きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ブレイブ 群青戦記

f:id:shimatte60:20210318172740j:plain

集英社週刊ヤングジャンプ」で連載された笠原真樹原作の人気コミック「群青戦記」を、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督が実写映画化。新田真剣佑が単独初主演を飾るほか、三浦春馬松山ケンイチら実力派キャストが集う。スポーツ名門校で弓道部に所属する西野蒼は目立つことが苦手で、弓道場で練習に打ち込むばかりの日々を送っていた。幼なじみの瀬野遥は、そんな蒼のことを心配している。ある日、1本の雷が校庭に落ちた直後、突如として校庭の向こうに城が出現、校内には刀を持った野武士たちがなだれ込んでくる。全校生徒がパニックに陥る中、歴史マニアの蒼は、学校がまるごと戦国時代、しかも“桶狭間の戦い”の直前にタイムスリップしてしまったことに気づく。織田信長の軍勢に友人たちを連れ去られた蒼は、後に徳川家康となって天下統一を果たす松平元康と手を組み、野球部やアメフト部の選抜メンバーたちと共に立ち上がるが……。主人公を導く松平元康(後の徳川家康)を三浦、彼らの前に立ちはだかる織田信長を松山がそれぞれ演じる。
(映画.comより)

タイムリープもの。
それも戦国時代を舞台に、となれば数多あるわけでして古くは『戦国自衛隊』から近年だと『信長協奏曲』や『本能寺ホテル』が代表的なところでしょうか。
信長・秀吉・家康と誰もが知ってる英雄に馴染み深いし歴史ファンのみならず人気の高い戦国時代を舞台に選べば比較的エンターテイメント作品としてまとめやすいのかもしれません。
それにしても気になったのは本作でメガホンを取った本広克行監督。
踊る大捜査線』シリーズを当てた日本を代表する商業映画監督であると同時に映画ファンからはネガティブな印象で語られる残念な作品が多いのもまた事実。
果たして本作は?

鑑賞前の僕の心象からお話しします。
高校生アスリートが戦国時代にタイムスリップして戦国武将と戦う。
その設定の段階でぶっ飛んでるわけですよ。
笑いありアクションあり良い意味でのB級くささを期待して頭空っぽで楽しもう。

ところがこれが開始から僅か数分で裏切られる事になります。
のほほんと高校生逹が日常生活を送る中、現れた野武士の集団。
そこからはカオスです。 
無抵抗・無防備の高校生逹が野武士逹に次々に斬り殺されるという阿鼻叫喚の地獄絵図。
血しぶきが飛び散り、果ては肉片まで飛ぶという全く想像もしなかった描写に息を飲んでしまいました。
とは言え、「本広監督のエンタメ作品でしょ?」とお思いでしょうが、いやいやその想像の遥か上です。
下手なホラーより怖いし、凄惨さで言えば『悪の教典』のそれに近いかもしれません。

そんな序盤ですからね、「これはとんでもない作品かもな。」と僕の期待も高まっていきます。

そして全国大会でも優秀な成績を持つ高校生アスリートが囚われた仲間を救う為、この不条理極まりない状況の中、立ち上がり結束していきます。

主演の真剣佑さんは奇しくも往年の名作『戦国自衛隊』でのお父さん同様に戦国時代にタイムスリップして戦うわけですね。
序盤での無気力な高校生が仲間の死や危機を乗り越え、成長していく過程を演じていくわけですが、三浦春馬さんが演じた徳川家康との接触シーンが良かったですね。

ヒロインの山崎絋菜さん。
彼女はTOHOシネマズで映画を観る際は必ずお見かけする女優さん。『チア・ダン』等でも存在感のある演技をされてましたが、この映画においての強いヒロイン像が彼女の雰囲気にピッタリ合ってましたね。
『チア☆ダン』ではキレのあるダンスを、昨年の『仮面ライダー』の映画ではアクションをと身体能力の高い女優さんですね。
これからも色んな映画に出てほしいです。


と高校生サイドには若手俳優陣を起用している一方、どうしても信長役の松山ケンイチさん・家康役の三浦春馬さんの存在は飛び抜けていましたね。
信長役に関しては最近だと大河ドラマ麒麟がくる』での染谷将太さんが個人的に良すぎてどうしても厳し目になってしまいがちなのですが、松山ケンイチさんによる信長はそれはそれでの味を感じましたし、家康役の三浦春馬さんに関してはとあるセリフが三浦春馬さんのその後を示唆している様でここで僕は目頭が熱くなってしまいました。
このセリフ、徳川家康ではなく俳優・三浦春馬としてのモノなのではないかなと。

また見所となるバトルシーンにも力が入っており、野球部なら野球部のアメフト部ならアメフト部の各スポーツの特色を生かした様な戦法がユニークでしたね。
仲の悪い空手部主将とフェンシング部主将の共闘も見応えありました。
この二人のツンデレ降りは腐女子受けしそうですね。

とこの様に見所たっぷりな本作ではあるものの、僕の初めに感じたテンションが持続出来なかったというのが正直ありまして。

というのが本作でのタイムスリップのトリガーですね。
とある人物が要となるのですが、その人物の扱い方というか描かれ方というか。
一応は信長軍の家臣となってはいるものの、信長に仕えるまでの過程も見えてこないし、そもそも歴史を改変する事の目的や動機がいまいちわからない。
彼にとってメリットがあるとも思えないし、だから見ていて「お前は何がしたいねん?」と終始やきもきしてましたね。

それからラストも無理があるんだよなぁ。
生徒のみならず教師も犠牲になった学校。
いわば凄惨な事件のあった殺人現場ですよ。
にも関わらずまるで何事もなかったかの様な日常に戻る違和感もだし、主人公の彼のその後の顛末よ。
現代の世界では大パニックになってもおかしくないし、親の心境を考えたらいたたまれないよ。
突っ込みドコロをあまりに作り過ぎたんじゃないでしょうか。
そこが個人的には厳しい評価になってしまうかなぁ…。

しかし、園子温顔負けの生々しい描写を果敢にも取り入れ、アスリート対戦国武将というトリッキーな設定に独創性溢れる戦法で視覚的に楽しませてくれたその試み等は称賛したいところです。

是非劇場でご覧下さい!