きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

エルヴィス

「キング・オブ・ロックンロール」と称されるエルビス・プレスリーの人生を、「ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン監督のメガホンで映画化。スターとして人気絶頂のなか若くして謎の死を遂げたプレスリーの物語を、「監獄ロック」など誰もが一度は耳にしたことのある名曲の数々にのせて描いていく。ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリー。腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルビスの姿に、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。しかし、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視され、強欲なマネージャーのトム・パーカーは、逮捕を恐れてエルビスらしいパフォーマンスを阻止しようとする。それでも自分の心に素直に従ったエルビスのライブはさらなる熱狂を生み、語り継がれるライブのひとつとなるが……。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などに出演したオースティン・バトラーがエルビス・プレスリー役に抜てきされ、マネージャーのトム・パーカーを名優トム・ハンクスが演じる。(映画・comより)

エルヴィス・プレスリー。その名は知らない人はまず居ないというレジェンドアーティスト。ただ、世代的な物あるかもしれませんが、どんな曲を歌っていたのかと人物像や生い立ち等を知らないという人は多いのではないでしょうか?かくいう僕もベスト盤を一枚持ってるだけで、深くは知らないです。だからこそ彼の生涯を描いた本作でしかとプレスリーについて学ばせて頂こうというスタンスで見て参りました!

ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットがあってからかこの近年レジェンド級のスーパースターの伝記映画というものがよく製作されます。だいたいの作品が俯瞰で捉えたアーティスト像を作品に反映していくケースがほとんどなのですが、本作の場合は彼のマネージャーでもあり、何かと悪名の高いトム・パーカーの視点で描かれます。名優・トムハンクス演じるトム・パーカー大佐が回顧する形でエルヴィスのスターになっていくまでの過程そしてスーパースターならではの苦悩や自身との軋轢等が描かれていきます。

まず、エルヴィス・プレスリー誕生までの音楽史的な文脈からのアプローチがしっかりと描写されていました。1950年代チャック・ベリーに始まりエルヴィス・プレスリーがより昇華していったとされるロックンロールの歴史なのですが、元々は黒人音楽であるソウルやブルースがベースにありました。しかし、時のアメリカというのは人種差別が徹底していたわけで、エルヴィスの音楽から更にはパフォーマンスに至るまではこれまでの常識からすると到底許されないものだったんですよね。だからこそ社会的に権威を持つ大人達からは常に厳しい目にさらされる。そんな50年代アメリカ社会との闘いの一方、若い女の子達からは熱狂的な支持を受けます。

そしてこのシーンこそが如何にエルヴィス・プレスリーが女の子を虜にしていったかをリアリティたっぷりに映し出していくんですよ。歓喜の声をあげるのはもちろんなんだけど興奮のあまり履いてた下着をステージに投げつけるなんて光景も!僕はライブを見に行くのが好きで男性アーティストのライブだってこれまで色々と見てきましたが、こんな光景見た事ありませんよ(笑)もっともこれはその時代ならではのものかもしれませんけどね。

また、プレスリーは各時代をどの様に生き、世界史的な事件をどういった視点で捉えていたかもよく伝わりましたね。それはキング牧師の暗殺やケネディ大統領の暗殺、更にはビートルズジャクソン5等後続のミュージシャン達が活躍する中でのプレスリーの位置づけや彼の考え方等。これはバズ・ラーマン監督が徹底してプレスリーを研究し、それを作品に投影させたわけですが、終始僕は勉強になりましたね。

そしてプレスリーを演じたオースティン・バトラーの見事なまでの憑依っぷりですよ!若き日のプレスリーから42歳で亡くなるまでを全て演じきっているのですが、身体の動きから歌い方や声に至るまでがプレスリーそのもの!こういったレジェンドを演じる上で相当なプレッシャーもあった事でしょうが、堂々たる演技で作品に引き込んでくれました。とりわけ晩年に歌唱シーンでの全身全霊でのパフォーマンスに僕の涙腺は緩んでしまいましたね。また、ショービジネス界におけるスターとしての苦悩ぶりや薬物に依存し身を滅ぼす辺り、妻やマネージャー等の対人的な軋轢更にはスーパースターの孤独等プレスリーが華やかとは別の泥臭い部分の見せ方は圧倒されるものがありました。


