きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

パラサイト 半地下の家族

f:id:shimatte60:20200201161546j:plain

殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「スノーピアサー」の監督ポン・ジュノと主演ソン・ガンホが4度目のタッグを組み、2019年・第72回カンヌ国際映画祭韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。共演に「最後まで行く」のイ・ソンギュン、「後宮の秘密」のチョ・ヨジョン、「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチェ・ウシク。
(映画.comより)

今年最大の話題作『パラサイト 半地下の家族』。
昨年のカンヌ国際映画祭韓国映画として初めてのパルムドールを獲得。
韓国での観客動員は1000万人という驚異的な数字を叩き出し、日本にも上陸。
多くの著名人も大絶賛の嵐。
興行的にも大成功となっています。
僕は2月1日のファーストデーにMOVIX日吉津で鑑賞。
ファーストデーであり、土曜日という事もあり、やはりかなり人が入ってましたね!
そんな中、見てきた僕。
果たしてどの様に見たかと言えば、まず結論から言います!
文句なしの大傑作です!
韓国の家族達の貧困層の実態を浮かび上がらせながら、外国である日本という国で映画を鑑賞。
資本主義社会の成れの果てとしての持つ者と持たざる者の分断、21世紀の世界を覆う格差という問題は誰の目が見ても理解を得られるというもの。
それをサスペンスフルにスリリングな展開で描くポン・ジュノ監督の手腕が非常に光っています。
そういえば最近、『カイジ ファイルゲーム』で格差社会と同作の親和性について語りましたが、『カイジ』は持つ者と持たざる者の対立を描きながら、持たざる者の下剋上が面白さを生む、それがカタルシスになるなんて語りました。
もちろんそれによるエンタメ性も魅力ではありますが、本作に関して言えばそんな単純な構造ではないんですよね。
『パラサイト』における特色としては、持つ側である資産家階級が決して悪者として描かれていない。
IT企業CEOである主人は社会的大成功者でありながら偉ぶる事もなく、雇っている運転手が年長者であれば敬語で接する紳士。
その妻もやや天然で世間知らずな所はあるものの、決して毒気はない美人。
二人の子供も決してワルガキではなく、どこにでもいそうな子供達。
まぁ、超金持ちでありながらそんな人の良さそうな家族だからこそ寄生されやすいと言えばそうかもしれませんけどね。
で、寄生する側の地下家族の面々。
これまた面白いのですが、彼らって経済的な弱者ではあってもそれぞれのスキルが高いんですよね。
お母さんに至ってはハンマー投げの元韓国代表・オリンピック選手なんですよ。
で、家族揃って知恵が働くから(特に妹)まんまと乗っ取りに成功しちゃいます。
それがまた何とも痛快なんですけどね。

で、家の乗っ取りなんて言うと日本でもあった凄惨な殺人事件を思い出しそうですが、この映画の場合そのまた別の恐ろしさがあり、それが話しを転がしていくんですよ。
前半は比較的、笑いを誘う様な展開であったのが、次第にシリアスモードへと舵を取り、見た人への恐怖が待ち構えていきますが、これは是非直接見て頂きたいところ。
そして見終わった後、我々に宿題を投げ掛けてくる様なつくりにただただ脱帽するばかり。

それから本作で鍵となるもの。
それが匂いであり、水の表現。
直接的な表現こそありませんが、金持ちには匂いはありません。
きっと良い香りなんでしょう。
ところが半地下家族達は食べているものや住居から溢れる地下特有の匂いをまとっている。
そしてその匂いが後半の展開で重要な意味を持ちます。
一方、水に関して。
物語の潮目を変える強い雨が降ります。
高台にある社長一家はほとんど被害はありませんが、半地下一家は甚大な被害を被ります。
こういったところからも両家の格差が如実に現れるのですが、匂いや水を比喩として格差を表現する辺り、非常に分かりやすかったです。
何よりあの水害シーンなんかはCG一切なしで可視化してましたからね。
ハリウッドばりの撮影技術にも圧倒されました!

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、この半地下家族と社長一家以外に現れるある夫婦も存在感抜群でした!
この人達の存在がより映画を盛り上げていたと思います!

そしてラストに感じるあのやりきれなさ。
息がつまりましたし、色々考えさせられました。
韓国映画は久しく見ていませんでしたが、韓国の映画技術やエンタメ性の高さには驚かされました。
これは観ないという選択肢はありません。
まだ見てないという方は是非、劇場でご覧下さい!