きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

青くて痛くて脆い

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実写とアニメで映画化された「君の膵臓をたべたい」の住野よるの同名青春サスペンス小説を、吉沢亮杉咲花主演で映画化。コミュニケーションが苦手で他人と距離を置いてしまう田端楓と、理想を目指すあまり空気の読めない発言を連発して周囲から浮いている秋好寿乃。ひとりぼっち同士の大学生2人は「世界を変える」という大それた目標を掲げる秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げるが、秋好は「この世界」からいなくなってしまった。その後のモアイは、当初の理想とはかけ離れた、コネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルへ成り下がってしまう。そして、取り残されてしまった田端の怒りや憎しみが暴走する。どんな手段を使ってもモアイを破壊し、秋好がかなえたかった夢を取り戻すため、田端は親友や後輩と手を組んで「モアイ奪還計画」を企てる。監督は「映画 妖怪人間ベム」の狩山俊輔。
(映画.comより)

『君の膵臓をたべたい』。
言わずと知れた大ヒット作であり、私も大好きな作品です。
そんなキミスイの作家・住野よるさんがキミスイでついたイメージをぶっ壊すべく書き上げたのが本作の原作でして、普段あまり小説を読まない自分としてはキミスイ破壊というそのイメージに並々ならぬ関心を是非映画で楽しみたいと思い、公開直後に見て参りました!

「ふむふむ、なるほどそういう事か~」なんて唸る気持ちで見て参りましたが、キャンパスライフという青春劇に見せかけた心理サスペンス。
なかなかこれが面白かった!

今回ももちろんネタバレ回避の為に詳しくは話しませんが、予告編でも流れていたヒロインの死を示唆する場面。
この流れだとキミスイ踏襲路線か?なんて思っても仕方ない。
これがまた、見事に裏切られた時に画面上では「一体何が起こっているのだ?」と二度見したくなりました。
思えばあのキミスイだってそうでしたね。
浜辺美波ちゃん演じるヒロインが膵臓の病気を患っていて…なんてシーンは前半から伝わるわけですが、死因はまさかの…?というね。

本作においてもこの見ている人へ与える意外性という名の衝撃は健在でして、中盤以降の展開は終始このハラハラ感をエンタメに落とし込んで楽しませてくれます。

後半はSNSやネットという現代のツールを使いながら自己のアイデンティティーに問題を投げ掛けてくるこの辺り作品のタイプとしては『何者』(2016年)に近いものを感じます。

そしてこの映画から感じるテーマとしては理想を達成する為に手段の正当性とは?
人はちょっとした誤解から疎遠となり、時に相手への憎悪へと変わる
人は見かけによらず繊細かつデリケートである
等々でしょうか。

また、モアイを潰す事を画した主人公達が陥る意外な落とし穴から人間の緊張感の緩みが取り返しのつかない展開へ変わる事への警鐘等随所随所に見ている人へと問題提起をしてきます。

興行的にも奮わなかったり、評価的にも厳しい意見がありそうな作品ではありますが、個人的にはこのタイプの作品は好きです。

キャストの面々も非常に光っておりまして、まず主人公を演じた吉沢悠さん。
彼の演技力はもはや「イケメン俳優」という域を脱していまして、『銀魂』の様なコミカルな作品でも確実に存在感を見せつけていましたが、本作における青臭くそれでいて狂気を秘めた様な役は絶妙に合っていました。
ヒロインの杉咲花さん。
彼女が出ていた作品は鑑賞機会が久しくなかったのですが、良く言えば天真爛漫悪く言えばイタイ子というキャラクターがはまっていましたね。
で、新入生の時にちょっとイタかった彼女がサークル内で自分のポジションを確立した後の意識高い系部長への変遷ぶりなんかも妙にリアリティーありましたね。
ああいうコ俺も見たなぁ(笑)
そして森七菜ちゃんですね。
音楽活動も充実してる彼女だけあってバンドを組んでのライブシーンも板についてます。
その他若手実力派のキャスト陣が作品を彩ってくれています。

ハラハラドキドキで『事故物件』とは違う種類の怖さを感じる作品かと思います。
是非劇場でご覧下さい!