また、マネージャーのトム・パーカー大佐ですよ。トム・ハンクスと言えばこれまでどちらかと言うと善人的な役柄が多かった印象ですが、こんなきな臭い役もバッチリハマるんだなと思いました。プレスリーをプロデュースしていくまでは良かったものの、その後の彼はとにかく姑息でもはやプレスリーを金儲けの手段としてしか見ていない。欲に目がくらんだ人間は碌な事にならないというのは彼に限った話しではありませんが、トム・ハンクスに憎悪の感情を抱いたのは初めてですよ。それ程の名演だったという事ですよね。ビートルズもクイーンもマイケルジャクソンも日本で公演をした事がありますが、プレスリーは一度も来日しなかった。日本を含め海外で公演しなかった理由というのも結局はこの人物が仇となった様ですね。

そして映画を彩ったのはやはりプレスリーの名曲の数々。『監獄ロック』、『ハートブレイク・ホテル』、『ハウンド・ドッグ』、『好きにならずにいられない』等等一度は耳にした事がある代表曲がライブシーンはもちろんその時々の印象的なシーンで流れ作品を盛り上げてくれます。更にはプレスリーリスペクトのアーティスト達によるプレスリーナンバーも適時流れるのですが、そちらは本作のサウンドトラックに収録されている様ですね。

音楽の使い方も良かったし、全体の内容も非常に見応えがありましたので、プレスリーの音楽をじっくり聴いてみたくなりました!

音楽が好きならば是非見て頂きたい作品です!

是非劇場でご覧下さい!強くオススメします!

ベイビー・ブローカー

解説

万引き家族」の是枝裕和監督が、「パラサイト 半地下の家族」の名優ソン・ガンホを主演に初めて手がけた韓国映画。子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織り成す物語を、オリジナル脚本で描く。古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追うが……。ソン・ガンホのほか、「義兄弟 SECRET REUNION」でもソンと共演したカン・ドンウォン、2009年に是枝監督の「空気人形」に主演したペ・ドゥナら韓国の実力派キャストが集結。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初の男優賞を受賞。また、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。(映画・comより)

万引き家族』のパルムドール受賞以来、海外でも精力的に仕事をこなす是枝監督の最新作は韓国の一流俳優を配した社会派ドラマという事で兼ねてから気になっておりました。そして異例の早さで梅雨が明けた直後の6月末日久しぶりの松江東宝5にて鑑賞して参りました。

「初めから捨てるなら産むなよ」ある人物が投げ捨てる様に言い放つ冒頭のセリフ。その通りだと思います。赤ちゃんポストベイビーボックス)というものに馴染みのない私なんかは「そうだそうだその通り!」と共感しかないと見ておりました。

でもね、これがひとつの方向だけで考えてはいけないと本作を見続けていくうちに考えに変化が生まれていくのに気付かされます。それは本作に登場するあらゆる人物の視点が入る事によってこの人にはこの人にはこの人のそして赤ちゃんを捨てる人にはその人なりのそうならざるを得ない事情が明かされていきます。

この見せ方は非常にうまくて見ている側に一辺倒の物の見方だけでは真相には辿り着けないという現実に気付かされるんです。

例えて言うならばニュースの報道なんかを見てもそうかもしれませんね。メディアからの報道を受け取る側つまり視聴者たる我々はその報道側からの視点を事実として捉える。しかし、問題の当事者には当事者のそこに至った事情があるものの、それがなかなか伝わってこなかったりもする。要するに一面的な見方だけでなくあらゆる角度から物事を捉えなさいというメッセージを暗に盛り込んでいるんですよね。

