きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

大名倒産

ベストセラー作家・浅田次郎の同名時代小説を、「そして、バトンは渡された」の前田哲監督が映画化。
江戸時代。越後・丹生山藩の役人の息子として平穏に暮らしていた間垣小四郎は、ある日突然、自分が徳川家康の血を引く丹生山藩主の跡継ぎだと知らされる。しかも実の父である一狐斎は、小四郎に国を任せて隠居してしまう。庶民から藩主へと大出世したかに思えたのもつかの間、丹生山藩が25万両(今の価値で約100億円)もの借金を抱えていることが判明。頭を抱える小四郎に、一狐斎は「大名倒産」を命じる。それは借金の返済日に藩の倒産を宣言して踏み倒すという案だったが、実は一狐斎は小四郎に全ての責任を押しつけて切腹させようと企んでいた。
神木隆之介が主演を務め、キャリア初のちょんまげ姿に挑戦。小四郎の幼なじみ・さよを杉咲花、小四郎の兄・新次郎を松山ケンイチ、実の父・一狐斎を佐藤浩市が演じる。「七つの会議」の丑尾健太郎と、テレビドラマ「下町ロケット」の稲葉一広が共同脚本を手がけた。(映画・comより)

ここ近年の日本の映画でコメディ時代劇と呼ばれるものがあります。大河ドラマはだしのガッツリとしたものではなく、カジュアルな雰囲気で現代的な視点も積極的に取り入れてストーリーも決して難解なものではない。代表的なものだと「超高速!参勤交代」、「殿、利息でござる」、「引っ越し大名」等。時代劇特有のチャンバラ的なアクションはなく、現代の視点を元にしているから特に経済を扱うものが多いイメージですね。

この「大名倒産」もまた同様の映画であり、番組で扱った「そして、バトンは渡された」や「老後の資金がありません」今年の公開作だと「ロストケア」や「水は海に向かって流れる」の前田哲監督。「老後の資金がありません」が割と良作だったのでコメディとは相性の良い監督というイメージがあり、期待して6月24日、MOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。

作風からやはりと思った客層は比較的年齢層高め。でも中には神木隆之介くんのファンなのか若い女性の姿もありました。

さて、今作の特徴を挙げるならばまず時代劇でありながら現代的な言葉が多用されている点。「マジっすか?」や「○○かよっ!」とかダウンタウン松本人志さんのイメージが強い「あっつっ!」とか「いったっ!」の様な一拍溜めてからのリアクション言葉ね。更に杉咲花ちゃんのさよという町娘の殿である小四郎や家臣への口の利き方とかは封建的な江戸時代後期ではまずあり得ないハズです。最も「レジェンド&バタフライ」での綾瀬はるかが演じた濃姫木村拓哉織田信長へのそれを目の当たりにしてるからこの辺は現代風に寄せているという事で僕は気にしませんでした。

ただ、ここで言えるのですが、ガチな時代劇を求めるのであればこの辺りで脱落しちゃうかもしれません。

更には借金返済の為に小四郎はどの様に翻弄していくのか、これが今作においての見どころなんですが、ここにおいてはチームプレイがとにかく見ていて楽しいんですよね。小四郎以下幼馴染のさよ、家臣に兄弟達。浅野忠信小手伸也松山ケンイチ等個性豊かな面々に紅一点の杉咲花ちゃん等豪華俳優陣が100億円もの多額に負債を返済する為に殿である小四郎と一蓮托生の運命を共にするんですね。

そこで出てくる現代的な倹約法、サブスクリプション、シェアハウス、SDGS等言葉こそないもののこれらを江戸時代的な解釈で表現していたのが面白かったですね。参勤交代時には宿には泊まらず皆で野宿…でも今でいうテントの様なものを張り、野外で魚を焼いて食べたり火を使って鍋をつついたり。倹約の為ではあるけど現代でいうキャンプというアウトドア娯楽に転じていたのがユニークだったし、はじめは懐疑的だった家臣達もこのアウトドアを通じて小四郎に心を開いていく辺りも映画的なストレスがなく楽しめました。

神木隆之介くんのコメディ演技もピッタリだったし、杉咲花ちゃんも振り切っていて良かったですね。「99.9」の時もそうだったけど彼女はコメディエンヌとしても光るんですよね。また、女性陣だと宮崎あおいさんも魅力的でしたね。小四郎の母親役という事で神木くんとそんなに歳も離れてないけどどうなんだ?と思ってましたが、そこはストーリーから納得でした。

佐藤浩市さんや藤村政信さん、浅野忠信さん、小日向文世さん等のベテラン勢は流石!梶原善さんもこういったコメディには外せない俳優さん。そして石橋蓮司さんは悪い奴を演じたら見事なまでのヴィラン感が出ますよね。「アウトレイジ」での石橋蓮司さんが僕は大好きです!…なんて言ってたらキャストが北野映画でよく見る顔触れですよね。

後、この映画は食べ物…というか主に鮭ですけどめちゃくちゃうまそうに撮れてました。膳に乗せられた鮭の塩焼きに鮭の入ったコシヒカリでのおにぎり等越後村上の特産の魅力を最大限に引き出す良い撮り方だと思いました。

とこの様に僕は非常に楽しく今作を鑑賞しましたが、ただはっきりと好き嫌いが分かれる作品かなというのもあります。

というのが前述の様にこの時代にそぐわないセリフ回しを見るとコメディの名を借りたコントとも取れるし、笑いに走ろう走ろうと過剰な演出にくどさが出てだというのは否めないし、借金返済に際してのカタルシスを生む演出が欲しかったというのもまた事実。

果たしてそこをどう捉えるかはあなた次第です!是非劇場でご覧下さい!