きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

憧れを超えた侍たち 世界一への記録

野球日本代表チーム「侍ジャパン」が、2023年3月のワールド・ベースボール・クラシックWBC)で優勝するまでの軌跡をたどったドキュメンタリー。2017年の「あの日、侍がいたグラウンド」、2020年の「侍の名のもとに 野球日本代表 侍ジャパンの800日」に続き、WBCに挑む侍ジャパンに密着したドキュメンタリーの第3弾。
2021年12月、栗山英樹侍ジャパン監督に就任した。誰よりも野球を愛し、選手を愛する指揮官は「世界一」を目標に掲げ、2023年3月開催のWBCに向けて進んでいく。
3大会14年ぶりのWBC優勝を勝ち取った、史上最強と言われる侍ジャパンがいかにして誕生したのか。代表選手30人の選考会議もカメラに収め、大会直前に行われた宮崎合宿、本大会ベンチやロッカーでの様子、選手の苦悩や葛藤、そして歓喜の瞬間まで、チーム専属カメラだからこそ捉えることのできた貴重な映像の数々で振り返っていく。(映画・comより)

日本中が感動に包まれたWBC.ワールドベースボールクラシック。あの感動を再び!と6月2日に全国の劇場で公開。当初は三週間限定での公開が予定されていましたが、一週間の延長。更には上映館も追加され興行収入は10億円を突破しました。

そして上映終了から程なくアマゾンプライムビデオにて配信がスタート。私も無理で視聴出来るならという軽い気持ちで鑑賞しました。

しかし、そんな僕も軽率な鑑賞動機が申し訳なくなるくらい映画として質の高いものとなっていましたのでお伝えしたいと思った次第です。

さて、まずは今作ですが栗山監督が代表メンバーを選出するとこらから始まります。チームのコーチやスタッフが並ぶ会議室で選出の議論を交わす場面にまず注視すると同時に今作のドキュメントとしての要となる部分を早くも目にしている事に気がつきます。それはこのドラマチックなWBCで大活躍をした日本代表の裏側を見せる事。それを時系列毎に追いながらあの感動の優勝の裏には一体何があったのかをリアルに伝えてくれるのです。

そこには苦悩する選手の姿もあれば故障の為に出場を辞退せざるを得なくなった選手の無念な思いを伝えたりと決して全てが順調であったわけではないという実態を写し出す事によって今大会での優勝までの軌跡を捉えていく。正にWBCの光と影を見せる事によってラストにより深い感動を与えてくれる。映画的なカタルシスの生み出し方が非常によく出来ているという事なんですね。

それにしても事実は小説より奇なりとは言ったものでこの130分には下手なスポ根漫画では到底描けない深い深い監督・選手他関係者の物語が詰まっていました。

また大谷翔平選手、村上宗隆選手、ダルビッシュ有選手、ヌードバー選手等代表メンバーの素の表情もおさめられていたのでファンの方にはたまらない内容なのではないでしょうか。

さて、私ですが野球に関してはホント門外漢そのものでございましてWBCだけ見ていたというにわかもにわか。そんなにわかな私がこの映画を語るのは大変はばかれますが、それではどの様な視点でこの映画を見ていたのかをお伝えしていきましょう。

まずは筋書きのないドラマとして日本代表メンバーの活躍を純粋に追っていました。時系列毎に追われていたのでどの様なプロセスを経てきたのかが野球に疎い僕が見てもよく理解が出来た。とりわけ準決勝のメキシコ戦ではあの劣勢から逆転に成功して勝利を治めるのですが、その舞台裏ではどの様な出来事があったのかが写されており、それがよりドラマティックな感動を生み出していました。

次に栗山監督や選手の皆さんから学ぶ事が多かったのも収穫。

まず栗山監督はチームのまとめ役としてどの様に動いていたのがよく伝わりました。これは今の時代らしい指導だと思ったのが、決して声を荒げる事はなく的確なアドバイスを選手に送る姿。また、試合を離れた場面では選手達と同じ目線に立ちながらコミュニケーションを取りそれでいて監督としての采配も忘れない。絶妙な距離感を作っていたなという印象。また、一人一人がチームを動かすメンバーであるという考えからキャプテン(主将)を置かないという方針も監督ならではのもの。監督というのは決してふんぞり返って偉そうにするものではなく、選手一人一人への愛と敬意を感じました。これは部下を持つ上司の方には是非見て頂きたいですね。

また、大谷選手は華のあるスター選手であるのは言うまでもありませんが、決してその座に甘んじるわけではなく時にチームのまとめ役としても存在感を発揮していた姿が印象的でした。また、彼の凄さがこの映画では随所で見られ改めて大谷選手の偉大さを感じました。例えば彼の打点によりチームが勝利を飾る試合でもロッカールームの彼は「くそっ!」と悔しさをにじませている。聞くと「ホームランに出来たのにっ!」ですよ。いや〜、ストイック!また、件のメキシコ戦での劣勢の状況の中、彼は決して焦ったり感情を乱したりしない。明るくチーム全体に声を掛けているんですよ。まるでこの状況を楽しんでいるかの如く。「強ぇヤツ見っとワクワクするぞ!」という『ドラゴンボール』の悟空を見ている様ですよ。それから己のプライドよりチームの勝利を第一に考えるとコメントしていた辺りは自分自身もすごく刺さりました。

最近仕事でチーム体制で取り組む際に自分の個性を優先して全体をないがしろに…したつもりはないけど結果的にそうなってる事にそのチームのメンバーに指摘を受けました。当人が感じた事なのかもしれないし或いは当人の知人等第三者から意見があったのかそこは知りませんが、割と自分には心当たりがあったので響きましたね。そうなんです、個人での取り組みとチームプレイは全く別物なんです。大谷選手の言葉を借りるなら自分のプライドを優先してしまっていたんですね。

と、この様に野球をよく知らずとも人生に置き換えた場合、各々の考え方にも投影されるものがあるのではないかなと思います。実際僕がそうでした。だからこの映画は野球が好きな方は僕なんかが言わずともとっくに見てるでしょうが、特に関心が高くないとかあまり詳しくないという人にも見てほしい。それは野球を見るのではなく監督や選手のドラマを見るのだから。

さて、今作はWBCの優勝がラストとなります。その後のビールかけや控室の歓喜の様子ももちろんありますが、野球の未来を今の子供達に託す様な終わり方。それに伴うあいみょんの「さよならは今日に」がシンクロされていてエンディングにも凝っていたなと思います。

映画としての満足度も非常に高いものがありました。