きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ヘルドッグス

岡田准一が「関ヶ原」「燃えよ剣」に続き原田眞人監督と3度目のタッグを組んだクライムアクション。深町秋生の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映画化した。
愛する人が殺される事件を止められなかったことから闇に落ち、復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾。その獰猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のヤクザ「東鞘会(とうしょうかい)」への潜入という危険なミッションを強要される。兼高の任務は、組織の若きトップ・十朱が持つ秘密ファイルを奪取すること。警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスなヤクザ・室岡秀喜に白羽の矢を立て、兼高と室岡が組織内でバディとなるよう仕向ける。かくしてコンビを組むことになった2人は、猛スピードで組織を上り詰めていく。
兼高役を岡田、室岡役を坂口健太郎が演じるほか、松岡茉優北村一輝大竹しのぶ、MIYAVIらが顔をそろえる。(映画・comより)

ここ近年ヤクザ映画が密かに盛り上がっている気がします。『孤狼の血』シリーズであったり昨年の作品ですが、『ヤクザと家族 The Family』に『すばらしき世界』等が大きな話題となりました。コンプライアンス的な問題なのか暴力的な表現等には配慮しつつも、社会の闇を写し出すという点では今後もこういったタイプの作品は製作して頂きたいと個人的には所望しているところです。

そんなヤクザ・アウトロー系好きな私が公開前から気になっていたのが本作『ヘルドックス』です。『関ヶ原』・『燃えよ剣』と司馬遼太郎原作の歴史大作で高い評価を得た原田眞人監督と岡田准一さんの組み合わせならば期待が高まるのは無理ない話しですよ。

シルバーウィーク後半の三連休。9月23日の祝日にMOVIX日吉津にて鑑賞。公開から二週目でしたが、祝日という事もあって結構入ってましたね。客層としては40〜60代くらいの男性多め。ですが、岡田くんや坂口健太郎くんのフィジカル要素を求めてなのか(?)割と女性の姿もありました。

警官がヤクザの組に入って潜入操作…なんて言うと『土竜の唄』の設定を思い出したいところ。しかし、『土竜…』の様にギャグに振り切ったりしない分非常に緊張感があり、ピリついた空気感が作品からは漂っています。更に言えば岡田くんのアクションだと『ザ・ファブル』のイメージが強いかもしれませんが、これまた『ファブル』の様なコミカル演技が岡田くんにはない分、よりアクションに集中する事になるんですよね。

東蛸会内部においてのゴタゴタや抗争劇そこに加わる人間同士の醜くも生々しい感情の露出等一見の価値はあります。そこで鍵となるのが北村一輝演じる東蛸会幹部の土岐の存在なんですよね。彼は兼高と室岡のボスに当たる人物なんですが、北村一輝さんのヤクザがめちゃくちゃハマり役なんですよね。奇しくも同日公開となった『沈黙のパレード』の刑事・草薙と見比べてみて頂きたい。草薙の過去に翻弄されながらも真実と向き合いながら事件解決へ向けて動く姿と本作での土岐の狂気に満ちた表情が同一人物の演技とは思えないくらい引き込まれる名演なんですよね。北村一輝さん来年の各映画賞でも高い評価を受けるんじゃないかなと見ています。

それから松岡茉優ちゃんの存在も光ってましたね。ヤクザの愛人というこれまでにないタイプの役柄でしたが、セクシーでそれでいて血気盛んな野獣の様な男達と渡り合える様な胆力を持ったアネゴ的女性を見事に演じ切っていました。彼女の新しい一面をしかと見せつけた様な名演でした。

MIYAVI演じる十朱のインテリヤクザも板についていましたね。組織のトップならではの狡猾さも見せつつ高い戦闘能力を持つ。彼がミュージシャンである事を忘れるくらいの怪演が光りました。

また、坂口健太郎くんですが、彼もまた好青年イメージを裏切る様なサイコボーイっぷりが際だっていましたね。サイコパスってこんなタイプの人間なのかなと思わせてくれたのが、同年代の若者と対話をするシーンです。そこでの彼はどこにでも居そうな青年。猟奇的な思考と臆せず快楽的に人を痛め殺める様なヤバい奴とはこの場に居た人達は誰しも想像だにしないでしょう。この多面的な顔の切り替えを容易に出来るこれこそがサイコパス。我々の日常にも潜んでいるかもしれないという狂気を感じさせる様な演技でした。それにしても宗教2世という設定があまりにタイムリーでしたね…。

そして岡田くんに関しては言うに及ばずなのですが、本作でもフィジカルなアクションをしっかりと披露しておりました。全編に渡ってキレッキレなのは今回もやはりなのですが、個人的には女性ヒットマンと交わる辺りでのアクションが好きですね。

尚、ストーリーに関してですが、これがかなりややこしい。一回見たくらいでは理解出来ないかもしれません。ですが、例えば『アウトレイジ』シリーズを思い出して下さい。北野武監督一流のヤクザバイオレンスエンターテイメントですが、ストーリーを理解出来てる人はどれくらい居るでしょうか?ストーリーの複雑さを凌駕するバイオレンス描写や不条理な設定等が映画的面白さを加速度的に盛り上げていたじゃないですか?

本作に関しても通じるところがありまして、登場人物達の駆け引きや後半に明かされるまさかの展開等が鑑賞する上で魅了されるポイントなんですよね。

それから個人的な不満点があります。本作は過激なバイオレンスアクションではあるものの、PG12指定とあって比較的エグいシーンは少なめなんですよ。これが残念に思っちゃいまして。例えば室岡のサイコっぷりを煽る為にも穴を掘っての生き埋めシーンはもっとリアルさが欲しかったし、拷問シーンでは鬼畜っぷりをたっぷりとえぐり出してもらいたかったその為にR15指定にしてもよかったんじゃないかなと思いました。こういう点では白石和彌監督とかは躊躇がないんですけどね。要はもっとリアリティを出して欲しかったというのが個人的な感想としてはあります。

なんて欲を言えばキリはないのですが、久しぶりに日本映画でキレのある作品を見て大変満足しています!

是非劇場でご覧下さい!

 

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