西谷弘が監督、福田靖が脚本を手がけた。(映画.comより)

フジテレビが誇る人気シリーズ「ガリレオ」が9年振りにスクリーンに帰ってきました!

俳優・福山雅治柴咲コウにとっての代表的な作品とあってこの二人のお馴染みのやり取りや何より東野圭吾による哀愁溢れる筋書きを楽しみにしていた人は多いのではないでしょうか?

私もそんな一人でして、シルバーウィーク中の9月18日、台風の影響を考慮しながらもMOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。朝イチの回で比較的早い時間ではありましたが、満席に近い客入りで男女年齢層見てもバランスよく見に来られていましたね。世代を問わずの人気の高さを証明している様でした。

冒頭で出てくるのは2017年にまで遡り本作の舞台となった菊野市で行われた夏祭りでののど自慢の光景。そこで歌声を披露する少女・紗織の姿が映し出されます。緊張してもう一度最初からお願いしますとバンドメンバーにお願いする初々しさから一転。平原綾香の「jupiter」でもお馴染みの組曲「惑星」を実に伸びのある歌声で披露します。審査員である音楽プロデューサーの目にも留まり、そこから着々とデビューに向けて動き出す。さながら一人の歌姫が誕生するまでの過程を見ている様で見ている人を引き込んでいく様です。

で、このまま彼女のサクセスストーリーとして帰結するのであれば良いのですが、そうはさせない。現実はもっと残酷で悲劇的。

予告編でも示されていた様に彼女が事件に巻き込まれ命を奪われた事により、この物語が大きく動いていくのです。

ここまでの見せ方は上手かったです!音楽の才能を持つ少女が一瞬にして命を奪われる残酷さ更に言えば彼女の生誕から亡くなるに至るまでの彼女と深い関わりを持った人達の姿を映し出す事で如何に彼女が周囲の人から愛されていたかをしっかりと示していたと思います。

そしてこの手法敢えて言いますが、絶頂から奈落へ天国から地獄へと突き落とされるかの映像表現はまた別の場面でもうまく機能させるんですね。それは菊野市の名物ともなっている仮装パレードのシーン。各地からこのパレードに人が出向き、各々の仮装パフォーマンスで腕を競い合うんですね。気合いの入った仮装行列が街を練り歩き大勢の人々がそこに歓声をあげる。パレードを盛り上げるMCにも女性DJを起用し、雰囲気は華やかで賑やかでとにかく楽しい!そんな中で現れるけたたましいサイレンを鳴らすパトカーによって恐ろしい現実を知る事になる。

この場面の見ている人の心理的な誘導は光りましたね。

また、湯川・内海が俯瞰的な目線でストーリーを引っ張っていくと同時にフォーカスされていたのが北村一輝演じる草薙の存在。彼にとって当該の事件の容疑者というのは因縁の関係。捜査会議において容疑者の写真を見て嘔吐してしまう辺りに刑事としての自責の念や後悔これらが重なった上でトラウマになっているというのがよく現れていたし、捜査を進めるうちにどんどん顔がやつれ、目にクマが出来、白髪混じりのボサボサ髪に無精髭と疲弊していく過程がまざまざと映し出されていました。彼が何故ここまで追い込まれるのか直接劇中で確認して頂きたいところです。

そして本作で特に比重を置かれていたのが被害者家族の感情というところですね。実の家族の命を第三者によって奪われるというのは経験のない身からすると想像を絶する様な苦しみや悲しみそして手をかけた人物に対しての怒りが立ち込めると思います。もし、事件の容疑者が目の前に現れたら?映画の中ではずんの飯尾和樹が演じていた父親の様な行動に出る事も理解が出来ます。しかしこの容疑者が犯人であるという確証がなければまた悩ましくなる事でしょう。ことほどさように日本の法治国家である以上、例え身内の命が奪われたとて直接手を下す事が出来ないわけですしね。そしてこの司法がまた遺族感情を大きく心を締め付けたりもするところであり、この辺りがしっかりと描かれていたので遺族のやり切れなさと怒りがよく伝わってきました。ただ、僕が思うにこの映画で容疑者とされる人物が紗織を手にかけたのかどうかというのは別に事件後に遺族の元に現れ、感情を刺激する様な態度を取ってる辺りにクズさを感じましたけどね。

そして秀逸なラストへのストーリー展開。第二の事件が起きてからは一体誰が犯人なのか?吉田羊、田口浩正椎名桔平檀れいといった豪華キャスト陣が演じた町の人々への聞き込みから湯川の科学的根拠に基づく推理から事件解決へと動き出していく。当然サスペンスである以上この辺りをお話しするわけにはいきませんが、本作でもやはりその犯人である人物とその背景にあるドラマに悲哀が込められている。過去二作品とりわけ『容疑者Xの献身』(08)での堤真一松雪泰子のストーリーが個人的には印象深く残っているのですが、本作でもやはり同様に心に余韻を残してくれます。

ガリレオ』のドラマ更には映画の前二作品を見た人であれば「実に面白い!」と納得の出来ではないでしょうか。オススメです!