それが韓国を代表するキャストの面々の演技で見せてくれ、作品に引き込まれていくのです。

嫁も子供もおらず、気ままな独身生活を謳歌する私は「子供を捨てるなんてとんでもない!」なんて無責任に善人ぶった事を思うわけですが、是枝監督の社会を切り取った描写はさすが!と感嘆させられました。

更に言えば現代の貧困問題についても一石を投じる様な深いメッセージ。

子供を育てられない。何で?お金がないから。だったら避妊すればいいじゃん?実はそれが出来ない人もいる。等等深くはお伝えしませんが、子供の育児放棄やらの事象を追っていくとわかってくる事もあるんですよね。

万引き家族』では貧困家庭の実態や年金の不正受給等に踏み込んでいた是枝監督ですが、やはり本作でもその手腕が光っていましたね。

そして思いました。貧困の実態が浮かび上がる背景には政治の在り方や社会の仕組みその他様々な要因があるわけですが、どこの国であっても大なり小なり存在し、我々はその問題から目を背けてはならないし、いつ僕らもまたその当事者になるかわからないという事を忘れてはなりませんね。

と、この様に深い社会的なメッセージが盛り込まれ、作品としては非常に意義のある物だし、良い内容だとは思います。

ただ、その一方でなんですが、是枝作品って『万引き家族』もそうでしたが、見る人を選んでしまう傾向はやはり強いなと感じました。というのが大衆的なエンターテイメント性よりも作家としての芸術性に比重を置く作品づくりですよね。何しろあの『君の名は。』が大ヒットしていた時に大衆に迎合する作品性を徹底批判した是枝監督です。大衆向けではなく自己のアーティスティックな作風を優先してそれで映画を大ヒットさせ、パルムドール受賞まで達成させた実績はスゴいと思います。ただ、一方である程度のエンタメを求めてしまう僕としてはただ淡々と進めていくストーリーの見せ方にもうひと工夫欲しいなと思ったのが正直なところ。内容は劇的なのに見せ方にボリュームが生まれないから見ている人を置いてけぼりにしてしまうきらいがあるんですよね。そのせいで内容は濃いのに見終わった時に物足りなさの方が勝ってしまい、結果心に余韻を残さないんですよ。

自分が肩入れしてるからという事ではないですが、同じ社会派作品の監督として白石和彌監督はこの辺りのバランスが優れているなと思うんですよ。重厚なテーマを飽きさせない画づくりで展開させながら監督のカラーと大衆向けのエンタメ性を程よくブレンドさせながら、ひとつの作品をまとめてくる手腕ですよね。『凶悪』・『孤狼の血』・『死刑にいたる病』が何故映画通からの評価が高いかというところですよね。僕は何も目を背けたくなる様な残虐なシーンを望んでいるわけではない。そういうものがなくとも引きつける作品はきっと生まれる事でしょう。ましてや是枝監督クラスの方であればそういう作品も撮れる事でしょう。まぁこれはあくまで個人の好みですから、僕の考えに「何言ってんだお前は!」なんて厳しく言われちゃうかもしれないですけどね。

なんて最後は主観的な感想を厳しめに言わせて頂きましたが、社会の暗部をしっかりと映し出した深い内容である事は保証します!

是非ご覧下さい!

峠 最後のサムライ

幕末の動乱期を描いた司馬遼太郎の長編時代小説「峠」を、「雨あがる」「蜩ノ記」の小泉堯史監督のメガホン、役所広司松たか子田中泯香川京子佐々木蔵之介仲代達矢ら日本映画界を代表する豪華キャストの共演で映画化。徳川慶喜大政奉還によって、260年余りにも及んだ江戸時代が終焉を迎えた。そんな動乱の時代に、越後長岡藩牧野家家臣・河井継之助は幕府側、官軍側のどちらにも属することなく、越後長岡藩の中立と独立を目指していた。藩の運命をかけた継之助の壮大な信念が、幕末の混沌とした日本を変えようとしていた。「蜩ノ記」に続いて小泉監督作に主演する役所が主人公となる継之助に扮し、継之助を支え続ける妻おすがを松が演じる。(映画・comより)

