きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画 イチケイのカラス

講談社「モーニング」で連載された浅見理都の同名コミックを原作とするテレビドラマ「イチケイのカラス」の劇場版。
入間みちおが東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称・イチケイ)を去ってから2年が過ぎた。岡山県瀬戸内の長閑な町に異動した彼は、史上最年少の防衛大臣に対する傷害事件を担当することに。みちおは事件の背後にイージス艦の衝突事故が関係していることに気づくが、航海内容は全て国家機密のため調査は難航する。一方、イチケイでみちおと共に数々の事件を裁いた坂間千鶴は、裁判官の他職経験制度により、弁護士として働き始める。偶然にもみちおの隣町に配属された坂間は、人権派弁護士の月本信吾と組んで小さな事件にも全力で取り組んでいく。そんなある日、町を支える地元大企業に、ある疑惑が持ち上がる。
みちお役の竹野内豊、坂間役の黒木華らテレビ版のキャストに加え、斎藤工向井理らが新たに参加。テレビ版に続き「コンフィデンスマンJP」シリーズの田中亮が監督、「プラチナデータ」の浜田秀哉が脚本を手がける。(映画・comより)

私テレビドラマをあまり見る事がありません。基本映画をスクリーンで見るのが好きなもので自宅のテレビで見るドラマにはあまり魅力を感じないと言いましょうか。従ってこの「イチケイのカラス」に関してもそもそもがドラマでやってた事すら知らないくらいでした。

しかし、この劇場版を見るに当たって少しは見ておかなくてはと思っていたところ、1月14日にスペシャルドラマが放映またこの劇場版公開に合わせての再放送もあったりと全てではありませんが、予習を兼ねて視聴。入間みちおと坂間千鶴のキャラクターなり作風なりを最低限頭に入れてから劇場版を鑑賞。

久しぶりに松江東宝5にて見て参りました。

ドラマでの入間みちおと坂間千鶴の奇妙な関係が瀬戸内の小さな町を舞台に移しての法律合戦は確かにドラマの延長としては良い塩梅でのスペシャル感も出ており確かに楽しかったです。

竹野内豊さんと黒木華さんのお二人の掛け合いだって相変わらずでしたが、斎藤工さん演じる月本が入る事によってこれがまたよりボリュームのある人間模様を見せてくれていました。それにしても斎藤工さんをホント役の幅が広いですよね。「孤狼の血 LEVEL2」に「シン・ウルトラマン」更には「レジェンド&バタフライ」では家康を演じていたりと。そして今作における一見正義感溢れる弁護士しかし一方では黒い顔も覗かせるなんとも魅力的な役でしたね。途中まさかの展開になり、そしてラストでは重要なメッセージを残すといういわば今作におけるもう一人の主役と呼べる程の強い存在感がありました。

また、史上最年少の防衛大臣という難役をこなした向井理さんもまた、本作では非常に重要なポジションでしたね。一体何を考えているのかわからない得も言われぬ不思議な存在感。かつての恋愛映画でのイケメン王子様枠を脱却してからの向井さんの役柄は僕は割と好きです。

吉田羊さんが演じていた町医者ですが、町にやって来た千鶴の姉御的な人情味溢れるキャラクター。しかし、後半に意外性に富んだ展開に導いていく重要な役でした。それにしても吉田羊さん。「沈黙のパレード」でも同じ様なキャラだった様な(笑)

さて、そんな今作の内容としては割と社会派な作りとなっています。イージス艦の衝突事故、公害問題、地方においての有力企業と地域の人々の雇用の確保それが故の隠蔽工作等等なかなか鋭く切り込んでいきます。サスペンスものであれば「相棒」などが扱いそうな内容。

入間みちおと坂間千鶴はこれらの問題をどの様に捌いていくのかは是非直接見て頂きたいところ。

はじめに坂間が担当する町で起こった小さな事案がやがてひとつの問題に繋がり、そこから更に問題を繋げていき気付けばひとつの町果ては国家の大きな問題へと広げていくストーリー展開は非常にスリリングで見逃せなくなりました。

…とこの様に風呂敷はかなり広げてくれ、その見せ方は確かにうまかったというのは認めるところ。

ただ、この畳み方は如何なものかと思っちゃいました。

というのがあまりに大きな問題を作り過ぎたが故にひとつひとつを尺内でうまくまとめられていないきらいがあるんですよね。

公害の子供はその後どうなったのかも見せていないし、町の人々が守ろうとしたものはわかるんだけど、その為には何をしてもいいなんて事にはならんだろう?そもそもあの重要人物が殺される理由なんてどこにもないわけだしね。

前半から中盤までの広げ方が良くてその部分は見ていて非常に気持ちも煽られた。それだけに勿体ないなと思ってしまいました。

後は野球のシーン。ドラマをしっかりと見ていないから何とも言えませんが、あの下りって重要?いや〜、何か引っ張り過ぎじゃないかなと僕は思ってしまいました。

結論なんですが、僕はリアタイでドラマを見ていないからというのもあるかもしれませんが、またいつものドラマ映画か〜で終わってしまったのが正直なところですね。ドラマに思い入れがあるかどうかで今作の印象は大きく変わるかと思います。

何て言えば「ドラマを見ていないと内容は理解出来ないのか?」という指摘があるかと思います。いや、内容は初見でも十分出来るし楽しめるとは思いますよ。映画として見た場合の感情の刺激という点ですね、それが大きく左右されるとお伝えしておきましょう。

なんて色々言いましたが、法廷エンターテイメントを純粋に楽しみたいという方には是非見て頂きたいところです。

是非劇場でご覧下さい!