「ミニオンズ」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のイルミネーション・スタジオによるオリジナルの長編アニメーション。渡り鳥なのに小さな池から一度も出たことがないカモの一家が、初めての大移動に乗り出す姿を描いたファミリーアドベンチャー。
アメリカ北東部、ニューイングランドの小さな池に暮らすカモの家族。父親のマックは、興味本位で池を飛び出したカモの悲惨な末路を子どもたちに語って聞かせるのが日課で、池にいれば一生幸せに暮らすことができると信じていた。ところがある日、彼らの暮らす池に移動途中の渡り鳥が立ち寄り、その自由な姿に妻や子どもたちは大興奮。自分たちも外の世界を見てみたいと言い始めたことから、一家はカリブ海の楽園ジャマイカを目指し、3000キロの大移動に乗り出すことになるが……。
オリジナルキャストはマック役に「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」「エターナルズ」のクメイル・ナンジアニ、妻のパム役に「ピッチ・パーフェクト」シリーズのエリザベス・バンクス。日本語吹き替え版はマック役を堺雅人、パム役を麻生久美子、好奇心旺盛な息子ダックス役を「怪物」の黒川想矢、おてんばな娘グウェン役をミュージカル「SPY×FAMILY」アーニャ役の池村碧彩がそれぞれ担当。そのほか羽佐間道夫、野沢雅子、関智一、鈴村健一ら豪華声優陣も吹き替えに参加している。(映画・comより)
イルミネーションスタジオ制作の最新作は鳥の親子の物語。これまでイルミネーションと言えば動物達が暮らす街での音楽劇『シング/SING』であったり人間達が不在の中のペットが巻き起こす騒動を描いた『ペット』等がありました。つまり動物の擬人化は言わばお家芸の様なところがありましてもちろん今作も鳥が喋るし人間の様に感情を持つ。鳥の目線による壮大なアドベンチャーという事でイルミネーション作品大好きな僕はもちろん見て参りました。3月18日の月曜日。MOVIX日吉津にて鑑賞。春休みに入るタイミングなのでキッズや若者が多いかなと思いましたが、いつもの平日の入り。それもあって落ち着いて鑑賞出来ました。
さて、今作冒頭で描かれるのは父・マックの消極的なスタンスです。カモの一家として池で平穏に過ごしている彼ら。身の回りには危険な事なんてないし一生ここに居ればいいというのがマックの考えです。そういった事から池を離れた世界はとにかく危ないという事を常々子供達に伝えている。だけど子供達や妻のパムは好奇心旺盛。外に出たくて出たくて仕方ありません。そして遂にマックは意を決して家族で飛び立つ事を決心するんですね。そしてこの場面こそが後に伏線となって活きていきます。
その後の彼らは大空を飛び陸から陸へと降り立っていきます。その場所その場所で様々な種類の鳥達と出会い交流を果たしていくのです。さながらその流れは鳥目線の旅をテーマにしたロードムービー。そしてこのひとつひとつのグラフィックがとにかく美しい!大空を飛ぶ彼らの目から見たその視点を交えての飛行シーンは見ている我々がさながら空を飛んでいるかの様な描写。非常に工夫が施されていきます。
また、その折々で「立つ鳥跡を濁さず」、「鴨がネギを背負う」、「飛ぶ鳥を落とす勢い」等鳥に関連する諺や慣用句を取り入れてくる。その使うタイミングも絶妙なんですよね。なんて言えば去年夏に見たディズニー作品『マイ・エレメント』なんかもそうだったななんて思い出し。もしかしたら『マイ・エレメント』に触発されていたりして?
そして登場する鳥の種類もキャラクターとしての魅力に溢れていましたね。明らかに怪しくてもしかしてこいつがヴィラン?なんて思わせるサギ(野沢雅子さんの悟空声での怪しさ全開のキャラがくせになりそうでした)、都会に潜むハト達そしてこのハト軍団をまとめるボスキャラにはヒコロヒーというキャスティング。そして一見楽しそうに暮らすアヒルにクジャク、ペンギン等等。鳥類達の交流が見ていてとにかく楽しかったですね!
しかし、そんな鳥達の天敵として現れるのが何と人間なんですね。僕の好物は鶏の唐揚げにチキン南蛮にチキンカツにフライドチキンにナゲット…ごめんなさい!そうです僕達人間は日常的に鳥を食べてますね。鳥を食材として調理しようとするシェフが最大のヴィランとして現れるのです!鳥達を捕獲する為にゲージを用意して追いかけ回す彼の姿が非常に憎たらしく描かれます。こいつは何てひどいヤツなんだと見てるくせにでも今日から鶏肉食べるなよと言われたらうん、それは無理です…なんて思いながらストーリーを追うのは僕ちゃんでして(笑)いや〜、これからも僕は鶏肉食べるよごめんね鳥さん達。でもこの描き方はすごいわかりやすかったし、楽しめましたね。
そして登場する鳥達は人間によって調理されかけるというピンチに見舞われますが、イルミネーションらしく残酷な結末を迎える事なく危機は脱します。
とこの様に池を飛び立ったカモの一家ではあるものの、これはひとつのテーマに直結します。
それは当初の父・マックの後ろ向きなスタンスに繋がるのですが、確かに安全な場所に居ると身の危険もないし平穏な暮らしをする事は出来る。だけど視野を広げる事が出来なかったりとか成長を阻む事にもなるんですよね。ここでの池というのはぬるま湯と言い換える事が出来ます。
つまり人間に置き換えると困難を伴う事も苦渋に満ちた経験も確かに人生にはある。しかしそれを恐れて楽な場所に居続けるのは人間的には成長が出来ないというメッセージが描かれているんですね。失敗やリスクを恐れて何もしないのではなくまずはマック達の様に飛び立つという選択肢を持つその重要性を伝えています。そしてマック達がシェフの手によって調理されるというピンチも仲間と助け合えば乗り越える事が出来るという前向きなメッセージ。ここでの仲間とは家族であり彼らの旅の中で出会う他の鳥達であったり。そうです、マックは初めのうちこそ消極的だったのが、旅を通じて家族との結束であったり方々での鳥達との交流を通じて池での平穏での生活の中では得られなかったものを手にするんですよね。
そうして見れば如何でしょう?子供向け映画ではあるものの大人にも刺さる内容だと言えるのではないでしょうか?特に今人生に悩み迷ってる人が居れば見て頂きたい。あなたもその翼で自由に空を羽ばたいて行ってほしいです。
いい映画を見て人生を豊かにする。一石二鳥じゃないですか?鳥だけにね!
オススメです!