きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

バビロン

ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピットマーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に撮り上げたドラマ。チャゼル監督がオリジナル脚本を手がけ、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く。
夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合した新進女優ネリー。サイレント映画で業界を牽引してきた大物ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す。恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段を駆け上がっていく。やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ……。
共演には「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア、「レディ・オア・ノット」のサマラ・ウィービング、監督としても活躍するオリビア・ワイルド、ロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーら多彩な顔ぶれが集結。「ラ・ラ・ランド」のジャスティン・ハーウィッツが音楽を手がけた。(映画・comより)

この時期になるとアカデミー賞の話題も聞こえてくるのですが、作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞でノミネートされているのがこの『バビロン』。『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督という事で僕も公開前から期待していた作品です。2月12日に早速MOVIX日吉津で見て参りました。『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』、『レジェンド&バタフライ』、『R R R』とこのところ続く3時間前後の大作なんですが、こうも続くと慣れてくるもんですね。今回もその長尺が気にならないくらい作品に没頭致しました。では内容に踏み込んでいきましょう。

1920年代のアメリカ・ハリウッド。映画文化が本格的に開花していくのを前に煌びやかな世界が画面いっぱいに広がります。当時の背景としては、第一次世界大戦後の反動もあって、社会や文化、経済などの様々な分野において、急成長したり急激な変化を遂げた時代。特にアメリカは大国としての存在感をより強めていた時期であり、様々な産業が発展していきました。それは映画の世界もまた然りでして、スタジオシステムの形成であったり技術の進化によりサイレントからトーキーへと移行またアカデミー賞が誕生したりと映画史に欠かせない出来事が多々生まれた年代でもあるし、ウォルト・ディズニー社が設立されたのもそんな時代です。しかし1929年ウォール街の株価大暴落により、アメリカの経済は破綻。世界中に波及し、いわゆる世界恐慌に突入したのはよく知るところです。

そんなアメリカにとってハリウッドにとっての激動の時代。束の間の黄金期を捉え、映画の世界に身を投じる者また没落していく者の栄枯盛衰を描いた作品となっておりました。

…なんて言うとさぞドラマティックなんだろうと思うかもしれません。いや、もちろんそうなんだけどそれにまつわるあらゆる下品かつ下劣ないっちゃ何だが愛すべきクズ社会がとにかくB級カルト映画よろしく展開されていきます。はっきり言って放送ではお伝え出来ませんが、あんなシーンやこんなシーンなかなかのものでした。基本クスリと性的快楽のオンパレードです(笑)更には見たくないものまで出してくれますから食べ物を口に入れての鑑賞はオススメしません。

更には黒人差別の描写だって気分のいいもんではありませんでしたね。それはサックスプレイヤーのミュージシャンの場面ですが、あの時の彼の屈辱的な表情や痛々しいパフォーマンスの様子は苦しくなりますね。

更には映画の撮影で死人まで出るというシーンもあるし。

でも、これらは今の価値観では信じられないのですが、この時代の撮影現場でのリアルを再現させる上では必要な場面なんですよね。

更にはサイレントからトーキーへの展開期。それによって憂き目に合うサイレント映画俳優の悲哀がブラッドピッドの演技が伝えてくれます。彼が演じたジャックという役者はサイレント時代のスター。しかし、トーキーで声がスクリーンに乗ってしまう事でその運命が変わってしまうんですよね。それによって仕事が激減する彼の最後は胸に迫るものがありました。

…とこの様にサイレントからトーキーへ変わる事によって運命が変わってしまった人というのはここ日本でもありまして。無声映画時代に登場人物のセリフやアクションを解説していた活動弁士という職業なんかは正にそれですよね。

また、マーゴット・ロビーが演じた新人女優・ネリー。ひょんな事から映画の世界へと足を踏み入れる事になる彼女ですが、どこまでもぶっ飛んでいて胆力のある女性像。これはハーレイクイーンを演じたマーゴット・ロビーだからこそのキレた演技がかなり魅せてくれます。マーゴット・ロビーと言えば『スキャンダル』ではセクハラを受ける女性キャスターの役でしたけど彼女の場合、ハーレイクイーンや今作の様な攻撃的なキャラクターの役柄がハマりますよね!ちなみに今作の出演にあたっては1920年代の映画女優の動き等を徹底的に研究したそうですよ。

さて、今作は映画を題材にしてるとあって全ての映画ファンに刺さるメッセージがありました。それは映画は永遠に生き続けるという事です。それはかつてのスターもフィルムに収められたことで今でも色あせることなく我々に夢を与えてくれています。既にこの世には居なくなった彼ら彼女らはフイルムに収められてる以上いつまでも輝いている姿を見せてくれます。黒澤明監督はこの世には居ないし彼の撮った作品に出演した多く名優達も現世でお目にかかる事は出来ない。しかし、VHSからDVD/Blu-rayそして今の配信サービスで黒澤映画を見れば往時の名優達といつでも再会出来る。作品とは製作した人の魂を宿しながら永遠に生き続け数十年後いや100年以上先の人の心を灯し続けるものなんだという事ですね。それは映画に限らず音楽、小説、漫画。全ての創作物がその宿命を背負うんですよね。映画と出会いそして映画を愛し映画と運命を共にした事への感謝を捧げたい、恐らくチャゼルは本作に自身の映画への圧倒的な情熱を本作へ注ぎ込んだのではないだろうか。僕はその様に読み取りました。それは映画へのリスペクト溢れるラストからもひしと伝わりました!全ての映画ファンは間違いなく見て頂きたい。まごうことき名作でした!

オススメです!