きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

トランスフォーマー ビースト覚醒

2007年にマイケル・ベイ監督、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮による第1作が公開されて以降、世界的大ヒットを記録してきたSFアクション超大作「トランスフォーマー」のシリーズ通算7作目。動物の姿をしたビースト戦士(マクシマルズ)が初登場し、新たな物語が幕を開ける。
オプティマスプライム率いるトランスフォーマーたちが地球に来て間もない1994年。あらゆる星を食べ尽くす、惑星サイズの規格外な最強の敵「ユニクロン」が地球を次の標的に動き出した。この未曽有の危機に立ち向かうべく、プライムは仲間たちを集め、意図せず戦いに巻き込まれた人間のノアとエレーナ、そして地球を救う新たな希望であるビースト戦士たちとともに立ち上がる。
人間側の主人公となる青年ノア役を「イン・ザ・ハイツ」「アリー スター誕生」のアンソニー・ラモスが演じる。エレーナ役は「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」などに出演してきた新星ドミニク・フィッシュバック。「クリード 炎の宿敵」を手がけたスティーブン・ケイプル・Jr.監督がメガホンをとった。(映画・comより)

マイケル・ベイがメガホンを取りスティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務めた07年の『トランスフォーマー』。当時の最先端の迫力ある映像が何ともダイナミックで私も引き込まれていった記憶があります。しかし、その後これが何とも残念ではありますが、続編を重ねる毎にスケールはダウンした感が否めなくストーリーもまた非常に大味で次第に同シリーズから足が遠のいてしまいました。

今作も当初は鑑賞予定はなかったのですが、かなり評判が良い様なので久しぶりに見て参りました。MOVIX日吉津で鑑賞したのですが、公開から少し時間が経過した事もあって夕方の一回のみの上映となっていました。

さて、久しぶりのトランスフォーマー鑑賞なのですが、僕みたいにしばらく離れていても楽しむ事が出来るのか?それが鑑賞前の一抹の不安ではありました。今作の場合はスピンオフの『バンブルビー』でリブートしたトランスフォーマーシリーズの続編に当たるとの事…なんて言われても全然ピンとこないのですが果たして?

はい、その心配は全くの杞憂でした。そもそもがこれまでのシリーズとは全く別の年代や設定等初見にも優しい作りとなっていた。…どころかライトな人がドップリこのシリーズにハマるそのきっかけになる様な作品ではないかなと思いました。

まずは時代は1994年。その時代を象徴するHIP HOP/R&Bをふんだんに使い空気感を演出していく。ネットも普及していない時代の当時の若者文化を切り取った場面として非常によくその時代の空気が伝わりました。

そんな90年代半ばのNYブルックリンからインカ帝国として栄えたペルーに舞台を映し、作中のセリフにもあったインディジョーンズさながらの考古学要素も取り入れたアドベンチャーへと展開されていく。そこに白人主義のアメリカに搾取されてきた有色人種達が未知の生物であるオートボットやマクシマルらと力を合わせて故郷・地球を守る姿をわかりやすくかつ驚きの仕掛けも織り交ぜながら楽しませてくれます。

マイケル・ベイ監督からバトンを受け継いだのは『クリード2』等のスティーブン・ケイブル・Jr監督。すっかりマイケル・ベイのイメージがついた同シリーズを如何にマイケル・ベイ色を薄めながらエンターテイメントを追求したかというのが作品を見るとよく分かります。

まず主人公であるノア。彼は弟の難病の治療費が払えず元軍人で電子工学の天才でありながらチームワークが苦手な為、職にありつけないという面が映されました。

また、彼と行動を共にするエレーナという女性。彼女は彼女で考古学の研究に熱心であるのですが、彼女がインターンとして働く博物館では過小評価され、理想の仕事を与えてもらえず。

ノアの友人は資本主義への不満を胸にあり白人や富裕層への怒りが常につきまとっています。その結果、ノアを悪事へ走らせてしまったり。社会通念上は彼は悪となってしまうのですが、しかし彼らのバックボーンを写す事によってまずはアメリカの資本主義に翻弄される社会的弱者を強調するわけです。

そしてそこからノアとエレーナがオートボット達と協力し、世界を守る為に戦う。

わかりやすいプロットですが、感情移入する上では非常に説得力のある流れだと思います。

そしてこの作品の主人公はトランスフォーマーではなく、自らの道を切り開いていく名もなき社会的な弱者である事を伝えてくれています。

で、こういったストーリーの転がし方がホント上手くて一気に没入していきました。

で、何と言ってもアツかったのがノアとオートボット・ミラージュの友情を描く場面でしたね。はじめのうちこそお互いの利己的な目的で手を組む事になる彼らであり、どこまでも懐疑的な対応をしていたノアでしたが、ミラージュと病気の弟の間で交わす交流や当初はネガティブだったミッションに前向きになっていくノア等様々な要素が後押し次第に欠かせないバディへと変わっていく辺りの見せ方も良かった。そしてミラージュが身を挺してノアを守る場面は涙が止まりませんでした。去年の「トップガン マーヴェリック」では全員が無事に帰還するという事を第一義に掲げていて自己犠牲という物に対するアプローチが印象に残りました。自己犠牲の場面を見せ、お涙頂戴をさせるというのは確かに前時代的かもしれません。だけど絆で結ばれた仲間を守るその姿は崇高なものがあるし、こういったテーマは普遍的だと思います。もっともこの後の展開が自己犠牲で見せたそれを大きく裏切ってくれる内容だったからそういう意味では今作も前時代的なものとの差別化が出来てましたけどね。

そして何とも大きいのがノアの人間としての成長なんですよね。彼は元々は優秀な人間なんですが、チームワークに難がありそれが故に社会的孤立を余儀なくされていました。しかし、かの戦いにおいて身につけたのはまさにこのチームでの結束だったんですよね。だからこそラストは前半の彼の印象が大きく覆る青年として写されていました。一方でエレーナはペルーでの冒険を通じて彼女もまたこれまでの苦渋が身を結ぶ様な気持ちの良いラスト。

そして個人的には敢えてこの二人を恋仲に発展させなかったのも良かったですね。

非日常的な冒険とミッションをこなしNYブルックリンに戻ってからはまた別々の道を歩む。だけど決して不幸ではない。むしろお互いの人生は好転していく中でパートナー化させなかった辺りに独自性を生み出していたなと思います。

そして真のラストはまさかの展開?これは期待しちゃうよな作りでした。

なるほど評判が良いのも納得な出来でした。

是非劇場でご覧下さい!