きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

貞子DX

リング」シリーズに登場する世界的ホラーアイコン・貞子がもたらす恐怖を描く「貞子」シリーズの1作。

呪いのビデオを見た者が24時間後に死亡する事件が全国各地で続発。IQ200の天才大学院生・一条文華は、テレビ番組で共演した人気霊媒師・Kenshinから事件の解明を挑まれる。呪いがSNSで拡散すれば人類は滅亡すると主張するKenshinに対し、文華は呪いなどあり得ないと断言。そんな彼女のもとに、興味本位でビデオを見てしまった妹・双葉から助けを求める電話が入る。「すべては科学的に説明可能」と考える文華は、自称占い師の前田王司や謎の協力者・感電ロイドとともに、貞子の呪いの謎を解き明かすべく奔走する。

「妖怪シェアハウス」「魔女の宅急便」の小芝風花が文華役で主演を務め、ダンス&ボーカルグループ「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」の川村壱馬、「アヤメくんののんびり肉食日誌」の黒羽麻璃央が共演。監督は「仮面病棟」の木村ひさし。(映画・comより)

ジャパニーズホラーの人気アイコン貞子が誕生してから25年の時が経ちました。97年の「リング」で初めての貞子体験で恐怖を感じたワタクシ。海外で言う所のジェイソンの様なホラーアイコンが遂に日本からも登場したと当時の事は強く印象に残ってます。ところが昨今ではネタ的扱いになっていたりと当時の怖さを知る身としては淋しくもあり。

なんて言ったものの貞子関連の作品を見るのは割と久しぶりでして、果たして最近の貞子はどの様に取り沙汰されているのかを楽しみにMOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。

見た者が必ず一定期間中に死ぬという呪いのビデオ。「リング」の頃はまだまだVHSの全盛。そういった事もあってこのビデオというのが非常にリアルなアイテムでした。しかし、時が流れ今やVHSというものを使う人もめっきり減ってしまった今の時代。ビデオはレトロなものとして扱われる反面、現代的なアプローチを仕掛けていました。

それはSNSや動画といった今の時代における身近なツールをホラーアイテムとして利用する事によって恐怖を煽るというもの。しかし、これは前作でも使われていた様で、では今作の特徴的な面は何か?

それはズバリ科学の力です!池内博之が演じていた霊媒師・Kenshinは非科学的な呪いの力を力説。しかし、対する主人公である小芝風花演じる天才大学院生・一条文華が呪いを徹底して否定。科学こそが!という主張を一貫して強調します。しかし、興味本位でビデオを見てしまった妹の双葉(八木優希)の身に不可解な事象が起こった事で物語が大きく進行していくわけです。科学信奉者である文華が身内に呪いと思しきアクシデントが発生する事で彼女はどの様に動いていくのかが見てる人の好奇心をかき立ててくれました。

尚、本作はホラーではあるものの、ガチガチなホラーそれこそ「リング」の一作目の様なものではなく、エンタメに振り切っていたのが奏を攻してか非常にテンポも良くホラーが苦手な人でも楽しめ内容となっていました。

というのもメガホンを取ったのが木村ひさし監督。これまで「劇場版ATARU」や「99.9-刑事専門弁護士 THE MOVIE」といったTVドラマの劇場版や「任侠学園」や「屍人荘の殺人」等コメディ色強めの作品を手掛けてきた監督です。それもあってかホラー映画らしからぬ濃いキャラクターの登場人物やギャグ描写等等割とゆる〜いテイストもあり。

これは個人的に思ったのが例えば先日取り上げた「カラダ探し」。ジャンルとしてはホラーなんだけどそれにプラスして青春映画要素も非常に強めでした。で、緊張と緩和が上手く生み出されていて映画としてまとまっていたとレビューでもお伝えしました。

で、この「貞子DX」ですよ。貞子や呪いのビデオは健在でもやはり木村ひさし節というのかコメディを入れる事によって疲れない。

今はガチなホラーだとなかなか難しいのかな?まぁホラー描写ばかり続くと疲れるというのは確かにあるしね。

で、そんな木村ひさし節にうまく乗っかったキャラクターが前田という青年。色んな経緯を経て文華とバディを組む事になるのですが、彼がいちいちウザい。ナルシスト全開で事ある毎に発するクサ過ぎるセリフと決めポーズの様な仕草。女性なら誰でもちゃん付けする馴れ馴れしさ。文華や妹の双葉ならまだわかるが母親にもちゃん付けですからね、如何にヤバい奴か(笑)呪いを恐れバタついてみたりともすれば足手まといになりそうな彼を瞬時に突っ込む文華のやり取りがとにかく笑いを誘います。LDHには疎い私なんですが、前田を演じた川村さんは非常に役がハマっていたなと思います。「ATARU」での北村一輝さんと栗山千明さん、「屍人荘の殺人」での神木隆之介さんと浜辺美波さんの様に男性ボケ役女性ツッコミというこの位置関係は木村監督の得意とする所なんだろうなと思いました。

さて、この様にホラーでありながらコメディ色強めで楽しんだ今作ですが、しっかりとメッセージも打ち出されていました。

それはウイルスについてです。科学だ呪いだと翻弄される登場人物達。しかし、結局は貞子の恐怖に対峙した時に無力である事に気づかされるのです。しかし、最終的には規則正しい生活こその重要性が解かれやがて解決に向かっていくのです。我々は朝の同じ時間に起床し、一日の生活をスタートさせます。仕事に学業に家事にとそれぞれの生活のリズムがあり、三食の食事をし大体同じ時間に睡眠を取る。これが少しでもバランスを崩してしまうと免疫が低下し、ウイルスに侵食され体調を崩し、病気になる。これを貞子という稀代のホラーアイコンを使いながらうまく伝えてくれるんですよね。

正直、科学 VS 呪い論争からどの様に話しが広がるのかを注視していた分、意外な帰結点ではありましたけどこれはこれで良かったかなと思ってます。

先日の「カラダ探し」同様、ホラー映画が苦手な人であっても楽しめる作品かなと思います。言い換えればガチなホラーを求める人だと物足りないのかもしれませんが。

僕は割と楽しみました!オススメです!