この所紹介する作品はコロナによる延期を受けての公開作が続いてますが、こちらは2019年には撮影が全て終了し、2020年には公開される予定でした。しかし、やはりと言うべきかコロナ延期の憂き目に合い一年の公開延期で2021年に公開予定となるも更なる延期。そしてようやく6月17日に公開となりました。

時代劇好きな父は兼ねてから公開を楽しみにしており、ちょうど父の日でもあった6月19日にMOVIX日吉津で見て参りました。

客層としてはやはりというべきか年齢層は高め。最近紹介した作品で言えば『大河への道』のそれに近いかなという印象でした。

司馬遼太郎原作で幕末を舞台にしたものとなると昨年秋に上映されていた『燃えよ剣』が記憶に新しいのですが、本作では越後長岡藩士の河合継之助を主人公にしたもの。1960年代に司馬遼太郎が新聞連載で原作を書くまでは一般的には知られていなかった人物です。

滅びの美学というものがあります。源義経赤穂浪士更に幕末で言えば新撰組等は正にそうでしたが、悲劇的な結末を迎えるものに対してはそこに漂う悲哀と共に好まれる傾向があり、こと日本人の場合、判官贔屓と共に人気が高いものです。日本人が好きな歴史上の偉人の2トップとも言えそうな織田信長坂本龍馬なんてその典型ですもんね。

で、この河合継之助だって然り。戊辰戦争の最中、幕府につくか薩長新政府につくのかの選択を迫られた時、武力による衝突ではなく、あくまで武装中立の立場を主張し、平和的解決を願い奔走。しかし、やがて彼の理念も瓦解せざるを得なくなり、破滅的な最後を迎えてしまう。まさに日本人好みの滅びの美学のストーリーなんですね。

原作では青年期と壮年から晩年という二部で構成となっているのですが、この映画では後者の部分のみを抽出して作品に仕上げています。

それにしても流石は役所広司さんですね。その佇まいから細かい所作に至るまで河合継之助という人物を現代に蘇らせたらまさにこんな人なのかなと思わせる様な名演。来年の日アカでも主演男優賞ノミネートは堅いのではないかなと思いました。

一方、河合の妻・おすがを演じた松たか子さんですが、着物の着こなしから雰囲気から存在感そのものが上品なんですよね。夫の継之助の理念に共感しながら彼を支える慎ましき女性。日本女性はかくあるべきなんて言ったら今や多様性の時代だなんだと厳しく言われちゃいそうかな?それから彼女は本作でナレーターもしているのですが、大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』の長澤まさみよろしく落ち着き淡々とした語りが作品に合っていたなと思いました。

他、日本の映画界を支える錚々たるキャストによる布陣が作品に彩りを与えてくれています。その中で言えば吉岡秀隆さんが個人的には印象的でしたね。普段のイメージでは声を張り上げる様なイメージのない吉岡さんの貴重な演技が楽しめます。

継之助が和平に向けて奔走する姿や藩を守る為の策を講じる場面等は見応えがあり、河合継之助を知らない人に彼の人物像を伝えるという役割や機能はこの映画で十分に果たしていたのではないかなと思います。

また、アイテムとしてポイントとなっていたのが継之助が妻・おすがへ贈ったスイス製のオルゴール。このスイス製という辺りなんですが、継之助の武装中立というスタンスはスイスのそれなんですね。また、このオルゴールから流れるメロディーが本作の効果的なBGMとして機能していた面も非常に強かったなと思いました。

