きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ミステリと言う勿れ

田村由美の人気漫画を菅田将暉主演で実写化した連続テレビドラマ「ミステリと言う勿れ」の劇場版。原作で人気のエピソード「広島編」をもとに、広島の名家・狩集家をめぐる遺産相続事件の顛末を描く。
天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整は、広島で開催される美術展を訪れるため同地にやってくるが、そこで犬童我路の知人だという女子高生・狩集汐路と出会い、あるバイトを持ちかけられる。それは、狩集家の莫大な遺産相続に関するものだった。当主の孫にあたる汐路ら4人の相続候補者は、遺言書に記されたお題に従って謎を解いていく。やがて彼らは、時に死者さえ出るという狩集家の遺産相続に隠された衝撃の真実にたどり着く。
汐路を原菜乃華、彼女と遺産相続を争う狩集理紀之助を町田啓太、波々壁新音を萩原利久、赤峰ゆらを柴咲コウ、狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴を松下洸平が演じる。「信長協奏曲」の松山博昭が監督を務め、「本能寺ホテル」の相沢友子が脚本を担当。(映画・comより)

久しぶりのドラマ映画ですね。2022年1月期にフジテレビ月曜9時枠で放送され、新感覚ミステリーとして話題を呼び高視聴率を記録したあの「ミステリと言う勿れ」です。とは言えワタクシ、普段TVドラマを見ないもので当時話題となっていたのは知ってたものの全くの未見。そんな自分にとって有難かったのが9月9日放送の特別編の放送でした。全く予備知識なしで映画を見るよりまずは予習と視聴したのですが、確かにミステリーであってミステリーっぽくない。というのが菅田将暉演じる久能整が名推理を働かせて事件をズバッと解決!というものではないんですよね。彼は探偵でも何でもなくただの陰キャな大学生。だけど時に理路整然とした正論を述べそれが何とも核心をつくもんだから色んな人の心を動かしそれが事件解決に向けて動いていく。なるほどその結果を見ると確かにミステリーだわ〜。ミステリーらしからぬミステリー。これは全く新しいし当然ながらストーリーも面白い!流行るわけだわ〜なんて思いながらオンエアを見ておりました。

とこんな具合にサラッとその世界観を理解した上で公開日を待つ。そして公開後の三連休最終日9月18日敬老の日の祝日。MOVIX日吉津にて見て参りました。

午前の回に行きましたが、入場開始後長蛇の列。劇場内はほぼ満席でさすがは人気ドラマの劇場版といったところでしょうか。

さて、今回は原作でも大人気の広島編。広島の町を舞台に久能整がある名家の遺産相続問題に巻き込まれてしまうところからストーリーが始まります。

さて、こういった特定の場所を舞台にした場合、気になる事があります。それは観光映画に偏らずストーリーとうまく融合させながら映画は展開されるのか?という事。どういう事かというと映画のロケーションを特定の場所で行うのは地域活性化にも繋がるし観光客の誘致にも繋がり地元の経済の活性化にも繋がります。その意味ではもっと山陰でも映画を!…なんて事を私も思います。しかし他方はですね、地元以外の人が見た場合に観光地やロケーションをした場所に主張が傾くとそれがストーリーのはっきり言ってしまえばノイズになるきらいがあるんですよ。そこのバランスが如何によく取れるかなんですよね。その点では海外の映画にはなりますが、「ワイルドスピード」や「ミッション:インポッシブル」なんかは実によく出来ているんですね。果たして今作は?

というとこれがね〜、すごいバランスが取れてるんですよ。平和記念公園厳島神社といった場所も写しながらしっかりとストーリーを進めていく。更には狩集家として使われた屋敷や古風な街並みも魅力的に捉えているからストーリーを追いながら同時進行で素敵なロケーションも楽しめるんですね。これは広島の方も嬉しいだろうし、それ以外の地域に住んでる人も広島へ行きたい気持ちにさせてくれるんですよね。またキャストの面々が使う広島弁にも愛着が湧いてくる。

広島弁と言えば「孤狼の血」シリーズを思い出しますが、あちらは鈴木亮平さんの狂気に満ちた演技とセットで脳内に刷りこれる恐ろしさがありましたが、こちらは広島弁の持つ親しみみたいなものを感じましたね。

そしてお馴染みの久能整の金言です。今作でももちろん核心をついたロジックがここって時に出てきます。はっきり言うのは控えますが、世の中の凝り固まった価値観に縛られているおじさんに向けられたものですね。特に昨今取り沙汰されるジェンダーに関してのものです。時代は大きく変わっているのに未だに昭和の価値観からアップデート出来ないオッサンは今でも一定数います。何だったら最近でも国の首相奇しくも広島出身のあの方ですが、「女性ならではの…」と表現した事が議論を呼んでいます。もちろん文脈上肯定的なニュアンスで使っていたのですが、しかし今の時代は男性だからとか女性だからなんて安易に発言出来ない時代。僕もこの番組で以前言っちゃいましたので後で反省しました。でもね、特に昭和生まれの男性の皆さん、あなたも心当たりはありませんか?整君がこの辺り指摘しているのでしかと胸に刻みましょう。

ところでこの劇中で世の中の矛盾に対して正論を突きつけるスタイルって松本人志さん主演の「伝説の教師」というドラマを思い出します。

さて、今作がなかなかドラスティックな構成をしているなと思ったのが割と実際の事件をモチーフにしてるのでは?と思った脚本や演出なんですよね。例えば狩集家の過去の因縁なんてみたら平成の凶悪事件としては5本の指に入るであろう北九州や尼崎のものを思い出しましたし(知らない人は調べて下さい。ただしあまりにも凶悪過ぎるのでこういう話しが苦手な人には勧めません)とある人物の殺害シーンは映画『凶悪』の一場面を思い出しましたしこの映画がそもそも実際の事件を描いてます。ドラマ映画ですからエグ過ぎる描写ではないですが、一連のものを連想する様な内容でしたね。

そしてエンドです。演者のクレジットを見ると「あれ?この人出てたっけ?」なんて名前を目にします。そうです。その後にしっかりと次作を示唆する様なワンシーンが用意されています。つまりはエンドロールが流れても決して席は立たないでねって事ですね。

ドラマ未見でも楽しめる内容でした。是非劇場でご覧下さい!