きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

TANG タング

日本でもベストセラーとなったイギリスの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を、二宮和也主演で映画化。「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「思い、思われ、ふり、ふられ」の三木孝浩が監督、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の金子ありさが脚本を手がけ、人生に迷うダメ男と記憶喪失のロボットが繰り広げる冒険を、日本版にアレンジして描く。
ある理由から、自分の夢も妻との未来も諦めてしまった春日井健。そんな彼の家の庭に、記憶を失ったロボットのタングが迷い込んでくる。時代遅れな旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるほどの秘密が隠されていた。
健の妻を満島ひかり、健とタングを監視する謎の男を小手伸也、中国在住のロボット歴史学者奈緒が演じる。「STAND BY ME ドラえもん」などの「白組」がVFXを担当(映画・comより)

のっけからなんですが、アニメは別として実写邦画とSFって組み合わせはあまりよろしくないんですよね。ハリウッド映画の様なスペイシーなセットやCGの技術がやはり劣ってしまうという現実があり、宇宙を舞台にしたものとなるとやはり部が悪くなる。となればロボットと人間の交流モノならばどうだろう?『ベイマックス』的な設定ですよね。日本には『ドラえもん』という国民的猫型ロボットが居り、それならば?となりそうなものですが、ところが意外と映画では思い浮かばない。

そうなってくると本作の果たす役割が大きな物になりそうですが、果たして出来は如何なものでしょう?一抹の不安感と期待を胸に8月21日にMOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。

これまで山崎貴監督等のVFXで鳴らしてきた白組がやはりVFXを担当。早速冒頭から現れます。一見すると都市部の郊外に見られる閑静な住宅街。しかし、上空をドローンが飛び交いそのドローンは配送用に使われている様です。この辺りから近未来の世界を舞台にしている様子が伝わってきます。その後もこういった近未来感が劇中で示されていきます。

本作の監督は三木孝浩監督。過去作には『僕は明日、昨日の君とデートする』、『思い、思われ、ふり、ふられ』、現在公開中の映画『今夜、世界から、この恋が消えても』等の若者をターゲットした純愛モノに強いイメージがあります。しかし、これらの作風を刷新する様に本作更には池井戸潤原作の『アキラとあきら』等このところ監督作品に変化が見てとれます。ところで『今夜世界からこの恋が消えても』と『アキラとあきら』そして本作『TANG タング』と今三木孝浩監督作品が同時に三本劇場公開されているんですよね。余計なお世話かもですが、時期を分散させてもよかった様な気がします。

で、話しを戻しますが、若者の純愛映画から一転しての冴えない男性とロボットの交流を描いた作品この振り幅に個人的に興味が尽きなかったのですが、果たして?

監督の意欲は十分伝わってきました。近年では『検察側の罪人』や『浅田家!』といった作品で一本気な性格での演技を見せてきたニノこと二宮和也を冴えないダメ男にしてみせるとかそんなダメ男と友情を育むこれまたポンコツロボットのタングのダメダメだからこその可愛さをうまく引き出していたりとかコメディリリーフとしてのかまいたちの二人の笑いを誘うやり取りに敵キャラとのアクション等等。三木監督の作品でスタンガンなんて物騒なものが出てきたのは今回が初めてだったのではないですか?青春映画とか恋愛映画では出せなかったあらゆる要素をここぞとばかりに出してきた辺りに監督の良い意味での自由さや遊び心が全開で楽しかったです。

ストーリーだって全年代が見てもわかりやすいし、商業映画的な文脈で捉えた場合、山崎貴監督や三池崇史監督に匹敵する様な大衆性が出せていたと思います。賛否は別としてですよ。案外恋愛映画以外もうまく撮る監督だなと思ったし、当人は案外こういうタイプの作品を実はやりたかったのかななんて思いました。

ただ、だからと言って映画的な満足感が得られたかどうかは別なんですよ。ところどころで粗が見えてしまいました。

タングの過去に迫っていくシーン等は悪くはなかったですよ。鈍臭いロボットがところどころで見る凄惨な場面は明らかに過去に起こった出来事を示唆するものでその真相に迫るまでを小出しに小出しに見せていくのは見ている人の好奇心を掻き立ててくれました。ただ、黒幕となる敵キャラがすぐわかっちゃったし、その人物の目論見なんかもいまひとつボヤっとしてて、わかりにくい。

更に満島ひかり演じる妻が夫のケンのダメっぷりにげんなりして離婚の危機なんてのはわかるんですが、彼女は仕事をしない夫に萎えていたのか?でも彼女は弁護士であり、収入の面では夫が専業主夫になっても養っていけるんですよね。一方で家事をしない事にも憤りを感じて、まぁ結局のところ仕事もしない、家事もしないゲームばかりしてるダメ夫に愛想が尽きてるって事か。わからなくはないけど、それでも夫にちゃんとしていてほしいと思うなら何なりと方法なり向き合い方がありそうなもんですけどね。

それからアクションシーンがどうにもテンポが悪い。監督にとっては不慣れなのかもしれないのですが、余計な間が生まれたり戦闘パターンがどうにも一辺倒であったりとぎこちなさが目についてしまうんですよね。だけど監督の意気込みは伝わったし、また別の作品で再挑戦してもらいたいですね!

…って何目線やねん!