きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

トロールズ ミュージック☆パワー

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ボス・ベイビー」「ヒックとドラゴン」のドリームワークス・アニメーションによるミュージカルアドベンチャーアニメ「トロールズ」のシリーズ第2弾。歌と踊りとハグが大好きな妖精トロールズが暮らすポップ村で、元気いっぱいなみんなの女王として日々を過ごすポピー。実はトロールズの村はかつて王国として繁栄していたが、音楽のジャンルごとに6つに分裂した過去があった。自分たちとは違うジャンルの歌や踊るをするトロールズがいることに興味を抱いたポピーだったが、ロック村の女王バーブが、ほかの村を乗っ取ろうとしていることを知る。ポピーは世界を守るために仲間とともに旅に出るが……。監督は前作「トロールズ」で共同監督を務めたウォルト・ドーン。ポピー役は「ピッチ・パーフェクト」シリーズなどで歌声を披露してきたアナ・ケンドリック。ブランチ役を務めるジャスティン・ティンバーレイクが、音楽プロデューサーも担当している。日本語吹き替えキャストは上白石萌音ウエンツ瑛士のほか、仲里依紗、兄弟お笑いコンビ「ミキ」の昴生亜生らが務める。
(映画.comより)

実はこの作品、二作目になるんですね。
というのも前作は本国・アメリカでは劇場公開されたものの日本では劇場で未公開。
試聴するにはソフト或いは配信サービスのみとの事で一般的に知られていない様です。
しかし、この二作目の方はアメリカでは新型コロナの影響で劇場未公開。
ソフト化はされている様ですが、その辺りでトラブルに発展しているとか。
そして日本では劇場公開とあいなったわけで前作と逆転現象が起こっている様です。

さて、そんな本作ですが、実は僕は前作未鑑賞。
しかし、結果的にはかなり満足感のある内容でした!
というのもこの作品。
音楽が好きなら間違いなく楽しめる内容となっておりまして、使用楽曲がかなり豪華!
最新ドコロからMCハマーやシンディ・ローパーの様な懐かしいトコロまで。
選曲の幅広さで言えばイルミネーション作の『シング/SING』に匹敵するかもしれません。
ただ、『シング/SING』は動物達が歌という表現で音楽を全面に打ち出していたのに対し、本作では音楽そのものが意思を持ち、それを軸にストーリーを展開していくところ。
そしてそのストーリーというのが非常にメッセージ性があり、かなり深いものがありました。

本作に登場するトロールズの村それぞれが音楽のジャンルで分かれており、そこに暮らすトロールズは各ジャンルの音楽を好み暮らしているわけです。
しかし、ロック村の女王・バーブが全ての村をロックで征服しようという野望を持ち、動きます。
何となく勢いのあるロックを悪役に仕立てるわかりやすさもいいですが、それぞれの村が特色があっていいんですよね。
カントリー・テクノ・クラシック・ヨーデル等がありますが、それぞれの村が共通して自分達の愛するジャンルが絶対と信じて疑わない事そして他ジャンルは認めないという排他的な所があるんですよね。

これ、まさに我々人間の音楽的嗜好そのものを現していますよね。
人はそれぞれに好きなジャンルとかアーティストがあり、それを徹底的に好みます。
だけどどうでしょう?
それ以外の音楽ジャンルの接し方については。
「歌のない音楽は…」「洋楽は苦手…」「アニソンはちょっと…」「演歌は年寄りが聴くもの…」とか偏見を持っていたり。
僕の友人でも居ましたよ。
「ヒップホップは音楽じゃない!」とか「ユーロビートはヤンキーが聴くもの」みたいなね(笑)
かくいう僕だってある特定のジャンルが苦手で自分の番組ではかけないなんてこだわりがあったりします(何のジャンルかは言いませんが・笑)

それって自分の好きなジャンルが好き過ぎて他ジャンルが苦手。
まだそこでとどめておけばいいのにわざわざ悪態をつく必要とかともすればそのジャンルやアーティストを好きな人の人格まで批判するのは間違ってますよね。
本作ではまさにそんなメッセージが盛り込まれておりました。

そしてこれはあくまで音楽を引き合いに出してはいるものの大きく人の価値観の多様性を認めるという事が置き換えられますよね。
人が好む音楽って実はその人自身のパーソナルな部分を反映していて
好きな音楽=その人
という価値観を象徴しているものでもあるんですよね。
すなわちその人の嗜好や性格を理解し、その人を尊重しましょうという事。
多様性のある時代だからこそ色んな人の価値観を認めていきましょうというメッセージなんですよね。
更にアメリカで製作された映画なので人種的な問題やマイノリティへの理解とか『ズートピア』に通じる様なテーマと言えるかもしれません。

更に本作で興味深いのは音楽史の本質的な部分にも切り込んでいるところですね。
主人公の女の子・ポピーはポップ村の女王。
そんな彼女はキラキラした音楽が大好きでポップミュージックこそが絶対と信じて疑わないわけです。
しかし、彼女は音楽の歴史を突きつけられます。
ポップミュージックそのものがこれまでの歴史で他ジャンルを駆逐し、大きくなっていったという事。
実は本作でロック村がしようとしていた事そのものをかつてのポップミュージックがしてきたというのですが、こんにち隆盛を極めるポップミュージックはまさにそうなんですよね。
クラシック・ジャズ・ブルース・カントリー等の音楽から主導権を奪い音楽の中心になっていったという歴史。
これを彼女がどう受け止めるかは作品を見て頂くとしてこんにちの音楽への皮肉や警鐘も織り混ぜたその作りは唸らされました。

子供向けではあるものの、大人が見てももちろん楽しめるとりわけ音楽好きな方なら見るべき一本です!
強くオススメします!