一方で不満点もありまして、ここからはその点をお伝えしていきます。河合継之助の人物像についてはよく描かれていましたが、今ひとつ深みが足りないと感じてしまいました。和平の為に動いたとか先進的な考え方の持ち主であったというそれを伝えるだけで終わってるんですよね。そりゃ役所広司の演技は素晴らしかったですよ!だけど映画というフィルターの中で特にこういった伝記要素の強い作品であれば、映画を見終わった後に次なるアクションに向けたスパイスが欲しいんですよね。例えば原作を読みたくなるとか河合継之助に対してより深い興味を抱いて書物に触れるとか直接新潟まで出向いて資料館へ行ってみたくなるとかね。つまり、見ている側に河合継之助ファンを作るくらいの情熱的なアプローチが欲しいなと思ったんですよ。この作品の場合、「幕末に河合継之助という人が居てこんな人だったんですよ」くらいの描き方だから見ている方は「へ〜、そうなんだ〜」以上の感情にはなかなかならない。

比較するのも酷ですが、その点では『大河への道』の伊能忠敬や『HOKUSAI』での葛飾北斎等はうまかったんですけどね。

総じて言えばドラマティックな絵作りや演出が足りないなという印象でしたね。泣かせる映画が良い映画だなんて事は言いませんが、多少オーバーであっても工夫が欲しかったですかね。それこそオルゴールを使うなんて方法もあったと思うんですが。

なんて最後は辛口にはなりましたが、河合継之助という人物を描き出した時代エンターテイメント。

是非ご覧下さい!


ドラゴンボール超 スーパーヒーロー

鳥山明による大ヒット漫画「ドラゴンボール」を原作とする劇場版アニメ。2015~18年に放送されたテレビシリーズ「ドラゴンボール超(スーパー)」の映画化第2弾で、2018年公開の前作「ドラゴンボール超 ブロリー」同様に、今作でも原作者の鳥山が脚本やキャラクターデザインを担当した。かつて孫悟空によって壊滅させられた悪の組織「レッドリボン軍」の意志を継ぐ者たちが現れ、新たに最強の人造人間ガンマ1号、2号を生み出す。彼らは自らを「スーパーヒーロー」と名乗り、ピッコロや悟飯たちを襲い始める。ガンマ1号と2号の声を、神谷浩史宮野真守という人気声優がそれぞれ担当。そのほかにも新生レッドリボン軍の天才科学者Dr.ヘド役を演じる入野自由や、ボルケーノ太田、竹内良太らが出演。監督は前作「ドラゴンボール超 ブロリー」でも3Dパートの制作などに参加した児玉徹郎。(映画・comより)

このところ、例年の6月では考えられない様なヒット作や大作が続きますが、今回はコチラ!『ドラゴンボール超』の最新作です。

さて、いきなり私事から入るのですが、『ドラゴンボール』はどストライクな世代でして、子供の頃は毎週水曜日に放送されてたアニメと『週刊少年ジャンプ』での連載が楽しみでした!その中での自分的な推しキャラがいましてそれがピッコロだったんですよ。元々は悪役として登場。滅法強くて悟空を苦しめつつも、その後は悟飯の師匠的役割を果たし悟空達とも共闘。で、元敵キャラから仲間になる位置付けで言えばヤムチャ天津飯の様に強さのインフラ状態から気付けばフェードアウトし、地味な存在になるかと思いきや今でもメインどころとして登場する。キャラクターとして魅力的だし、カッコいいんですよね!ドラゴンボールごっこなる遊びで皆が悟空やベジータを選んでいたのに、ピッコロ役を買って出てた小五の頃の俺のセンスは間違ってなかったね(笑)

で、本作なんですがそのピッコロそして悟飯がメインなんですよね。逆に悟空とベジータは今回控え目なので悟飯・ベジータ推しの人には物足りないかもしれないです。

ただ、本作てはあのレッドリボン軍が復活!冒頭ではそのレッドリボン軍を紹介するくだりが登場!ここでは何と86年の『ドラゴンボール』の映像が使用されてるんですよ。子供時代の悟空ですね!リアルタイムで見ていた身としてはこの映像だけでアガりますよ!特に僕なんかは『ドラゴンボール』シリーズだと何だかんだで悟空の子供時代が一番好きですからね。懐かしさがたまりませんでした。

