きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ゴーストブック おばけずかん

解説

ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が、子どもたちに人気の童話シリーズ「おばけずかん」を実写映画化。寝静まった子どもたちの枕元に現れて「願いをかなえたいか?」とささやく謎のおばけ。どうしてもかなえたい願いがある一樹たちは、学校で噂になっているそのおばけに導かれ、「おばけずかん」を探すことに。あやしい店主がいる迷路のような古本屋で図鑑を手に入れたものの、古本屋から出ると、そこには知らない世界が広がっていた。一樹たちは図鑑の秘密を知る図鑑坊の助けを借りながら、おばけたちを相手に命がけの試練に挑むが……。一樹を「約束のネバーランド」「万引き家族」の城桧吏、子どもたちと一緒に冒険する臨時教員・瑤子先生を新垣結衣、物語の鍵を握る謎の古本屋店主を神木隆之介が演じる。(映画・comより)

夏と言えば怪談…なんてイメージが強いのですが、今や季節を問わずホラー映画は上映されるもの。しかし、夏にはやはりお化けや妖怪と言った異次元の世界を味わえるそんな映画がやはり一本は欲しいところ。

そんな中、この夏を代表するお化け映画が本作ですね。これまで『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『DESTINY 鎌倉物語』、また3DCGアニメとして『STAND BY ME ドラえもん』シリーズや『ルパン三世 THE FIRST』等更には『永遠の0』・『アルキメデスの大戦』といった戦争モノと作品の振り幅も広くVFXを駆使した映像表現には定評のある山崎貴監督の手により子供達に人気の『おばけずかん』の映像化を成功させました。

正直、作品の評価には厳しい目も向けられやすい印象が強い山崎監督ではありますが、お化け達をどの様に表現するのか興味があり、鑑賞して参りました。

まず、冒頭で示される本作の主人公である小学生達の日常とひょんな事から彼らの担任を務める事になる新垣結衣演じる女性教師の描写から始まります。とある田舎町の子供達特にそこに赴任してきた若い女性教師がどの様に出会い、本作の核となるお化け達に奔走されるファンタジーな世界に足を踏み入れる事になるのかですね。

小学生ならではのステレオタイプな生意気さと子供達の扱いに慣れていない新任教師のやり取り。セリフ回し等に悪い意味での山崎作品らしさが出ていたのでこれまでの山崎監督作が合わなかった人はこの辺りで萎えてしまうかもしれませんね。

しかし、私の場合この辺もまぁこんなもんだよねと心得つつ見ておりました。

そして怪しげな古書店に入り込みお化け図鑑を取り出した事で摩訶不思議な世界の幕開けとなるわけです。

そして飛び出してくるお化けの多彩さが見ていて楽しい。山崎監督の真骨頂とも言えるCGやVFXの応酬。それはこのお化けだけではありません。彼らが迷い込んでしまった異次元の空間。見慣れているハズの町の光景や瑤子先生の住居等等とにかくトリッキーで作り込まれています。こういう表現は確かに山崎貴監督ならではだなと感心させられました。

そしてこれはラストのバトルシーンに至るまで続き、少なくとも日本の映画界でVFXを使わせたらやはり山崎監督の右に出る人は居ないなと改めて納得させられましたね。

そしてストーリーの展開も悪くはなかった。もちろんこれは現在ありきの話しではありますが、彼らと行動を共にする一人の少女の身体の謎。少々のツッコミ点は確かにありましたが、ごくごく自然に見せてくれていたので、話しを集中しながら追う事が出来ましたね。

また、本作が夏に公開されたのは大変意義があったと思います。とある田舎町を舞台にしながらそこに住まう少年少女の友情と経験をテーマに映しているんですね。『スタンド・バイ・ミー』という名作映画があります。少年達が行動を共にしながら、彼らにとっての課題をクリアする事で各々が成長していくその過程を捉えた素晴らしい映画ですね。本作でもやはりそれに近いものがあり、本作冒頭での悪ガキっぷりとラストでの彼らの姿には確実に変化を感じます。そしてそれは彼らを率いていたハズの瑤子先生もまたしかりでして冒頭の彼女は東京で派遣切りに遭いやむなく郷里に帰り、臨時教員をする姿が映し出されます。明らかに腰掛けで仕方なく特に子供好きなわけではない。何なら子供を少々疎ましく感じてるくらいですよ。それが数々のミッションをクリアし、子供達と協力し、絆を深めた後だと顔つきも彼女自身の考え方にだって変化が生まれる。彼女もまた子供達と共に成長していくんですね。

いや〜、それにしてもガッキーはこういう困難を乗り越えて道を切り開いていくタイプの役って合いますね。2017年の『ミックス。』なんかもそんな感じでしたもんね。

山崎監督って前述の様に厳しい評価を受ける監督の筆頭のイメージです。更に本作は興行的にかなり苦戦を強いられている様です。しかし、本作は大人と子供の成長譚としてしっかり作られていたと思いますし、良い作品でしたよ。夏休み中の子供達にも是非見て頂きたい内容でした!