きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

嘘八百 なにわ夢の陣

中井貴一佐々木蔵之介扮する古物商と陶芸家がだまし合いの大騒動を繰り広げるコメディ「嘘八百」シリーズの第3作。
空振りばかりの古美術商・小池則夫と、うだつの上がらない陶芸家・野田佐輔コンビの前に、豊臣秀吉の出世を後押ししたと言われる7つの縁起もの「秀吉七品」の中でも、唯一所在不明だった茶碗「鳳凰」の存在がちらつく。手にすれば一獲千金の幻のお宝となる「鳳凰」をめぐり、開催間近の大阪秀吉博や、TAIKOHと名のるカリスマ波動アーティスト、謎の美女なども絡み合う騙し合いが繰り広げられ、小池・野田のコンビ分裂の危機にまで発展する。
小池役の中井、野田役の佐々木をはじめとするシリーズおなじみのキャスト陣に加え、カリスマ波動アーティスト・TAIKOH役で安田章大が出演。監督をドラマ「全裸監督」で知られる武正晴が務め、脚本をドラマ「失恋めし」の今井雅子NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の足立紳を担当するなど、前作からのチームが手がけた。(映画・comより)

かつては日本の正月の風物詩と呼ばれる正月映画というものがありました。毎年年末年始に封切られ、紅白歌合戦新春かくし芸大会等その時期の定番とされる人気番組の映画版みたいな作品ですね。それこそが「男はつらいよ」であったり「釣りバカ日誌」であったりと配給元の松竹にとってのお抱えコンテンツですよね。そこにライバル会社である東宝東映からの大作に洋画大作等が同時期に公開され、活況を見せていた時代が昭和〜平成の前期でした。

しかし、令和の年末年始は娯楽の多様性等もあって紅白歌合戦もかつての様な視聴率は取れず、洋画もかつての様な勢いもなく、日本のアニメ映画が席巻する状況。そこにはシリーズ物のお正月映画の姿はありません。

そんな中、毎年でこそないものの、かつての寅さんや釣りバカの様にツボを抑えた喜劇作品としてシリーズ物として定着しつつあるのが今作「嘘八百」シリーズです。千利休古田織部の幻の茶器という歴史プラス骨董好きなシニア世代のハートを掴み更には気兼ねなく鑑賞が楽しめるコメディというのが人気の要因ではないでしょうか?

私も前二作は劇場鑑賞こそしなかったものの、その後の配信サービスで視聴。一気にシリーズのファンになり番組でもお話しして参りました。

そして三年振りに公開となった新作。三作目にして初の劇場鑑賞という事でMOVIX日吉津にて見て参りました。

客層はというとやはりと言うべきか比較的高め。60〜70代くらいの方々が中心ではありましたが、若い方の姿もありましたよ。

千利休古田織部と続いて太閤・秀吉の幻のお宝これは何ともワクワクします!果たして内容は?

さて、これはシリーズ一貫してですが、中井貴一佐々木蔵之介というダンディなオジサマ二人がワチャワチャとやるのが楽しい作品です!

今作でもやはりその辺りは健在。相変わらず良い年したオッチャンなのに男子高校生がふざけ合っているかの様なやり取りに笑いがこぼれます。とりわけ大阪城のお堀を巡る舟でのやり取りなんかはもはや熟練の漫才コンビよろしく息やテンポがバッチリ!今回もその辺り全くブレてません!

また、中井貴一演じる小池が自らの骨董屋をPRする為にYouTube的な動画を使う辺り現代っぽいし、落胆する再生回数なんかもかなりリアルでした。

で、その小池の娘を森川葵が演じているのですが、前作で占い師になった彼女はすっかり人気占い師になっていたりとこれは前作までを見ていたら変化を感じましたね。

一方、佐々木蔵之介演じる陶芸家の野田。友近演じる彼の妻から明かされたリアルな年収といいネットに出ていた彼の作品の価値等依然として陶芸家としてはうだつの上がらない彼の姿は相変わらず。

だけど話しが転がっていくのがこの両者に大きな仕事が舞い込んでからなんですよね。

古物商・陶芸家とくすぶっているこの二人に舞い込んだビッグチャンスがどの様にストーリーで転がっていくのかそこは是非今作を見て頂きたいところです!

そしてお馴染みのあの学芸員も登場!そうです、ドランクドラゴンの塚地さんが演じた彼ですね!1作目の千利休、2作目の古田織部どちらにも非常に精通していた彼が今作は秀吉について熱く語る(笑)これまでは面白いモブキャラ的な扱いでしたが、今作の場合違うのが割とガッツリ小池・野田コンビと絡むのと登場が1シーンだけではない点。実在する学芸員さんをモデルにしたというこのキャラクター。これは前作までにかなり大きなインパクトを残した事でシリーズでも人気なんでしょうね。だからもし今作で初めてこのシリーズに触れた人は「この人のこの登場場面いる?」なんて思っちゃうかもしれません。これは前作までを見た人へのサービスショットだと僕は思っています。

さて、今作は太閤・秀吉をテーマに大阪を舞台にしてるとあって大阪城が大々的に出てきます。自分は関西生活長かった割に大阪城って一回しか行った事なくて、でも大阪城の中の雰囲気は確かに馴染みがあるというか懐かしさがあるというか。そうそう大阪城ってエレベーターがあるんだよなぁなんて思い出したり、後はある商談を大阪城付近にあるビル内で行うのですが、窓の外に映るのが大阪城ホール。しかもよく見ると階段で長蛇の列が出来ていて大阪城ホールでのライブをよく見に行ってた自分としては「あれ、これって誰かのライブの日に撮ってんの?それともあれって映画のためのエキストラかな?」なんて気になって気になって(笑)映画の本編と別の部分に目がいっちゃいました。

さて、今作はストーリー的にも面白かったし、個人的には良かった反面これは公開時期の悪さからくる問題がありまして、それが信者ビジネスについてなんですよね。安田章大演じるカリスマ波動アーティスト・TAIKOHの話しにそれが絡んでくるのですが、そこに信者の心をついてのそのテの話しが出て来る。しかもこれを教訓的なメッセージを伴ってって事ではなく、笑いの描写にしてる所なんですよね。先の教団の問題が明るみにされる以前であればまだ救いがあったのかもしれませんが、件の一件とどうしても結びついてしまって見る人によっては心象悪くなったりもするのかななんて思いました。恐らく制作してる段階ではまさかという事態だったんでしょうね。

それから前作の「嘘八百 京町ロワイヤル」の広末涼子さんが演じた京美人に続いての女性ゲストとして中村ゆりさんの起用が良かったですね。前述のカリスマ波動アーティスト・TAIKOHのマネージメント等を行う謎の美女。時折佐々木蔵之介さんの演じた野田に色気を振り撒くその妖艶さや佇まい等全てにおいて魅力的。TAIKOHとの関係性が明かされてからのその雰囲気も正に役に適していたなと思います。髪型もボブでしたが、非常にお似合いでした!

キムタク主演の「レジェンド&バタフライ」は信長、大河ドラマは家康。ならば秀吉は?迷わず今作をオススメしましょう!

是非劇場でご覧下さい!