で、その悟空子供時代を知ってる人であればレッドリボン軍は悟空によって全滅したのでは?レッド総帥出るの?ブラック大佐も?メタリック軍曹も?とキリがないですが(笑)まぁ、その辺りは実際に見て頂きましょう。更にその当時に登場した人造人間ハッチャンとは違う人造人間も出てきます。

更に言えば今回はそれこそ初期の『ドラゴンボール』さながらのギャグも多めなんですよ。ブルマによる神龍の願い事なんかはそれこそウーロンのギャルのパンティほしいに匹敵するものでしたし、何故かピッコロがぬいぐるみ好きキャラにされてたし、いやそもそも本来そんなキャラじゃないのに今回はやけにピッコロがコメディリリーフ的役割を果たしてたぞ(笑)

そして今回のメインの一人である悟飯ですよ。すっかりスーパーサイヤ人になる事なくつまりバトルをする機会もなく、平穏に暮らしていたんですよ。ピッコロはそんな悟飯にやきもきしつつも、悟飯の娘パンに稽古をつける毎日。しかし、あるきっかけを契機にスーパーサイヤ人としての悟飯が蘇るのですが、やはりバトルモードになると圧倒的な映像表現で食い入る様に見ましたね!特にあのピッコロの必殺技を悟飯が放つ辺りなんかはドラゴンボール映画の真骨頂でもあるかなと思いました。

さて、このバトルシーンは大変見応えがあるものでしたが、そもそも彼らは何を動機に戦うを見て頂きたいところです。ピッコロにはピッコロの、敵キャラには敵キャラのとそれぞれの動機があるわけですが、悟飯ですよ!今や父親でもある孫悟飯は娘の事となると人が変わる。数々の熱いバトルを見せてくれた悟飯だって人の親なんですよね。憤怒にかられるエネルギーの描かれ方なんかは子を持つ親御さんには共感を呼びそうかななんて思いました。

今回はピッコロと悟飯という師弟コンビをメインに据えた内容でしたが、ラストまで気になっていた事があるんです。それは…でも結局悟空がおいしいトコ持ってくんじゃないの?

その辺もうまくピッコロと悟飯のカッコいいトコロを写しながら綺麗に落とし前つけてましたよ。改めてこの二人は最高の師弟であり、バディーだななんて。そして悟天とトランクスもフュージョン決めてくれてましたよ!

本作のタイトルは『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』でしたが、個人的にはその後にfeat.ピッコロ&悟飯と付けたかったですね。

アツイ内容でした。

オススメです!

トップガン マーヴェリック

トム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた1986年公開の世界的ヒット作「トップガン」の続編。アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校トップガンに、伝説のパイロット、マーヴェリックが教官として帰ってきた。空の厳しさと美しさを誰よりも知る彼は、守ることの難しさと戦うことの厳しさを教えるが、訓練生たちはそんな彼の型破りな指導に戸惑い反発する。その中には、かつてマーヴェリックとの訓練飛行中に命を落とした相棒グースの息子ルースターの姿もあった。ルースターはマーヴェリックを恨み、彼と対峙するが……。主人公マーヴェリックをクルーズが再び演じ、「セッション」のマイルズ・テラー、「ビューティフル・マインド」のジェニファー・コネリー、「アポロ13」のエド・ハリスが共演。さらに前作でマーヴェリックのライバル、アイスマンを演じたバル・キルマーも再出演する。「オブリビオン」のジョセフ・コジンスキーが監督を務め、「ミッション:インポッシブル」シリーズの監督や「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家として知られるクリストファー・マッカリーが脚本に参加。(映画・comより)

先週取り上げた『シン・ウルトラマン』もそうなんですが、例年であればこの時期にこんな大作は続かないんですけどね、まぁそれもこれもコロナが影響してって事なんですが、この『トップガン マーヴェリック』は元々2020年の夏に公開予定だったものが、延期に次ぐ延期でようやく先月27日に公開となりました。

