きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

ハリソン・フォード演じる考古学者インディ・ジョーンズの冒険を描くアドベンチャー映画の金字塔「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作。前作から15年ぶりの新作となり、過去4作でメガホンをとったスティーブン・スピルバーグジョージ・ルーカスとともに製作総指揮を務め、「LOGAN ローガン」「フォードvsフェラーリ」のジェームズ・マンゴールド監督にメガホンが託された。
考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズの前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラーを相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる。
宿敵フォラー役を「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」「アナザーラウンド」など国際的に活躍するデンマークの名優マッツ・ミケルセン、インディとともに冒険を繰り広げるヘレナ役をドラマ「Fleabag フリーバッグ」「キリング・イヴ Killing Eve」のクリエイターとしても知られるフィービー・ウォーラー=ブリッジが務める。そのほか、「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」にも登場したサラー役のジョン・リス=デイビスがカムバック。スペインの名優アントニオ・バンデラスも出演する。シリーズおなじみのテーマ曲を手がけた巨匠ジョン・ウィリアムズが引き続き音楽を担当。(映画・comより)

レイダースマーチを聴くと無条件にジョーンズ博士を思い出すというそれくらいに音楽と映画がガッツリハマっているあの「インディジョーンズ」が15年振りに帰ってきました。

しかし、ジョーンズ博士を演じる名優・ハリソンフォードは御年81歳。さすがに往年の様なアクションを期待するのは酷というもの。でもそんな事は気にしちゃいけません。ハリソンフォードがインディ・ジョーンズとしてスクリーンに出るのは今作がラスト。その勇姿をしかと目に焼き付けたい。そんな思いを胸に7月2日にMOVIX日吉津で鑑賞。字幕版で見たかったのですが、時間が合わず吹替版を選択。朝8時過ぎの回でしたが、早朝にも関わらずなかなかの人の入りでしたよ。

さて、今作の冒頭で出てくるのが1945年のジョーンズ博士の姿。作品上では青年期にあたるのですが、昔のハリソンフォードの映像を使わずに特殊メイクでもって若返りをさせています。ハリウッドの特殊メイク恐るべし…なんて感心して見ていましたが、本作の持つテーマがまさか置き去りにされた過去への強い固執それがまさにハリウッド映画にも通じるなんてこの場面を見た時には思いもしませんでした。

そして時は流れ1969年。考古学の教授は定年を迎えます。しかし、それを前にした授業の場面は散々たるもの。人々はビートルズに熱中し、ヒッピー文化が隆盛を誇り人類初の月面着陸に沸き街ではパレードが催されていたりする。未来への期待や希望に溢れる過去に対しては後ろ向きな捉え方をされるがあまり生徒達は誰一人ジョーンズの講義を聞いていない。

しかし、ジョーンズの興味の対象は考古学であり歴史そしてトレジャーハントなんですよ。

これらは既に過去の遺物として扱われ、軽視されていたりするんだけどジョーンズの場合はここへのこだわりこそがインディジョーンズのインディジョーンズたらしめる物であると固執し続ける。

でもここで特徴的なのがテレビジョンから流れるビートルズの「マジカル・ミステリー・アワー」なんですよね。ビートルズと言えばこの時代の世界中の若者が熱狂した音楽グループ。いわば69年の時点での最先端なんですよね。だけどこの曲がこれから始まる大冒険への布石として使われる何ともにくい選曲。

そしてこの大冒険です!やっぱりインディジョーンズはこうでなくっちゃの仕掛けたっぷりの場面の数々。そして僕は81歳のハリソンフォードに往年の様なアクションを期待するのは酷なんて言いましたが、いやいやごめんなさい。スゴイです!

とりわけ大階段からの車の運転。街中ではあまりに危険な走行ですが、ハリソンフォードは文字通りの体当たりのハンドルさばきでこのド派手なカーアクション場面を見せてくれました。他にも81歳とは思えない華麗な身のこなしで見せてくれる。名優は老いて尚衰えずをこの映画で証明してくれました。

さて、過去に固執するそんな不器用な姿を見せたジョーンズ博士の姿は今のハリウッド映画にも通ずるものがあるなと感じたのでここについて話していきます。

今や映画もプラットフォームの多様化によってかつての様に映画館だけではなくなりました。各種配信サイトで手軽に見れる様になりこれが興行成績にも左右されたりという実情があります。かつては潤沢な資金があり、映画の制作にも莫大な予算を投じて実験的な作品だって数多く作られてきました。「インディ・ジョーンズ」が流行った1980年代なんかはまさにそんな時代でして全世界で大ヒットして現在でも大人気のシリーズは枚挙にいとまがない程あります。

しかし、今はどうでしょう。かつての様な新しいシリーズ物が生まれなくなり仮に出てきてもMCU等のアメコミ作品に限られてしまっています。ここ日本だってそうです。いや、世界的に見ても特に顕著かもしれません。というのが日本の場合、アニメ映画という日本独自のヒットコンテンツがここ近年特に力を持ってきたというのがありますが、ハリウッドの実写映画がかつての様に大ヒットしなくなりました。この「インディ・ジョーンズ」の久しぶりの新作だって「東京リベンジャーズ」に首位を阻まれたりしてるんですから。

この映画では時代に取り残されたジョーンズ博士の姿を見せる事によってハリウッド映画の今の状況と重ねていた様に僕には見えました。でもジョーンズ博士がヘレナと共に繰り広げた大冒険には時空の歪みから過去に遡ってこれをヒントに理想的な活路を見出す場面がありました。ハリウッド映画にも現状を変える大きなヒントが過去にあるかもしれませんね。賢者は歴史に学ぶという言葉があります。これは映画に限らず我々の人生の局面においても当てはまるかもしれません。

インディ・ジョーンズ」の完結作にはこういったテーマを内包させながらジョーンズ博士のハリソンフォードの餞として最高の仕上がりとなっていました。

是非劇場でご覧下さい!