1997年に放送されたテレビドラマのほか、映画版も大ヒットを記録してきた人気警察ドラマ「踊る大捜査線」。同シリーズの中心人物のひとりで、柳葉敏郎が演じる室井慎次を主人公に描いた映画2部作の後編。
警察を辞めて故郷の秋田に戻り、事件被害者・加害者家族の支援をしたいという思いから、タカとリクという2人の少年を引き取り、暮らしていた室井慎次。しかし、彼の家のそばで他殺死体が発見され、さらにかつて湾岸所を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・日向杏が現れたことから、穏やかな日常は徐々に変化していく。かつての同僚であり今は秋田県警本部長になっていた新城に頼まれ、警視庁捜査一家の若手刑事・桜とともに捜査に協力することになった室井。そんな彼のもとに、服役を経て出所してきたリクの父親が訪ねてくる。
柳葉や筧利夫、真矢ミキらシリーズおなじみのベテランキャストたちに加え、日向杏役の福本莉子、タカ役の齋藤潤、桜役の松下洸平ら新たなキャストも出演。メインスタッフにも、プロデュースに亀山千広、脚本に君塚良一、監督に本広克行と「踊る大捜査線」シリーズを支えてきた顔ぶれがそろった。(映画.comより)
12年ぶりの踊るレジェンド「室井慎次」二部作の後編です。今回は公開日の11月15日の前の11月8日〜11月10日に先行上映をしてからの本上映。私も11月9日土曜日にMOVIX日吉津で鑑賞して参りました。
さて、はじめにお伝えしておきます。今回はかなり酷評になります。更にはネタバレありでガッツリと話していきます。なので既に今作鑑賞済みで今作に対して肯定的な方、またこれから見る予定の方は視聴をオススメ致しません。
まずは全編にあたる『室井慎次 敗れざる者』。先月レビューをお届けしましたが、僕は割と肯定的に受け取りました。湾岸署でバリバリやってた室井さんが郷里の秋田に戻りスローライフを送るところを映しながらも忍び寄る不穏な空気。静かな田舎町で事件が…?室井さんの戦闘服とも言える黒のロングコートも業火に包まれ、そして後編へ!…掴みは悪くなかったと思います。加藤浩次が演じていた男は一体何者か?きっと後編にあたる今作で往年の踊るシリーズさながらの盛り上がりを見せていくんだろうなとか青島の登場はあるのか?等等期待は大きかったです!
ではそれがどうなっているのか。答えをお伝えします。全っ然盛り上がりません。それどころかこれでもかとばかりにツッコミ点満載だし、ラストに関しては今年…いやここ近年見た作品の中でも最悪レベル。ではその辺お伝えしていきますね。
まずは室井さんが里親制度を利用して世話をしている二人の少年、その内中学生のタカが前編ではかなりいい感じになるクラスメイトの女の子が居ましたね。彼女との淡い恋が唐突に終わります。何の予兆もなくですよ。せめてここ彼女の心理的機微を写すべきでしょ?女の子がちょいちょいサインを見せながらそれに気付かないリクが結果、失恋してしまうという段階があればわかりますよ。不器用なのはリク君ではなく作り手かよって話しね。尚、リクを演じた斎藤潤君は良かったです。「カラオケ行こ!」でも良い演技をしていましたからね、今後が楽しみな俳優さんです。
それから今時露骨過ぎる不良の描写ね。いしだあゆみさんが演じる地元のおばちゃんが経営するコンビニに如何にもなガラの悪い不良が現れるんですけど、「GTO?」「クローズ?」「今日から俺は?」で、室井さんと一悶着あるんですが、後述しますが、なかなかひどい!
後、不登校だったリクが小学校へ行きます。しかし、些細な事からいじめられてしまうんです。で、室井さん何て言ったか?やり返して来いですよ。いやいやダメでしょ、報復する事を肯定するんですか!担任の先生に相談するなり学校側で対話の機会なりを作ってもらう様にした方がいいんじゃないですか?すべからくそうでしょ?で、室井さんよ「何かあったら俺に言え」子供にいざこざに入るのはダメ!いくら相手の子が悪くとも大人が入ったら今は大問題になりますから!
