きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

バービー

世界中で愛され続けるアメリカのファッションドール「バービー」を、マーゴット・ロビーライアン・ゴズリングの共演で実写映画化。さまざまなバービーたちが暮らす完璧な世界「バービーランド」から人間の世界にやってきたひとりのバービーが、世界の真実に直面しながらも大切なことは何かを見つけていく姿を描く。
ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。
レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のグレタ・ガーウィグが監督を務め、「マリッジ・ストーリー」のノア・バームバックとガーウィグ監督が共同で脚本を手がける。(映画・comより)

番組でも話した例のミームの炎上以来何となく日本では腫れ物の様になってしまった「バービー」。アメリカでの記録的大ヒットに対して日本での興行は淋しいものになっている様ですが、私は以前から楽しみにしていた作品。例の一件は確かに残念なニュースではありましたが、作品自体に罪はないですし、番組での宣言通り公開翌日の8月12日にMOVIX日吉津にて見て参りました。

騒動が影響したのかどうか客の入りはやはり少ない。公開二日目の土曜日。しかも多くのところがお盆休みに入っていたであろうタイミングで淋しい限り。心なしか物販に並んでいたバービー人形も悲しそうな表情をしている様に見えました。

さて、ここからはガッツリ内容について話しをしていきます。

まず、冒頭ではバービー人形誕生以前の女の子と人形の接点を「2001年宇宙の旅」のパロディー仕立てで伝えます。赤ちゃん人形しかなく女の子はそれをおままごとのツールとして接しています。しかしバービー人形誕生というものが革新的なものであっだという事を「シン・ウルトラマン」での長澤まさみよろしく巨大化したマーゴット・ロビー演じるバービーが示してくれます。赤ちゃん人形一辺だった女の子のお人形事情を大きく揺るがす出来事であった事を見せているのですが、女児達は赤ちゃん人形を破壊するアクションを起こします。割とショッキングな場面です。でもこれって家事や子育ては女性がするものという価値観にクソくらえという姿勢を示す言わば今作においての大きなテーマを提示していくんですね。

そして変わってのバービー達が暮らすバービーワールドへ。ここは多種多様なバービーが生活し、活躍する社会。大統領もバービー、医者もバービー、ノーベル賞を受賞するのもバービー。そんなバービー達が夜な夜な繰り広げるダンスパーティーも「サタデーナイトフィーバー」のオマージュ風にしてとにかく派手できらびやか。

だけどこんな華やかなバービーワールドから人間の世界へバービーが行く事になってから大きくストーリーが動き出すんですよね。

そこでポイントになるのが、ケンの存在。バービーワールドにあってケンはバービーのあくまでおまけ。だけど彼もまた人間社会に行く事で強い影響を受けてしまうんです。

さて、人形ではなく人間である僕達が暮らすこの世界はどうでしょう?国や文化の違いはありますが、大統領や首相の様な国の宗主、政務にあたる大臣に経営者に大学教授等等。もちろん女性の活躍も目覚ましいですが、まだまだ男性が中心になっている様相が強いです。映画ではまさに人間社会の男性が社会的に力を持つそんな実態を映し出しています。かたやバービー。女性の自立を後押しした存在として自負してるからこそこれを目の当たりにした事でショックを受ける反面、刺激を受けたのはケンの方。

バービーワールドではバービーのおまけであるというポジションを何の疑問を抱かず受け入れていたのがこの価値観に刺激を受けてしまうわけです。

そして作ったのがケン主導によるケン達による国。そしてバービーは元の世界に戻すべく動き出していくんですね。

まぁ言ってみればジェンダーをテーマにしている映画です。

でもこれって如何にも現代的な視点だなと感じました。

そして思いました。ケンの国になった時に男性にお茶を入れる女性、男性達がスポーツに興じてる時にチアリーダーをしてる女性を見て何の違和感も抱かなかった自分がまだまだ旧来の考えに支配されていてアップデートしなければと気づかされました。

また、女性はスポーツが苦手という思い込みから教えてしまう男性、映画を見る際に解説をしたがる男性…ドキッ!女性の監督が見た男性のイメージなんだろうな…勝手に決めつけんじゅねぇよと思った反面、我々男性は逆に女性のイメージを決めつけていたりもするわけじゃないですか。スイーツが好き、インスタ大好き、歌って踊る男性アイドル好き…みたいなね。

でも女性にも色んなタイプがいるわけであってビールに焼き鳥でぷは〜ってやる女子も居たり競馬・麻雀・ゴルフといった一昔前のおじさんが嗜んでいた娯楽が大好きという人も居るし。

そんな観点から言えばジェンダーの問題ではなく一人一人のパーソナルな部分にも目を向けてという様なメッセージ性も感じられましたね。

更には女性の社会進出に肯定的な流れがある一方、それでもあれはダメこれはダメああしろこうしろと何かと条件を付けてくる様な風潮にも提唱するセリフがありましたね。

昨今のディズニーが代表的なところですが、ジェンダーやLGBTQ更には多様性を謳う作風といえば確かにそうなのですが、これをバービー人形を使いながら表現するこのアイデアは斬新でしたね。

そんな作品で男だ女だと言うのは気が引けるのですが、言いますね。

男の僕からするとバービー人形というと日本のリカちゃん人形に対峙するというイメージで決して明るくはありません。そんな僕が勉強になったのはひとくちにバービー人形と言っても色んな種類があってバリエーションに富んでいるんだなと思いました。背中にテレビカメラが付いてるバービーなんてのも居たしパンキッシュなバービーも居るしで。だからマーゴットロビーが演じていたバービーは最もオーソドックスな物でバービーの世界も突き詰ればホントに奥深いんだなと。ガチなマニアも居るんでしょうね。

さて、今作においてマーゴットロビーが演じたマーゴット・ロビーは初めて人間と接しまた自らも人間の感情を理解する事になります。それは明るくポジティブな事だけで後ろ向きな思考に至る事もあるという事ですね。人形が人間に触れる事で芽生えた人間ならではの思考を捉えて時にはネガティヴさんに負けそうになるけどそれでも人間は生きていくのという肯定的な内容となっていましたね。その時にメタ的な突っ込みがナレーションに盛り込まれていますが、それすらもうまく作品に溶け込んでいたなと思います。

また、バービー役のライアン・ゴズリングが思いっきりはっちゃけてたのも見どころですかね。「ラ・ラ・ランド」の彼にあの恥ずかしい格好の数々をさせたところの監督のSっぷりが良い方向に向いたと思います。

公開前から楽しみにしていた作品。公開前にケチがついてしまったのは残念ですが、映画としては非常に楽しめました。

憚るお気持ちもわかりますが、いち映画としては個人的にオススメします!