実は私はというと、1986年の『トップガン』についてあまりよく知らなかったんですよ。サントラが大ヒットしたのとそこから数曲がシングルとして大ヒットしたという事くらい。まぁ、『フラッシュダンス』とか『フットルース』等MTV全盛時代にアーティストのプロモーションとしても映画が積極的に使われていたという80年代特有の面が強いのかななんて思いますが。

しかし、この新作を見るにあたって内容を知らないとまずいと昨年の秋にアマゾンプライムビデオで1作目の『トップガン』を鑑賞。結局再度の延期となりましたが、この時は11月に公開とアナウンスされてましたからね。それに合わせての予習でした。

で、この予習は本作鑑賞にあたっては裏切らなかった。前作を知らないと理解出来ない点も多々あったし、何より冒頭の場面の感動は前作ありきでしょ!そう、見た人ならばわかるでしょう。『DANGER ZONE』のかかるアソコです(笑)

さて、36年振りの新作という事で実は鑑賞前は不安もあったんです。というのが昨年末の『マトリックス』であったり今年2月の『ゴーストバスターズ』であったりといずれも超久しぶりの続編でしたよね。個人的に『ゴーストバスターズ』はスゴい良かったんですが、興行的には伸び悩んでしまいました。そんな中で『トップガン』はどうなのか?全く心配無用でしたね。大大大ヒット中ですし、内容もハッキリ言ってしまえば今年ベスト級に良かったです!実は鑑賞中なんかはマスクの下で「うわっ、やばい!」とか「アツイ!」とか一人で呟いてましたもん(笑)

というのが前作の踏襲ではあるものの、そこにより磨きをかけた様な描写の数々。それはこの36年の時代の進化というものが大きく貢献してもいるのです。撮影にドローンも使えるし、カメラにしてもIMAXのカメラを戦闘機に持ち込んで撮影出来たり。無論それだけではありませんね。前作のトムクルーズは20代前半。新進気鋭の若手俳優だったわけですが、前作の大ヒットを契機に大躍進。以後、数々の作品に出るハリウッドを代表するスター俳優なんですが、彼がスゴいのは徹底して役者としてのアクションを間もなく60歳を迎える今も追求してるトコロなんですよね。本作上映前には来年夏に公開予定の『ミッション:インポッシブル』の予告が早くも流れていたのですが、本来彼クラスのキャリアとポジションにもなれば自らが身体を張ってアクションをせずとも大御所としてド〜ンと構えていたらいいハズなんですよ。ましてやこのCG全盛の時代にですよ!ところが自らのアクションやスタントにこだわりを持ち続ける。撮影時50代後半にしてアクション、バイクの操縦に肉体美等等トムクルーズの魅力が凝縮されているんですよね。

で、本作におけるマーヴェリックって正に今のトム・クルーズを反映してる様でもあるんですよね。パイロットとしても大ベテランだけどまだまだ現役で飛行機の操縦はまだまだこなすぜ!的なところが。しかし、そんなマーヴェリックが後進の指導をする。今やトム・クルーズは俳優だけではなく、プロデューサーとしても業界を盛り上げる存在でもあるわけで、マーヴェリックの教官的な立場にもなるわけです。実際映画では息子の様な年齢の若手俳優を導いていますからね。

で、こういう光景を含めてオールドファンへのサービスも入れつつ、楽しませてくれます。

更に言えば戦闘機のパイロットの物語である以上、ドンパチがあるのは避けては通れないところ。ただ、ここが今の情勢下だとかなりナイーブになりがちなんですよね。ウクライナ侵攻という現実での状況が重なるとエンタメとは言え、迂闊な描写が出来ない。自己犠牲や殉職からの英雄視みたいな場面って物議を醸し出しかねないんですよね。だけどここもうまくまとめていました。それは生きるという事を讃えるものです。生きて帰り、大切な人と暮らし愛情を育むこと。信じる事やあきらめない事の尊さが描かれていました。そして前作でメガホンを取った故・トニースコット監督への献辞が流れた時には僕も目頭が熱くなりました!

最高にアツく胸を打つ様な素晴らしい続編でした!オススメです!

