きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

こんにちは、母さん

山田洋次監督が吉永小百合を主演に迎え、現代の東京・下町に生きる家族が織りなす人間模様を描いた人情ドラマ。同じく山田監督と吉永主演の「母べえ」「母と暮らせば」に続く「母」3部作の3作目にあたり、劇作家・永井愛の戯曲「こんにちは、母さん」を映画化した。
大会社の人事部長である神崎昭夫は、職場では常に神経をすり減らし、家では妻との離婚問題や大学生の娘との関係に頭を抱える日々を送っていた。そんなある日、母・福江が暮らす下町の実家を久々に訪れた彼は、母の様子が変化していることに気づく。いつも割烹着を着ていた母は艶やかなファッションに身を包み、恋愛までしている様子。実家にも自分の居場所がなく戸惑う昭夫だったが、下町の住民たちの温かさや今までとは違う母との出会いを通し、自分が見失っていたものに気づいていく。
母・福江を吉永、息子・昭夫を大泉洋が演じ、永野芽郁寺尾聰宮藤官九郎田中泯、YOUが共演。(映画・comより)

長きに渡り日本の映画界を牽引してきた巨匠・山田洋次監督。御年92歳。10年振りの新作「君たちはどう生きるか」を大ヒットさせた宮崎駿監督が82歳。もちろんこちらもすごい事ですが、改めて映画の世界というのは年齢が関係ないのかなと思うし、この方々が超人であるとも言えるのかななんて思います。そして主演はこちらも日本映画界の誇る大スターである吉永小百合さん。いつまでもお若いくお美しく、改めてその存在の大きさを感じます。

といった具合にどこかこういうタイプの作品は自分よりも間違いなく人生の大先輩方に支持を集める作風であって僕なんかが見た感想をあ〜だこ〜だ述べるのはどこか恐れ多い気がします。とは言え山田洋次監督官作で言えば2020年1月に「男はつらいよ お帰り寅さん」吉永小百合主演作は2021年6月に「いのちの停車場」を扱いしかも割と好き勝手に述べさせて頂きましたので今回も率直な感想を遠慮も忖度もなくお伝えさせて頂きます。番組をお聴きの人生の諸先輩の皆様、どうかご容赦くださいませ。

さて、この作品の鑑賞ですが、先週の水曜日9月20日。Tジョイいずもにて。午前中の上映で客層はご多分に漏れずといいましょうか60代70代或いはもっと上?と思われる方々。40代の自分なんかは逆に浮くくらい若かったかもです。

まず思ったのが良い意味でも悪い意味でも令和の東京下町を舞台にした昭和的喜劇映画という印象。それこそ山田洋次監督の代名詞とも言える「男はつらいよ」シリーズにも通じる寅さん的下町風土が絶妙な落ち着きを与えてくれます。隅田川の流れ然りそこに行き交う人々の姿であり下町って良いなと思わせてくれるんですよね。特に今回は墨田区を舞台にしてるという事で個人的に墨田区は馴染み深い場所でして前の彼女が墨田区の押上に住んでいてよく遊びに行ってた場所なんですよね。当時は建設中だったスカイツリーだって今や東京のシンボルでありこの作品でもその姿を非常にはっきりと写してくれている。劇中に登場した言問橋を歩いて浅草方面まで行った事とか自分の思い出とオーバーラップさせながら映画に登場してくるロケーションを楽しませて頂きました。

スカイツリーが出来たりと近年ではかなり開発が進んでいる墨田区押上、向島曳舟で近辺。確かにここに関しては令和の光景ですが、繰り広げられる話しは山田洋次監督がこれまでにも作ってきた様な昭和の下町人情話しなんですよね。母・福江は下町の肝っ玉母さん。ホームレス支援のボランティアを行う彼女の元に集まる仲間達は寅さんのさくら家にやって来るクセの強い面々程ではないにしろお喋りが大好きで一方では皆ハートフルで心優しいご婦人方。山田洋次監督は誰かの家に人が集りぺちゃくちゃしている光景が好きなのかななんて見ておりました。

また、息子である大泉洋演じる昭夫と宮藤官九郎演じる幼なじみであり会社の同僚でもある彼といい歳したおじさん同士が取っ組み合いの喧嘩をする場面なんかは如何にも山田洋次監督作品。昭和のどこか牧歌的な雰囲気は2023年でも健在だななんて思わせてくれます。

山田洋次作品更には昭和の日本映画が好きな人であれば懐かしいその雰囲気も感じる映画です。

他方良くも悪くもの悪くもな部分を伝えていきますね。

それはやはり若い人には受け入れ難い作品かなと思ったのがセリフ回しでしょうか?高齢の母親が恋愛をするというのは良いでしょう。極端に歳の離れた自分の息子の様な男性と…となれば確かに違和感が例え吉永小百合さんであっても拭えなかったかもしれません。恋愛の相手は比較的年齢の近いボランティア仲間の男性。それに上品な着物姿を写す事によって下町の肝っ玉母さんとはまた違う吉永さんの美しさを引き立たせていたのはサユリストの皆さんもご満悦だった事でしょう。ただどうしても話し方等が昭和的というか女性は男性の3歩下がった所を歩き…の様な封建的なものを感じてしまいました。思えば吉永さんと言えば天海祐希さんとももクロちゃんのコンサートに行く役もこなしたりと現代に沿う役もされてる方なんですからもう少し現代的な女性像に仕立てでもよかったのではないでしょうか?

後、永野芽郁ちゃんにもその昭和的なセリフまわしが見られ監督の思考なのか知りませんがそこに違和感が。昭和30年代辺りを舞台にしているのであれば問題はありませんが、あくまで舞台は令和の東京下町。彼女の服装に関しても令和というより平成半ばのギャル風に寄せてた感がありましたしね。その辺りにバランスの悪さが気になりましたね。

後、宮藤官九郎が居酒屋のトイレで中に入ってた客から「ノックくらいしろよ!」と怒られてる場面がありましたけど、俺からしたら「鍵くらいかけろよ!」と思っちゃいましたけどね。だってそうでしょ。お店等の公共のトイレっていつどんなタイミングで人が入るかわからない。だから使用する場合は中からロックをかけるのがマナー。もし鍵をかけずに入って他の人に入られても文句は言えないし逆に入ってしまった人の方に「すいません」って変な気を使わせてしまうわけだしね。

後、話しの本筋とは関係ないけど昭夫の部屋には初代ファミコンが箱に入って置かれてるのを見て反応しちゃいました。あの状態でファミコンを保管してるということは物を大事にしてるんだなぁと。メルカリ出したらいい値段つくんじゃないかなぁ?それから学生時代にサザンの曲を聴いてたラジカセも良いアイテムだったし、ここでサザンの曲が出てくるというのは「男はつらいよ お帰り寅さん」で桑田さんが「男はつらいよ」を歌ってた辺りからかななんて思いました。

今回は久しぶりに肯定的な面と否定的なそれを語らせて頂きました。ただノスタルジックな作風は健在だし人を一切不快にさせないハートフルな話しでした。

是非劇場でご覧下さい!