きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ラーゲリより愛を込めて

二宮和也が主演を務め、シベリアの強制収容所ラーゲリ)に抑留された実在の日本人捕虜・山本幡男を演じた伝記ドラマ。作家・辺見じゅんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を基に、「護られなかった者たちへ」「糸」の瀬々敬久監督がメガホンをとった。
第2次世界大戦後の1945年。シベリアの強制収容所に抑留された日本人捕虜たちは、零下40度にもなる過酷な環境の中、わずかな食糧のみを与えられて重い労働を強いられ、命を落とす者が続出していた。そんな中、山本幡男は日本にいる妻や子どもたちのもとへ必ず帰れると信じ、周囲の人々を励まし続ける。山本の仲間思いの行動と力強い信念は、多くの捕虜たちの心に希望の火を灯していく。山本の妻・モジミ役に北川景子、山本とともにラーゲリで捕虜として過ごす仲間たちに松坂桃李中島健人桐谷健太安田顕と豪華キャストが集結。(映画・comより)

2022年の映画納めとして年末の12月30日。MOVIX日吉津にて鑑賞。さすがにこの時期になると正月休みに入った家族連れ等で賑わっていました。そんな家族連れやカップル若年層の友人同士の多くは「THE FIRST SLAM DUNK」や「すずめの戸締り」を選択していた事でしょうが、感動作として目下評判の良い今作は是非見ておきたかったので一日の上映回数が減っている中、午前の回を選択して鑑賞して参りました。

第二次世界大戦を舞台とした作品というのはこれまでにも数多くの作品がありました。しかし、いわゆる終戦後を題材となるとこれがグッと数が減るもので中居正広さんが主演を務めリメイクもされた「私は貝になりたい」等辺りが有名どころですね。

今作の場合は終戦後に日本に引き揚げたものの、シベリアに連行され、強制労働を科されるいわゆるシベリア抑留を題材にした実話を元にした内容となっています。
さて、皆さんはこのシベリア抑留に関してはどの様な認識をお持ちでしょうか?

終戦後に強制的に連行されるなんて理不尽だし、大変だっただろうね〜」…確かに間違ってはいません。しかし、その実態はどれ程無慈悲でやり切れないものであったかなんてのは学校の授業で習うだけではわからないと思います。

この映画ではそんなシベリア抑留の過酷な実態を忠実に描いている為、かなり感情を刺激される事になります。ソ連兵にムチで叩かれる同胞の日本人捕虜を見ると憤怒の感情に駆られますし、保身の為に仲間を売る捕虜の姿を見ると人としての醜さに悲しさを感じる一方で果たして自分が同様の状況に置かれた時に理想的な対応が取れるだろうかと考えさせられる。また、桐谷健太が演じた戦時下での軍曹であった男が抑留先でも今は無きものとなった権力や立場を振りかざす姿にいつの時代にも権威主義であり、格下となる相手に圧力をかける人間性がまざまざと映し出されていたりと抑留先の状況や人間模様が身につまされる様に感情を刺激してきます。

でもこれが不条理であればある程訴えるものがあるんですよね。

それが戦争が終わり、ようやく家族との新たな日々が始まるというその矢先での招集だけにこのシベリア抑留が如何に理不尽なものであるかと感じさせられます。

そこにも強くフォーカスさせており、二宮和也演じる山本幡男と北川景子演じるもじみと子供達の家族が歩む戦後の戦争とも言えるシベリア抑留の生生しさを見ている人に強く訴えかけていきます。

それにしてもキャストの面々の演技はホントに素晴らしかったです!

まず、ニノこと二宮和也さんですね。ニノと戦争映画という視点で言えば2006年のクリント・イーストウッド監督が手掛けた名作「硫黄島からの手紙」が思い出されますが、戦争映画との相性がメチャクチャ良いんですよね。どれだけ理不尽な状況に置かれても自分の信念を曲げず人に対する義に尽くすまたロシア文学を愛読し、ロシア語も話す超インテリな役柄でしたが、好人物として描かれ過ぎなきらいもありましたが、ニノの雰囲気と絶妙に合っていたと思います。僕の印象としては「TANG」みたいな映画よりもこういうタイプの作品の方が合ってる気がします。

また、妻・もじみを演じた北川景子さんの強くしなやかに過酷な状況を生きる女性像も良かったですね。ラストシーンは彼女の演技に心を動かされ、涙が止まりませんでした。

松坂桃李桐谷健太安田顕といった面々はさすがでしたね!松坂桃李さんが演じていた気弱な青年しかし自らの取る行動と信念のギャップから遂にはその殻を破る姿には心を打たれましたし、桐谷健太さんが演じた人物。はじめの内こそ理不尽な理念を振りかざす利己的な男に見えましたが、抑留中に芽生えた人間性を取り戻してからの幡男への接し方や仲間内での立ち回り等不器用なんだけど実は最も人間らしいのは彼なのては?と思いました。そしてヤスケンさんですね!どんな役柄でもご自身の物にする名優ですが、今作における山本の元上官でありながら知性と教養を兼ね備えた好人物像に中島健人演じる青年は山本が目をかけ人としての成長を見せていく姿をスクリーンで表現していました。

それからこの映画ですが、決してプロパガンダ映画ではありませんが、第二次大戦後の共産主義の思想教育を生々しく描いていたのも強く印象に残りましたね。直接見て頂きたいのですが、強制労働にとどまらず赤化教育を行っていたその実態が非常にリアルで恐ろしさを感じました。無論政治的思想をどうのこうのなんてのはここでは論じませんが。

また、今作ですが、隠岐島と松江が出てきます。その辺りもチェックしてみて下さいね!

是非劇場でご覧下さい!