きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

老後の資金がありません!

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垣谷美雨の同名ベストセラー小説を「狗神」(2001)以来20年ぶりとなる天海祐希の単独主演作として映画化。家計に無頓着な夫の章、フリーターの娘まゆみ、大学生の息子・勇人と暮らす平凡な主婦・後藤篤子は、あこがれのブランドバッグも我慢して、夫の給料と彼女がパートで稼いだお金をやり繰りし、コツコツと老後の資金を貯めてきた。しかし、亡くなった舅(しゅうと)の葬式代、パートの突然の解雇、娘の結婚相手が地方実業家の御曹司で豪華な結婚式を折半で負担、さらには夫の会社が倒産と、節約して貯めた老後の資金を目減りさせる出来事が次々と降りかかる。そんな中、章の妹・志津子とのやりとりの中で、篤子は夫の母・芳乃を引き取ることを口走ってしまう。芳乃を加えた生活がスタートするが、芳乃の奔放なお金の使い方で予期せぬ出費がかさみ、篤子はさらなる窮地に立たされてしまう。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲。

(映画・comより)

天海祐希さんと言えば理想の上司ランキングで常に上位にランクインされる等バリバリ仕事をこなすデキる女性イメージが特に強いイメージです。これまでの映画やドラマの役柄がそのイメージに反映されているわけですが、時に庶民的な役を演じても板につくんですよね。本作の場合は正に庶民も庶民、近所を歩いていても何らおかしくない主婦なんですよね。しかもタイトルや作品概要にもある様に金策に翻弄されるという経済的にも超裕福というわけでもない。旦那が仕事に出ている間は家事とパートに時間を費やし、定期的に通うヨガスクールでのひと時を楽しむそんなライフスタイルです。

監督は『こんな夜更けにバナナかよ いとしき実話』の前田哲。今まさに大ヒット中の『そして、バトンは渡された』も手掛けています。ちなみに本作とは公開日が一日違い。コロナ禍での興行をおよぼしたのは確かですが、いずれにしても精力的に作品を作っているのが伺えます。

それにしても驚いたのは監督の振り幅の広さ!『そしてバトンは、』に関しては先月紹介しましたが、伏線の張り方が秀逸でそれを功奏させての怒涛のラストシーン。正直、私の涙腺が緩んでしまったのは同作レビュー内でお伝えしました。一転して本作はただただ笑いに振り切ってる。ともすれば重い内容になりそうなテーマですが、ひたすら笑いに転じさせる事で決してヘビーな気持ちにはさせない。それでいて大事なポイントは抑えているんですよ!前田監督ここに来て良作を生み出してきています。これから本格的にヒットメーカーになるのではないでしょうか。

さて、私が鑑賞したのは11月のとある平日。MOVIX日吉津でしたが、私以外はほぼ高齢の人生の大先輩方。平日というのもありますが、テーマがテーマだけに、という所でしょう。客層的には山田洋次監督作や吉永小百合さん主演作のそれに近かったです(笑)

で、正直年配者向けなのかな〜なんて初めは身構えていましたが、ところがどっこいですよ!全体的に作品のテンポもよく笑いだって決してベタではない。それでいてしっかりとツボを刺激してくれるギャグは悪くなかったです。前方に座っていたおばあちゃんも楽しそうに笑ってらっしゃったのが印象的です。小ネタが活きてたんですよね。草笛光子さんと天海祐希さんによる宝塚ネタや往年の『いじわるばあさん』を思わせる様なドタバタ感もあれば佐々木健介北斗晶夫妻もコメディリリーフぶりも楽しませて頂きました!

終活とか老後のライフスタイルはもちろんですが、それ以外にもニュースを賑わす様なあらゆる社会問題も盛り込んでいるんですよ。会社の倒産やリストラ、中高年の雇用、シングルマザー、年金不正受給、特殊詐欺等等。ある日突然、一家の大黒柱である主人が失業したら…なんて絶望的なシチュエーションなんだけど、そんな状況すらも明るく描いてくれるんです。

そして最終的には人間としての真の幸せとは何か?を帰着点にしています。決して俗物に流されない生き方を是とする考えを提示する辺りはどこか『ノマドランド』にも通じる様なある意味今の時代を象徴しているのかもしれませんね。

全体的には飽きる事なく軽快に展開され個人的には満足度高めではありますが、一方では気になる点もあるので触れておきますね。

詳しくは言えませんが、自分らしく生きるを帰着点にしてるのにその前にブランド物のバッグ云々の描写はどうなのかな?って思っちよいましたね。確かにこれまでお金や家族に振り回された篤子のご褒美何より綺麗な天海祐希を写したいという狙いがあったのかもしれませんが、『ノマドランド』的なラストで締めるのであればメッセージ性が弱くなってしまった感がありましたね。

それからコメディですし、バラエティ寄りのタレントさんや芸人さんを起用するのは作風上、理解出来なくはないですが、あの人もこの人も…とやり過ぎた結果、画面がうるさくなり過ぎた感は否めません。特にとあるパーティーのシーンが顕著でしたかね。カラオケの楽曲はこの映画の主要な客層に如何にも受ける様な選曲でして、昭和の名曲好きな僕としてはニヤリ顔でしたけどね(笑)

と多少の不満はありましたけど、十分楽しませて頂きましたよ!若い人にも見て頂きたい作品です!

オススメです!