きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

アナログ

ビートたけしが初めて書きあげた恋愛小説「アナログ」を映画化し、二宮和也が主演、波瑠がヒロインを務めたラブストーリー。
手作りや手書きにこだわるデザイナーの水島悟は、自身が内装を手がけた喫茶店「ピアノ」で、小さな商社に勤める謎めいた女性・美春みゆきと出会う。自分と似た価値観のみゆきにひかれた悟は意を決して連絡先を聞くが、彼女は携帯電話を持っていないという。そこで2人は連絡先を交換する代わりに、毎週木曜日に「ピアノ」で会う約束を交わす。会える時間を大切にして丁寧に関係を紡いでいく悟とみゆき。しかし悟がプロポーズを決意した矢先、みゆきは突然姿を消してしまう。
「鳩の撃退法」「ホテル ビーナス」のタカハタ秀太監督がメガホンをとり、「宮本から君へ」「MOTHER マザー」の港岳彦が脚本を手がけた。(映画・comより)

北野武。言わずと知れたビートたけしその人であり日本を代表するコメディアンかつ映画監督ですね。新作「首」の公開も迫っていますが、これまでの北野武監督作と言えばコンプライアンスとは相対的な過激であり一方では人間の剥き出しの感情を捉えてきました。どこまでもエキセントリックでありながら人間の弱さや脆さも写してきました。そんなたけしさんというとストレートなロマンスを描くという事とは対局にあるとこれまで思っていました。しかしそれはとんだ誤りでありたけしさんが好きでありながら全くその部分を見落としていた。その様に感じたのがまさに今作でした。

公開直後から気にはなっていましたが、ようやく先週の水曜日松江東宝5で鑑賞して参りました。

主演の二宮和也さん。彼に関しては「ラーゲリより愛をこめて」でもお伝えしましたが、アイドルではなく役者として素晴らしい演技をされます。去年公開された「TANG」という作品がありましたが、そういったコメディタイプの作風よりもシリアス寄りの作品の方がより光ると思っています。その意味では今作での演技は彼の持ち味が生かされ非常に作品にフィットしていたと思います。

また、ヒロインである波瑠さん。彼女の透明感のあるキャラクターが役にもピッタリハマっていてこの二人のキャスティングは見事だなと思いました。

また脇を固める面々も魅力的でとりわけ桐谷健太さんと浜野健太さんの存在が今作では大きかったですね。彼らは主人公である悟の友人役でしたが、純愛の美しさだけではなくどれだけ相手に毒づこうがいじろうが心根は相手を常に思う男の友情の素晴らしさを見せる上でも重要なポジションでしたね。とりわけ桐谷健太さんって「ラーゲリより愛をこめて」でもニノとは共演してましたが、「ラーゲリ」とはまた違う形での男同士の絆を見せてくれていましたね。

それから喫茶店ピアノのマスターを務めたリリー・フランキーさんですよ。またしてもリリーさんの凄さを目の当たりにする様な自然な演技。この人の凄さって「凶悪」で見せた様な極悪サイコパス演技から今作の様な物腰穏やかな優しい人柄の人物まで完璧にこなす事ですよね。番組でリリーさんの話しをする時に毎回言ってますが、役者さんじゃないですからね、イラストレーターですよサブカル寄りの。個人的にはたけしさん原作の映画に出られたわけですから次は北野武監督作品に出て欲しいな。

さて、ストーリーですよ。大人の純愛を描いた作品ですからどこまでも綺麗なんですよ。たけしさんがどれだけロマンチストかと思っちゃいます。確かに昭和男の綺麗な女性像をステレオタイプに出し過ぎなきらいはありましたよ。なかなかあそこまでピュアな女性は居ないでしょうし、綺麗な女性=クラシック好きでバイオリンを弾く上品なお嬢様というのは正に昭和オヤジの発想かもしれません。その意味で女性はどこか引っかかってしまうかもしれません。反面男性目線で言えばこういう映画の中だけでは夢見たっていいじゃねぇかと男性に恋愛への憧れを抱かせる様な内容なんですよね、それも中学生の様なピュアな感情でですよ。でもそう考えたら男はいつまでも中学生の様な淡い感情を持ち続けているある意味永遠の童貞性を心の奥底には眠っているのかななんて思いました。

さて、純愛ストーリー故に二人には障害が待ち構えています。このテは作品は総じてかもしれませんが、その障害に悲劇性が高ければ高い程涙腺が刺激されてしまうものです。尚、私は番組でも兼ねてから申してますが、泣けるからいい映画とは思っていません。しかし、今作の様な作風だと泣かせてなんぼいや泣きたいと思って見るのですが、それが今作に関してはそこまで涙腺が刺激されなかったんですよね。ヒロインが不幸に見舞われ、その後日記を読み返すという流れで言えば「君の膵臓をたべたい」パターンで本来涙ボロボロなんだけど、今作に関してはそこまでならなかったですね。確かに脚本の構成はしっかりしていたし他のお客さんからは涙をすする音が聞こえてきましたよ。僕の感性がずれてるというのもあるかもですが、もっと感情を揺さぶってほしかったし、より深みがあった方が良いのかもしれませんね。

ただ、映画全体を見たら喫茶店ピアノの内装にもこだわりが感じられたし、効果的な音楽の使い方にストーリーの流れ等バランスが整った良作だと思いました。

是非劇場でご覧下さい!