きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ナイル殺人事件

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ミステリーの女王アガサ・クリスティによる名作「ナイルに死す」を、同じくクリスティ原作の「オリエント急行殺人事件」を手がけたケネス・ブラナーの監督・製作・主演で映画化。エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていくが、この事件がこれまで数々の難事件を解決してきたポアロの人生をも大きく変えることになる。ベルギー訛りの英語と口ひげがトレードマークの探偵ポアロ役を、前作「オリエント急行殺人事件」同様にブラナーが自ら演じた。そのほか、第一の被害者であるリネット役に「ワンダーウーマン」のガル・ギャドット、その夫サイモン役に「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーなど豪華キャストが集結。(映画・comより)

日本でも人気の高いジャンルのひとつ、それはミステリー。かつては『古畑任三郎』に「じっちゃんの何かけて!」なんて流行語もありましたし、毎年公開される劇場版は興行収入80億以上は固いキラーコンテンツ名探偵コナン』等。更には『相棒』も『科捜研の女』も20年を超える長寿シリーズ。更にここ近年は謎解きブーム。このコーナーでも扱った『あなたの番です』の劇場版がヒットしたのも記憶に新しいですね。

この様にミステリーというジャンルは日本人とも非常に相性が良い。皆ストーリーを追いながら謎を解いていくのが大好きなんですね。

で、本作『ナイル殺人事件』の前作にあたる『オリエント急行殺人事件』も2017年の年末に公開され、正月映画としてヒットとなりました。アガサ・クリスティが書いた推理小説の古典的作品をリメイク。豪華俳優陣が扮する容疑者の存在も光るものがありました。

そして長らく延期に次ぐ演技で公開が待たれていた『ナイル殺人事件』が遂に公開となりました。『オリエント急行殺人事件』に続いて本作の製作を手掛けたのは俳優として監督として絶好調のケネス・ブラナー。もちろん主人公・ポアロも彼が演じています。舞台出身ならではの演出で妖しげなしかしその変人ぽさと完璧主義な人物像が何ともハマり役です。最近では2020年の『テネット/TENET』で演じた悪役が印象的ではありますが、今やポアロ役がすっかり板についた感があります。

さて、前作『オリエント急行殺人事件』でも思いましたが、風景の撮影が魅力的です。『オリエント』では列車の走る雪原を捕らえたアングルがあたかも旅をさせてくれるかの様なショットで個人的にも大好きでした。一転して本作の舞台はエジプトとあり、ピラミッドや砂漠更にはクルージングをするナイル川の光景等ひとつひとつに観光映画かの様な見せ方をしてくれます。そのあたりですが、鑑賞者に対してのストーリー以外の映像美を楽しんでもらおうと言う監督なりの気遣いが感じられ、非常に気持ちの良いものでした。

そんな中でどの様に事件が起こり、ポアロの推理劇が展開されるのか期待値も上がります。そんな中に出てくる豪華キャスト陣。ガル・ガドットアーミー・ハマー等のハリウッドの第一線で活躍する面々に若手からベテランまでのキャストが華やかに集結します。前作同様、ハリウッドの一流の布陣が作品をガッチリと固めてくれます。とりわけガル・ガドットの存在は目を奪われましたね。そう、あのワンダーウーマンですよ!当然ワンダーウーマンでもあのセクシーな容貌が目を引くわけですが、本作ではまたガラッと変わり、セレブリティなドレスをまといより妖艶に存在感を放つ。オジサンすっかり虜になっちゃいました(笑)また、1937年が舞台となっており、その時代ならではのモダンなジャズが起用され、作品を彩ってくれていましたね。

と、この様にストーリーを盛り上げる為の御膳立てはバッチリ!肝心のストーリーはどうだったのか?

結論から言いますね。豪華客船のクルージング中に起こる連続殺人。凡庸なミステリーに終始するのではなく、愛するが故に犯す過ちというテーマを取り入れる事でドラマチックにそしてスリリングに展開される内容は面白かったです。

ネタバレになるので詳細は控えますが、本作の核な部分って愛と殺意なんですね。男女の恋愛感情のもつれからやがて殺人にまで発展するというのは決してない話しではありません。元の交際相手から新たな恋人を作りやがて結婚へ。一見すると結婚したカップルは幸せに満ちている様に見える。だけどその裏では傷つく人も居て100人居て100人全てに祝福される結婚なんてもしかしたらないのかもしれません。好きだった相手が結婚してしまった…そんな絶望感がやがて殺意に変わり…恐ろしいけど人と人の間であれば決して非現実的な話しなんかじゃないんですよね。愛と狂気は隣り合わせにある事を提示させながら普遍的なテーマでもある事を我々は胸に刻まれていくのです。更には昨今の状況も踏まえての多様性に関する問題提起も盛り込まれていました。

と、この様にテーマの着眼点は非常に良かった一方、不満点もあります。全編通して決して退屈はしなかった。正直言うと『オリエント急行殺人事件』の時はテンポが合わず、劇中に睡魔に襲われてうとうとしてしまいました。それに比べると本作はストーリーのテンポは良かったし、前述の様に音楽ありエジプトの風景もよしと見所が充実していて決して飽きさせない作りではありました。ただね〜…。事件が発生するまでが長いんですよね。何なら途中までサスペンスである事を忘れそうなくらいでしたもん。更に事件が起こってからの伏線回収が駆け足になってしまい、やや強引である感が否めませんでしたよ。全体的には楽しめていた分そこが勿体なかったですね。

まぁ、最後は不満を挙げましたが、サスペンス好きな方にはオススメします!