きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

天気の子

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君の名は。」が歴史的な大ヒットを記録した新海誠監督が、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄されながらも自らの生き方を選択しようとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション。離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。「兄に愛されすぎて困ってます」に出演した醍醐虎汰朗と「地獄少女」「Last Letter」など話題作への出演がひかえる森七菜という新鋭の2人が、帆高と陽菜の声をそれぞれ演じる。そのほかの出演に小栗旬、本田翼、平泉成梶裕貴倍賞千恵子ら。「君の名は。」に続いて川村元気が企画・プロデュース、田中将賀がキャラクターデザイン、ロックバンド「RADWIMPS」が音楽を担当。RADWIMPSが手がける主題歌には女性ボーカルとして女優の三浦透子が参加。
(映画.comより)

はい、お待たせしました!今夏最大の話題作『天気の子』です。
興行収入250億円と邦画歴代2位。
社会現象となった『君の名は。』から3年振りとなる新海誠監督の新作です。
君の名は。』に続いての新海誠脚本によるオリジナルストーリーであり、企画・プロデュースは川村元気、音楽担当はRADWIMPSと前作と同じ座組です。

さて、『天気の子』を語る前に前作『君の名は。』を僕はどの様に見ていたかをお伝えしましょう。
3年前ですから当然このブログはやっていませんし、ましてやラジオで映画評論をするなんて考えてもいなかった頃です。
2016年9月初旬。『君の名は。』鑑賞の一回目です。
実はその時ってそんなに感動はしなかったです。
いや、フツーにいい映画だなぁ。くらいの感想。
ところがこの映画って実は二度、三度と見る事によって始めてその魅力に浸かれるんですよね。
美しい映像に伴うRADWIMPSの音楽、絶妙に練られた脚本、余韻を伴うラストの演出等々。
しかし、その一方これは映画に一家言ある方々がよく口にする様に青臭さとか童貞臭さみたいなものもあってそれがちょっと気恥ずかしくもあるというのも確か。
それが故にかな?『ボヘミアン・ラプソディ』を9回見たとは言えても『君の名は。』を7回見たとカミングアウトするのがこっぱずかしかったりもする。
ある意味『君の名は。』という作品は自身の中に潜む純粋さを試す様なそんな踏み絵的作品だとも思ってます。

それを踏まえての『天気の子』。
結論から言います。
君の名は。』の青臭さいや言い方を変えましょう、瑞々しさを更に突き詰めつつも、同時に社会問題的側面も織り混ぜながら、でも確実に映画としてのエンターテイメント性を抽出した様な内容。
良い作品であるのはもちろんですが、『君の名は。』同様賛否の差が極端に生じる作品だと思います。

まず、本作はタイトルからしてなんですが、天気を題材にしているわけですが、この天気描写がとにかく美しい!
天気+新海誠で思い出すのが『言の葉の庭』(2013)がありました。
かれこれ6年前の作品ですし、『君の名は。』で大ブレイクを果たす前のいわゆるカルト的な人気を得ていた頃の作品ですが、あの作品で描かれる雨は非常に繊細ですし、何より雨が降り始める瞬間の光景なんかはただただうっとりとさせられてしまう。
そしてそんな新海誠がすっかり人気クリエイターとなった本作では雨の描かれ方に加え、背景の街並に深みが増し、よりその美しさに魅了されます。
はっきり言ってそのグラフィックを見るだけでも1800円以上の価値はあるんじゃないでしょうかね?
そしてそんな雨が近年の異常気象とも見事にリンクしてくる。
特に長雨による水害なんてニュースを耳にし、その映像なんかを目の当たりにする事が多いのですが、もし日本の首都・東京が水で埋め尽くされてしまったら?という仮想世界を描く事。
実はこの映像って水害じゃないにしても地震等の大きな災害に置き換えて見る事だって出来ますが、見ている側に大きな恐怖を与えつつも実はその状況においても逞しく生きていくであろうという姿が見えてきます。

それから若者の貧困問題についても切り込んでいましたね。
家出した帆高が東京の街をさ迷いながらもたどり着いたのがネットカフェ。
しかし、資金が底を付き添うになり、困窮する姿等はまさにネットカフェ難民の実態を思わせるし、未成年同士で肩を寄せ合いながら暮らす事の困難等々。
ただ、希望を抱かせる展開として彼らは自分達で運命を切り開いていこうとするんですね。
陽菜の仕事を生み出すくだりなんてすごい現代らしいなと思いました。
自分もフリーランスで仕事をしてる身なんですが、今は、仕事の仕方ひとつ取っても十人十色。
ここで帆高と陽菜がやってる事なんてまさに人が求める需要に対してのパフォーマンスをしてお金を得ている。
二人は未成年ながらしっかりビジネスチャンスを見つけているんですね。ただ、その仕事が悲劇を招くのは皮肉な事ではありますが。

う~む、何だろう。前作は東日本大震災とリンクさせる災害への警告を裏に据えながらのボーイミーツガールなストーリーであり、俗にセカイ系と言われる新海誠観だったわけですが、本作たと更に災害テーマも含みつつの現代社会的描写がより強く出ていた感じですかね。

さて、前作『君の名は。』の奥寺先輩役の長澤まさみさんはベストキャスティングだったと思います。
青臭~い感じの瀧くんが憧れるお姉さん感がかなりはまっていましたよね。
で、この『天気の子』で言えば本田翼演じる夏美がベストなキャストでした。
本作における夏美のポジションてかなり微妙な立ち位置なんですよね。
小栗旬演じる須賀にとっては仕事のバディでもあり○○な関係でもある。
帆高にとっては転がり込んだ須賀の事務所に居たお姉さんて感じ。
ワイルドでもあり、セクシーだし可愛くもなる。
でもその実、就活中の女子大生。
本田翼さん一人で色んな見せ方をさせてるんですよね。
今まで彼女の出た映画だと『少女』(2016)のダークな演技くらいしか印象に残っていませんでしたが、これでかなりイメージ変わりましたねぇ。

そろそろまとめますが、とにかく映像の美しさに溜飲が下がる事は間違いありませんし、社会問題を取り入れながらも、家出少年の成長の記録としてのストーリーは良く出来ていると思います。
多少ご都合主義なきらいは否めないのですが、ただそれは例によってRADWIMPSの曲とエンディングで浄化されます。
そのエンディング中、誰一人席を立たなかったなぁ。
つまりそれクラスの作品だという事です。