きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ブレット・トレイン

作家・伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」を、「デッドプール2」のデビッド・リーチ監督がブラッド・ピット主演でハリウッド映画化したクライムアクション。
いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。
共演に「オーシャンズ8」のサンドラ・ブロック、「キック・アス」シリーズのアーロン・テイラー=ジョンソン、「ラスト サムライ」の真田広之ら豪華キャストが集結。(映画・comより)

久しぶりに胸弾むハリウッドアクションの紹介ですね!とは言え原作は伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』とメイド・イン・ジャパンの作品。尚、伊坂作品初のハリウッド進出です。そして監督は『ジョン・ウィック』、『アトミック・ブロンド』、『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ

主役のレディバグのブラッド・ピット真田広之マイケル・シャノン更に歌手のバッド・バニー、サンドラ・ブロック等の豪華な顔触れが揃います。僕は、9月7日FMの生放送後、T-ジョイ出雲にて鑑賞して参りました。少し前までの夏休みの盛況も落ち着き、サービスデーとは言え平日午前のゆったり鑑賞。やっぱ映画は落ち着いてみたいよね。

ブレットトレイン弾丸列車そのタイトルに偽りなし。弾丸の如く目にもとまらぬスピーディーな展開で日本の新幹線を思わせる高速特急列車という舞台装置を巧みに使いながらのっぴきならない東京-京都の死と隣り合わせの東海道の旅が見ている人を引き込んでいきます。

何の因果でこんな事に…と不運と不運が重なりレディバグにそのインシデントが襲いかかる。一歩間違えばコントの様になりがちな展開をシリアスさとユーモアを絶妙なバランスでブレンドし、一流のハリウッドエンターテイメントが展開されていきます。

その合間合間には「きかんしゃトーマス」やレモンとみかんといった小ネタを挟みながら、運と運命というテーマを軸に展開していきます。各々の登場人物には前日譚があり、それが偶然か必然かはたまた神のいたずらか同じ列車に乗り合わせる事によって複雑でそれでいてニヤリとさせるシナリオの運びで群像劇を構成していました。

ハリウッド映画であり、日本の作品が原作で日本が舞台。だけどいわゆる実写邦画で見る様な日常の延長的な描写ではなく、どこか非現実な日本なんですよね。ピカチューやジバニャン等を思わせるキャラクターも如何にもヤツだし、トンデモニッポンをここぞとばかりに露にしてくれます。もしかしたらここに違和感をおぼえる人がいそうなんですが、実はこれって狙って作ったトンデモな描写なんですよね。

これは数奇な運命を巡る現代の話し。伊坂幸太郎は原作において列車は架空のものであるとし、またそこで起こる奇想天外なストーリーは現実の世界とは異なるものであると伝えています。つまりはフィクションである事を全面に出して現実の誇張や飛躍を大胆が過ぎるくらいに遊んじゃえというスタンスが溢れているって事ですよ!だからこそ件のジバニャンっぽいキャラクターが社内にも居るし、日本人の金髪女子が社内販売をしている。当初はある程度、現実をなぞって模倣した描写が目立っていたのが、物語が加速して取り返しのつかない所まで到達するとそれに伴ってよりカオスになっていく。ここは徹底して計算されていましたね。

さて、本作はところどころでジャパニーズフレーバーを漂わせていましたが、劇中の音楽もやはり日本の名曲が使われておりました。冒頭のシーンこそビー・ジーズの「STAYN' ALIVE」が『サタデー・ナイト・フィーバー』よろしくスタイリッシュに流れておりましたが、まさかの場面でカルメン・マキの「時には母のない子のように」。アクティブなシーンで流れる麻倉未稀の「ヒーロー」そして海外で最も有名な日本の流行歌・「上を向いて歩こう」。海外でも人気という点で言えばBABYMETALとかきゃりーぱみゅぱみゅ等の方がよりポピュラーな気はするんですが、敢えて往年の名曲をチョイスした辺りがセンスを感じますね。ところで「ヒーロー」ってカバーですよね?アメリカの人は麻倉未稀バージョンをどの様に聴いたのか気になります。

とこの様に全編に渡ってエンタメに徹していてこの列車に乗った事を後悔する事なく満喫はしたのですが、どうしても気になってしまったのが、それぞれのキャラクターの背景となるエピソードを伝える為に逐一過去に戻った事です。テーマが運命の巡り合わせであるなら安易に回想シーンだけに頼らず他の手法があったのではないかと思っちゃうんです。何かしらの過去に起因する為の道具を使うなりあれば、よりスマートだったし、スピード感も生み出せたのではないかなと思います。う〜ん、勿体ない!

なんて惜しい点は触れましたが、ブラピのフレキシブルなアクション、ともすればB級の臭いすらする日本描写に音楽、スリリングなストーリー等見所満載な作品!ポップコーンやドリンクを持参してこの列車にご乗車下さいませ!

オススメです!