それから福本莉子が演じた杏。前編では猟奇的殺人犯・日向真奈美の娘らしい怪演を見せてくれた彼女。しかし、今作では…すっかりいい子ちゃんになってるんです。そもそも彼女は母・真奈美に洗脳されていて…なんてこれまたおざなりな理由で奇行に走っていた…う〜ん、言いたい事あるんだけどまぁいいや5000歩譲ります。
で、そんな彼女に室井さん、猟銃を持たせるんですが、これがまたやばい。「大事な人を守る為に云々」と銃を肯定する様な事言うんですよね。
それから加藤浩次。りくの父親として現れるんですけど、児童相談所。児相の面々の判断おかしいだろ?彼は前科があるけど改心してりくを迎えに来た…でもさ児相に生活保護の相談してる段階で少しは危惧しろよ!生活面での不安はまず大きいよね、りくは経済的に苦労するのは目に見えてるよね。
で、案の定りくが室井さんとこ戻ってきて加藤浩次が連れ戻しに来る。その時に福本莉子ちゃんが猟銃を加藤さんに向けて撃つんだけどまずその時点で彼女は罪に問われるわけだけどその後何のお咎めもなし。
そしてラストですよ。室井さん達が飼っていたワンちゃんが加藤浩次によって外に放たれる。室井さん吹雪の中探しに行く。まずね、秋田犬ってそんな遠くまで行かないし、室井さんはそんな無謀な行動に出ない。少なくとも過去のシリーズで見てきた俺たちの知ってる室井さんの行動パターンではないから!
でね、今回思ったのが室井さんと接した人達おしなべて改心するの、前述の不良グループも福本莉子ちゃんもしかも特に深い言葉を言うわけでもなくさ。後、前回意地悪だった村人達も特に大きなきっかけがあったわけでもないのに、メチャクチャ良い人になってんのよね。人間ってそんな単純じゃないんだよ、人物描写があまりにも浅過ぎますね。
それから劇中で出て来る事件という事件が有耶無耶にされ過ぎ問題…てか労せず解決してたりするんですよ。かつて宇多丸さんが「踊るTHE MOVIE3」を評した時にうまい事言ってましたよ、青島刑事風に。
「事件は主人公が解決するんじゃない!勝手に解決していくんだ!」今回もそれ!本広演出&君塚脚本、12年経っても変わってない!それにさ〜、小泉今日子演じる日向真奈美が出て来る。いつまで1998年引っ張んのさ、確かに福本莉子演じる杏は日向真奈美の娘だよ、でもあくまで真奈美の方は姿を見せないで名前だけが出てくるくらいが良かったんじゃないの?「THE MOVIE3」に続いての何かあれば日向真奈美というのもどうよって話しだよ。
いやね、僕は12年振りに踊るシリーズやると最初に聞いた時、不安と期待半々でしたよ。不安というのは12年前のTHE FINALが散々な内容だったからでもねその不安は全くの杞憂でしたね…って言いたかった!でも違いました!悪い意味で全然変わってなかった!
あのね〜、このご時世映画代高いんだよ!ビジネスなのはわかるけど、俺たち映画ファンは映画を見るプロだ!映画を作るプロは本気でぶつけてくれよ!ましてや前後編にして映画二本分の鑑賞料金を取るんだったら尚更だよ!
後ね、柳葉敏郎さんは室井慎次という役のイメージを崩さない為に悪役やヤクザの役は一貫して引き受けてこなかった。この辺り素晴らしい役者魂だと思います。
そんな柳葉さんから室井慎次という鎧を外してあげたかった…その意味であのラストは納得です。ただね〜、その見せ方があまりに杜撰。室井さんをもっとカッコよく送り出してあげたかったよ。
で、ラスト。グリーンのコートを着た彼が出てきます。そして踊るシリーズの新作を示唆するフレーズで幕を閉じます。でもね〜、もはや不安しかないですね。今作で明かされますが、すみれさんは刑事を退職、そして今作で室井さんは…じゃあ青島は誰と動くんだい?
期待はしない…けどでも結局は見に行くんだろうなぁ。結局は踊るシリーズが好きだからという事ですが…。
という事で踊るシリーズ、ドラマとスペシャルドラマ、THE MOVIEの二作目までは…オススメです!