きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

君たちはどう生きるか

宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに手がける長編アニメーション作品。
千と千尋の神隠し」で当時の国内最高興行収入記録を樹立し、ベルリン国際映画祭でアニメーション作品で初となる金熊賞、ならびに米アカデミー賞では長編アニメーション賞を受賞。同作のほかにも「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」「ハウルの動く城」などスタジオジブリで数々の名作を世に送り出し、名実ともに日本を代表する映画監督の宮崎駿。2013年公開の「風立ちぬ」を最後に長編作品から退くことを表明した同監督が、引退を撤回して挑んだ長編作品。
宮崎監督が原作・脚本も務めたオリジナルストーリーとなり、タイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」から借りたものとなっている。(映画・comより)

さて、遂に公開となった宮崎駿監督10年振りの新作『君たちはどう生きるか』。このインターネット/SNS社会にあって公開まで全く情報も映像も表に出ないという事も大きな話題となりました。

それもあってですが、今回のシネマ放談は非常にやりづらい。というのは情報を明かさないというのは製作側の意図、更には宮崎監督の意向でもあったんですよね。もっとも公開後に見たという人がSNSにあげていたりと既に情報や内容は出回っているのですが、公共の電波で話す以上、通常以上に配慮をしながらお伝えしていきます。それでも情報を耳に入れたくないという人は今回のシネマ放談はオススメしません。しばらく番組から離れて頂いた方が良いかと思います。

それではお話ししますね。「風立ちぬ」で一旦引退を宣言した宮崎監督。しかし、鈴木プロデューサー等の進言等もあり再び今作で監督としての復帰を宣言します。そして数年の製作期間を経て遂に公開。当然期待が高まるというもので僕は先週の水曜日7月19日に松江東宝5で鑑賞して参りました。前回の「東京リベンジャーズ 血のハロウィン編 決戦」同様に水曜のサービスデーを利用。ただ人の入りはかなりのものでしたね。まだ夏休み前だよね?と確認しましたもん。でも確かに夏休みではない平日でした。客層は皆大人でしたもん。

それを考えると公開直後の三連休なんてどれだけ人が入ったんでしょう。そりゃ公開から4日間で興収21億円ですからね、相当なものだったと想像は出来ますけど。

そう考えればすごいですよね。事前の宣伝なしでこれだけ入るんですからね。「風の谷のナウシカ」から「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「魔女の宅急便」と自分も子供の頃から見てきたし、「千と千尋の神隠し」はデートで見に行ったとかそんな思い出がある。誰もがジブリ作品にはそれぞれの思い出があってだからこその宮崎駿監督への絶対的信頼感があるんですよね。だからこそ事前宣伝なしでも人を集める。それが出来るクリエイターって新海誠監督か宮崎駿監督くらいでしょうね。

では感想を率直に言いますね…。

…さっぱりわからんかった…。

いや、これはマジな感想。宮崎作品ジブリ作品に限らずこれまで色んな作品を見てきました。難解な作品にも触れてきました。

だけどこれ程理解出来ない作品もなかったんじゃないかな?

内容に触れずに伝えていくのが今回のシネマ放談ですからもちろん触れますが、最も強く感じたのは今回はかつての「トトロ」や「魔女の宅急便」の様な娯楽性重視ではなく「もののけ姫」や「千と千尋」の様なエンタメ性&メッセージ性みたいな作風でもなく究極の宮崎駿なる日本のトップクリエイターの作家性に重きを置いた内容だなと感じました。これは天才が故に行きつく所まで行きついたその末に生み出された作品だなと思いました。例えばピカソの絵を思い出して下さい。一般的には独創的な抽象画のイメージが強いですけど誰が見ても納得の芸術的作品だって世に出してるんですよね。究極の美を追求する余り到達したのが件の抽象画なのであって。

宮崎駿監督にとってのそれがこの「君たちはどう生きるか」という作品がまさにピカソにとってのそれに該当するのではないかと思います。

よって凡人である私は全く内容が理解出来ないままただ絵を追うだけになってしまった…そしてその絵を追うだけで内容についていけない私遂に…うとうとと船を漕ぎ出してしまいました。

これはね〜、言い訳をすれば水曜日の私のコンディションというのがありましてエフエムいずもで朝7時からの生放送をやってるんですよ。その為、毎週水曜日は4時過ぎに起きて4時半に家を出るという日によっては全然寝不足の時もあるんですよ。それでもしっかりとエンタメ性の高い作品の場合は睡魔に負けるなんて事はないんですが、この時は何とも不覚でしたね。クリエイターとしての宮崎駿監督を尊敬しているので大変申し訳ないと思いました。

ただね、これが薄い内容の映画だとこんな事もあるかとなるのですが、この作品の場合違うんですよね。めちゃくちゃ悔しいんですよ。内容を理解出来ないまでも最後まで見れたらまだしも寝てしまった事が。なのでコンディションの良い時にもう一度見に行く予定です。

さて、今作のテーマはタイトルこそ「君たちはどう生きるか」ですが、「君たちはどう思うか?」だと思うんです。齢80を超えた国民的クリエイターが集大成として大衆的なエンタメ性やらを排除してとにかく自身の作りたいものを貪欲に作ったその結晶の様な作品だと思います。

かつて国民的ロックバンド・サザンオールスターズがトリッキーで実験的な楽曲をよくリリースしていた時期があります。大衆の求めるサザン像との乖離の為かセールスは低下しましたが、恐らくアーティストとしてはこちらの方が世に出したい曲だったのではないかなと思っています。だからその時期に出た『さくら』というアルバムこそが剥き出しのサザンが味わえる名盤だと思っているんですね。

で、何が言いたいかと言うとこの時期のサザンとりわけ桑田佳祐さんは今作における宮崎駿監督の心境に近かったんじゃないかなと。音楽シーンで数々の大衆に支持を集める大ヒット曲を生み出した後、真の自分の作りたかった楽曲を世に放ち大衆に問うたのではないかと思うんです。

それを考えるとこの「君たちはどう生きるか」で宮崎駿監督は大衆に自身の突き詰めた究極のエンターテイメントを世に問うたのではないかと思います。そりゃ「千と千尋の神隠し」が好きという私の様なタイプが見たらかなりハードモードかもしれません。

だけどこれはホントに見るべき作品だと思います。

ちなみに前述のサザンの例で言えば一連の実験的な楽曲群を世に出し続けた後に出した曲は「TSUNAMI」です。宮崎駿監督の次作が製作されるかはわかりませんが、「ハイハイ君達が好きなのはこういうのでしょ?」なんてサザンの例だと「TSUNAMI」の様な大衆受け抜群のエンタメ作品を出したらビックリ!でもそんな淡い期待を抱いている自分が居ます。