きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

キリエのうた

スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」の監督・岩井俊二&音楽・小林武史による音楽映画。
石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、歌うことでしか“声”を出せない住所不定路上ミュージシャン・キリエ、行方のわからなくなった婚約者を捜す青年・夏彦、傷ついた人々に寄り添う小学校教師・フミ、過去と名前を捨ててキリエのマネージャーとなる謎めいた女性・イッコら、降りかかる苦難に翻弄されながら出逢いと別れを繰り返す男女4人の13年間にわたる愛の物語を、切なくもドラマティックに描き出す。
2023年6月に解散した人気グループ「BiSH」のメンバーとして活躍してきたアイナ・ジ・エンドがキリエ役で映画初主演を果たし、主題歌「キリエ・憐れみの讃歌」を歌唱するほか劇中曲として6曲を制作。「SixTONES」の松村北斗が夏彦、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華がフミ、「ラストレター」の広瀬すずがイッコを演じる。(映画・comより)

ミュージシャンが主演を務める映画があります。自分の心に残ってる作品で言えば「タイヨウのうた」。ブレイク前夜のYUIが主演をうまく捉えた良作でした。また、古くはCHARAさん主演の「スワロウテイル」も印象的でしたね。そしてその「スワロウテイル」を撮ったのが今作でもメガホンを取った岩井俊二監督。更には音楽を担当したのが小林武史さんとあれば期待も膨らむものです。そして主演はアイナ・ジ・エンド。正直BiSHというグループに馴染みのない僕からするとイルミネーションアニメ「シング・ネクストステージ」で白オオカミの娘・ポーシャの日本版の声のイメージが強いのですが、この「シング〜」で彼女の歌唱力には唸らされたもの。今作で彼女の歌声がどの様に絡むのか楽しみにしながら10月14日土曜日。MOVIX日吉津にて見て参りました。

さて、冒頭では早速彼女のアカペラでの歌声が聞こえてきます。往年の名曲オフコースの「さよなら」です。これが雪原の場面の中流れてくる。しかもこれが後々非常に重要な意味を持つんですよね。

そしてこれを皮切りに数々の名曲が物語を紡いでいきます。この「さよなら」や久保田早紀の「異邦人」という往年の曲からあいみょんの「マリーゴールド」、米津玄師「Lemon」、優里「ドライフラワー」といった比較的近年の曲まで広くカバーするアイナ・ジ・エンド演じるキリエ。そこに小林武史プロデュースによるオリジナル楽曲がうまく溶け合いなるほど音楽映画としての要素は満たしている。アイナ・ジ・エンドの歌声が好きならば満足な内容ではないでしょうか。

また、今作に関しては前半から中盤にかけての流れが非常に劇的で引きつけられていく。震災を描いた作品は多々ありますが、実写のもので言えば今作はかなり真に迫ったものではないでしょうか。

しかし、これが逆に勿体ないと感じさせてしまいました。というのが確かに中盤までのストーリーの流れには無駄がないんですよ。ストーリー自体にかなり没頭出来るし登場人物にも感情移入が出来る。3つの時代と場所を交互に見せていく事にはじめの内こそ戸惑いはありましたが、慣れればそこまで気にならない。

だけど結局惜しいのが震災の場面までの緊迫感が後半ズルズルとさせてしまった事に尽きるんですよ。正直中盤が最大の山場なんですが、ここを中盤にした事で見る側のハードルが上がってしまうんですよ。だからよほどの物を見せない限り映画全体の評価が下がってしまう事になる。で、この悪例に今作はまさに乗っかってしまったんですよね。

更に最悪な事に元々ツッコミどころが多かったのに後半ではそれが悪目立ちしてしまいました。

例えばこれをクライマックスにした路上ライブのフェスですよね。大掛かりなステージを組んでキッチンカーまで出店していたりと大きなイベントにしてる辺りで警察が出動してオーガナイザーに「許可取ってますか?」ってありえねえだろ!で、その問いただされたオーガナイザーが許可証なくすってお前どんだけ危機管理能力ねぇんだよ!で、百歩譲って警察側。怪しいと思うんだったら認可を出す自治体の管理課なりに聞けよって話しですよ!

で、この場面で僕も前半でのツッコミどころをまた思い出してしまったんですよね。広瀬すず演じるイッコという女性がマネージャーを買って出るのですが、彼女と出た最初の路上ライブのシーンね。キ〜ンキ〜ンって音ハウりまくりなんですよね。いくらキリエの歌が上手くてもそっちがノイズになって聴いてらんないでしょ?黒山の人だかり出来てんのが嘘くさいんですよね。

実際に音楽やってる人とかやってた人がこの映画見たらどう思うんだろうなぁってすげぇ気になっちゃいました。

で、この映画見てて思ったのがラストのみんなが救われない感。これドキュメンタリー番組の「ザ・ノンフィクション」っぽいな〜って。決してハッピーエンドではないんですよ。状況は全く変わってない。むしろ現実の厳しさを突きつけてくる様で。僕は割と好きですよ。こういうラスト。でも人によってはスッキリしないかもしれないですね。

それにしても三時間はちょっと長いですかね。洋画の大作ならともかく。重ね重ね言いますが、後半の一時間がもっとうまくまとまっていたら良作評価が出来たのにとモヤモヤしちゃいました。

アイナ・ジ・エンドが好きなら暗めの映画がお好みならオススメ出来ます。

是非劇場でご覧下さい!