きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

沈黙の艦隊

1988~96年に講談社の週刊漫画誌「モーニング」にて連載された、かわぐちかいじの名作コミック「沈黙の艦隊」を、大沢たかおが主演のほかプロデューサーも務めて実写映画化。
日本近海で、海上自衛隊の潜水艦がアメリカの原子力潜水艦に衝突して沈没する事故が発生。全乗員76名が死亡したとの報道に衝撃が走るが、実は全員が生存しており、衝突事故は日米が極秘裏に建造した日本初の高性能原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。しかし艦長の海江田四郎はシーバットに核ミサイルを積み、アメリカの指揮下を離れて深海へと消えてしまう。海江田をテロリストと認定し撃沈を図るアメリカと、アメリカより先に捕獲するべく追う海自のディーゼル艦「たつなみ」。その艦長である深町洋は、海江田に対し並々ならぬ感情を抱いていた。
プロデュースも手がける大沢が海江田、玉木宏が深町を演じ、上戸彩中村倫也江口洋介が共演。監督は「ハケンアニメ!」の吉野耕平。(映画・comより)

昨今の配信プラットフォームは、日本のコンテンツにも非常に力を入れてます。とりわけネットフリックスからは数々の名作ドラマや映画が生まれ、都度話題になってきました。

そんな配信プラットフォーム発の新たな力作が生まれました。

この「沈黙の艦隊」はアマゾンスタジオが製作、そして東宝が配給をするという形。

とりわけ昨今だとプラットフォーム限定のコンテンツが多い中、東宝という大手配給会社がタッグを組んで劇場公開するというこの試みは日本では今回が初。

ハリウッドでは番組で以前取り上げた「AIR/エア」という作品がありましたが、やはり同様の形態の様です。この場合、今のハリウッドメジャー会社が資金不足という事でそれを予算に余裕のある配信プラットフォームが制作費を出し、世界に供給出来るノウハウをメジャースタジオが配給。双方にとってもwin-winなこの方式。今後トレンドになっていくかもしれませんね。

そんなアマゾンと東宝がガッツリと手を組んだ大作「沈黙の艦隊」。原作はあまりに有名な作品。主演の大沢たかおさんはそんな原作の大ファンであり故に今作のプロデューサーも務めています。

トレーラーでも見たあの迫力あるシーンがどの様に盛り込まれているのか。僕も楽しみに公開直後の10月1日のファーストデー。前回紹介した「バッド・ランズ」を見た後、鑑賞しました。

客層としては比較的高め。男女比は半々くらいだとは思いますが、やや男性の方が多い印象でした。

今から約30年前、かわぐちかいじの手により原作が書かれモーニングに週刊連載されていました。当時の国際情勢を言えば湾岸戦争の最中、アメリカとイラクが非常に緊迫した状況でありまた核というものに対してもナーバスになっていました。日本ではこういった状況の中に自衛隊を派遣する事への是非が白熱。子供心にピリピリした様子がニュースの画面から伝わっていました。

そして時が流れ、現在。ロシアとウクライナの情勢は依然収まりを見せる様子もないし国内外様々な問題が勃発しているし、作品の主題となっている核に関しても様々な議論が交わされるし、北朝鮮の実験等を通じて日本にも身近な問題でもあります。

そんな中で今作は30年の時を経てどんなメッセージを突き付けるかがポイントになっていきます。

なんて言うと難しい映画なのかと思われそうなのでエンタメとしての楽しみ方からお伝えしていきましょう。

まず何と言っても海を舞台にした広大なロケーションは映画ならでは。とりわけ防衛省海上自衛隊などの協力を受けての製作。製作総指揮を執った大沢たかおさんの並々ならぬこだわりを感じるし、原作へのリスペクトが強いからこそ中途半端な物を作れないという使命感があったからこそのダイナミックな絵作りに繋がったのではないかと思います。

そしてそんな彼のこだわりに応える様な吉野耕平監督の手腕や豪華キャスト陣による演技。玉木宏上戸彩江口洋介水川あさみユースケ・サンタマリア夏川結衣等いずれもこの壮大な作品にピタリとハマるキャスティング。

現場に居る人達と安全圏にいる人達との緊張感に違いまた国のとっぷたる閣僚達の対応のピリピリぶり等とにかく見ている人をスリリングに時には感情を煽る様に見せています。

また印象的だったのは撮影です。基本的にシンメトリーを意識した構図で撮影をしています。メインになるソナー室と発令所の内部の中央で佇む海江田を真ん中に配置。更には一見狭そうに見える艦内を広く見せていましたし、この辺りは凝ってるなと思いました。

さて、ストーリーです。一部ファンからは不満がある様でして、それは大沢たかお演じる海江田と玉木宏演じる深町。この二人は原作だと同僚であるのに対し、かつての先輩後輩の関係にしているという事。

原作に対しての思い入れが薄い僕は気になりませんでしたが、海江田がかつて下した判断で犠牲を生んだ事を許せない深町。というこの二人の関係がある事で海江田の人間像を伝える上で非常に効果的だったし後の海江田の暴走に対して納得させるそんな描写となっていましたね。

さて、本作最大のテーマ。それが核を持つべきか物たざるべきか。核保有派と非核派それぞれのロジックが作中には盛り込まれており、後は各々の思考に委ねるというものでした。

そしてしっかりと続編に繋げていくかの様なラスト。独立国家・大和を掲げる海江田のこれからが非常に気になるエンドでした。

大沢さん、相当力入ってますね。

うん、きっと次作も見るでしょう!

次作を楽しむ為にも是非この大作を見て頂きたい!

オススメです!