きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

最高の人生の見つけ方

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ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンが共演したロブ・ライナー監督による同名映画を原案に、吉永小百合天海祐希が共演したハートフルドラマ。人生のほとんどを家庭のために捧げてきた主婦・幸枝と、仕事だけに生きてきた大金持ちの女社長・マ子。余命宣告を受けた2人は病院で偶然に出会う。初めて人生に空しさを感じていた彼女たちがたまたま手にしたのは、入院中の少女が書いた「死ぬまでにやりたいことリスト」だった。幸枝とマ子は、残された時間をこのリストに書かれたすべてを実行するために費やす決断をし、自らの殻を破っていく。これまでの人生で決してやらなかったことを体験していく中で、彼女たちは今まで気づくことのなかった生きる楽しさと幸せをかみしめていく。そして、そんな彼女たちに待っていたのは、ある奇跡だった。監督は「ジョゼと虎と魚たち」「眉山」「のぼうの城」などで知られる犬童一心
(映画.comより)

余命僅な二人が人生最後の時を共に過ごす。
モーガン・フリーマンジャック・ニコルソンが共演した2007年の『最高の人生の見つけ方』は僕の心の琴線に触れた名作でした。
自動車整備工のモーガン・フリーマンと大富豪のジャック・ニコルソン
まず顔を合わせる事のない二人が出会い、美しい友情を描きながら人生とは何かを真剣に考えたものです。
失礼承知で言いますが、オッサン二人の映画にこんなに心打たれるとは見た当時の僕は思ってもいませんでした。
そして、そんな名作『人生の見つけ方』が日本でリメイクという事で楽しみ半分不安半分の中、公開直後に見てきました。

結論から言うとフツーに良い映画でした。
でも、ハリウッド版を見ていない方はこの日本版から見る事を薦めますし、ハリウッド版を知る方は決して比較しないで見て頂きたいと思います。
つまり、全くの別物という視点で見た方が良いかなと。

ざっくり言えば家庭に尽くしてきた幸枝。
吉永小百合さんが演じるこの幸枝はハリウッド版ならモーガン・フリーマン演じる自動車整備工。
一方はバリバリの女性実業家・マ子。
天海祐希さんのきびきびした演技が正にハマり役なのですが、こちらはジャック・ニコルソンの大富豪。
この辺りの配役はオリジナルに近いですが、作品の核となるやりたい事リストに関してはハリウッド版では本人達が書いていましたが、この日本版は本人達ではなく、同じ病院に入院していた(?)女の子が書いたもの。ちなみに(?)としたのには、意味があるんですよ。
それ故に12歳の少女のやりたい事をお二人がやるのには少々無理もありますが、ここでは置いときます(笑)
何しろももクロのライブに行きたいとか大きなパフェを食べたいとか年端もいかない少女の憧れをお二人がやるんですよ、これがまたなかなか…と言いたいところではありますが、意外とこれが悪くなかったんですよ。
だってこれまでももクロなんて聴いた事ないだろという主婦と女社長が歌って踊って跳んだりしてるんですよ。ちなみに吉永さんはモノノフと公言してらっしゃいました。
このももクロのライブは実際に横浜アリーナで行われた公演に吉永さん、天海さんとムロツヨシさんが参加して撮影されたもの。
オーディエンスもももクロメンバーから近くにキャストの皆さんが居ても騒がない様にとか映画の情報が発表されるまでお三方がステージに上がって映画の撮影をした事を口外しない様言われていたそう。
そして一切口外される事なく映画の公開を迎えたわけです。
このSNSの時代に凄くないですか?
モノノフのマナー素晴らしいっ!!
そしてこのライブシーンでのももクロちゃんのステージに胸が熱くなるし、幸枝とマ子の事情を知ってるだけにじ~んときちゃうんですよ。
普段ラジオで僕はアイドルの曲はかけませんが、ももクロとBABYMETALは別ですからね、彼女達はアーティストです!…なんて言うときんこんのアイドルdisりが始まった、なんて言われそうですね。
深い意味はありませんよ(笑)

映画の話しに戻りますが、吉永さんと天海さんの関係が良かったですね。
天海さんなんかははじめはバリバリ女社長ですが、割とありがちな嫌な女設定でもあるんですよ。
病室でタバコを吸うわ、他の患者を見下すわで。
しかし、幸枝と接する事で本来の人間らしさを取り戻していく。
幼少時代のトラウマから頑なに生き続け、鎧を身に付けながら生きてきた一人の女性が生命果てるその前にその鎧を抜き取り、人生を謳歌する姿に「人間は裸で生まれ裸で死ぬ。どれだけ長く生きるかではなく、どれだけ楽しい時を過ごせたかそれこそが人の真理ではないか」と感じた私でした。
吉永さんは吉永さんで結婚以来家庭に入り、ただただその家庭に尽くしてきた。
しかし、その結果が家事を妻に任せっきりの夫に引きこもりの長男。
満島ひかり演じる長女は唯一のしっかり者ではあるが、仕事に生き、家庭の事は母親任せ。
それでも不平不満を口にする事なく黙々と家事をこなす幸枝さんでした。
しかし、彼女が病魔に冒され余命幾ばくもない時、最大の親友となったのが、マ子さんであり、そして彼女との時間が幸枝さんの人生で最も輝いた時間なのでした。
一介の主婦と女社長。
住む環境も見てきた世界も明らかに違う二人なのですが、僕が印象的だったのが、京都の旅館での光景でした。
マ子は幸枝に対し、侮辱する様な発言をした場面。
「馬鹿にしないで下さい!」とマ子を睨み付けるシーンでは、吉永さんの迫真の演技があったからこそですが、胸に突き刺さるものなありました。
主婦と実業家で住む世界や社会的な肩書は違えども守り抜いたものがあるし、生き抜いた人生がある。
そこに優劣をつけるなんてお門違いも甚だしいという事。
仏教での極楽浄土の様なものがあるかは知らないが、しかし物理的に死んだら土に還るだけ。
現世でいくらお金を稼ごうが、地位や名声を得ようがそれをお墓に持っていく事は出来ない。
一人一人の命は尊いし、人の人生の価値は測るものではない。
そんな事を告げられているかの様でした。

それからこの映画で光っていたのはマ子の秘書を演じていたムロツヨシさんでした。
冒頭から真面目な表情を浮かべるムロさんを見て「あ、今回は真面目なムロさんなんだ~」て思っていたら、いやいやとんでもない。
マ子さんの秘書役とあって終始付き人的ポジションなのですが、それがまた良いんですよ。
スカイダイビングにお供した時は出川哲朗顔負けの
おいしいリアクションだし、ももクロライブでのヲタ芸っぽい動きもムロさんに合うんですよね。
ちなみに本作の舞台挨拶の様子がYouTubeで見れるんですが、天海さんにいじられももクロちゃんにもいじられ、見ていて微笑ましいです。
天海さんのアドリブのくだり笑っちゃいました。

それではそろそろまとめに入りますが、「死」を題材にした映画っていうととかく暗くなりがちなもの。
しかし、本作は終始明るいし、死が云々というより楽しい人生や豊かな人生というものを見つめようというポジティブさがあります。
せっかく生きているんだからやっぱり人生楽しみたいじゃない?
そんな皆さんへ向けた人生讃歌とも言える作品です。
竹内まりやさんの主題歌からも感じるものがあると思います。
この秋、皆さんの人生を後押しする様な素晴らしい映画だと思います。

最高の人生の見つけ方』是非劇場でご覧下さい!