シン・ウルトラマン

日本を代表するSF特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、「シン・ゴジラ」の庵野秀明樋口真嗣のタッグで新たに映画化。庵野が企画・脚本、樋口が監督を務め、世界観を現代社会に置き換えて再構築した。「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。主人公・神永新二を斎藤工、その相棒となる浅見弘子を長澤まさみが演じ、西島秀俊、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、早見あかり田中哲司らが共演。劇中に登場するウルトラマンのデザインは、「ウルトラQ」「ウルトラマン」などの美術監督として同シリーズの世界観構築に多大な功績を残した成田亨が1983年に描いた絵画「真実と正義と美の化身」がコンセプトとなっている。(映画・comより)

皆さん、大変長らくお待たせ致しました!遂に『シン・ウルトラマン』でございます!ホントはもっと早く鑑賞してレビューをお届けしたかったのですが、何やかんやとありまして、公開から一ヶ月弱経過して満を持してようやく先日見て参りました!

6月5日の日曜日。場所はMOVIX日吉津。午前の回に入りましたが、かなりの人の入りでしたね!8割方は埋まっておりました。

さて、『シン・ウルトラマン』レビューに入る前に本作鑑賞前の公開から三週間の私の心境からお伝えしていきますね。公開週の週末からSNSを見ても『シン・ウルトラマン』見てきましたという声は非常に多かったですし、YouTubeでも感想をアップしてる人は非常に多かった。それは著名人から一般の方に至るまで様々な方がそれぞれの感想を述べてらっしゃいました。しかし、私は当然これらに触れずこの目で見るまで只々期待を胸に抱えて過ごしていたわけですよ。

そして遂に鑑賞!結論を述べるならば

賛否両論も納得!私は賛も否も両方をしかと感じてきた!そして否も含めて最高の映像体験をしてきたと胸を張って言えます!

さて、皆さんはどれだけウルトラマンの事を知ってるでしょうか?

実は僕はほとんど知らないんですよ。スペシウム光線を出す、怪獣と戦う、カラータイマーが付いてて3分間しか戦えないとかそんなレベルですよ(笑)でも、実はこの程度知ってたら十分楽しめるんですよ!というのがこの『シン・ウルトラマン』というのは庵野さんが子供の頃に初めてウルトラマンを見た時のインパクトを同じ様な体感をしてもらうべく自らが作り出したというものなんですね。だからこれまでのウルトラマンを見て予習をする必要もないし、出来るだけ知識は入れないで見た方が良いという事なんですね。更に言えばウルトラマンのトレードマークとも言えるカラータイマーがないんですよ。

えっ?ウルトラマンなのにカラータイマーがないの?それでいいの?

いや、いいんですよ。実は我々が認識するウルトラマンのカラータイマーや三分間ルールなんかは後に付け加えられたもので当初はなかった設定だそうです。つまり庵野・樋口チームが作り上げたのは『ウルトラマン』放送開始当初のイメージを再現したという事なんです。庵野さんの特撮オタクぶりからカラータイマーなしのウルトラマンが採用されたわけですよ!

それから本作は『シン・ゴジラ』の作風を求めてはいけないというポイントですね!『シン・ゴジラ』ではゴジラ襲来から日本政府の対応をその類稀な想像力で描き出し奔走する姿がリアルに描かれていました。また、難解な説明台詞の応酬で展開される内容が非常に印象的でしたよね。それが『シン・ウルトラマン』ではそれが全く無いわけではないですが、もっとシンプルにまとまっています。というのがウルトラマンってゴジラに比べるともっとストーリーや構成がシンプルなんですよ。だからでしょう。決して難解な事なくわかりやすいのでお子さんであっても鑑賞に問題はないでしょう。何だったらちょっと笑いを誘う様なユーモラスな場面だってあります。

そして映像面ですよ!これは文句なく日本の映像技術では最高峰の物が楽しめます!ウルトラマンの戦闘シーンは言うに及ばず徹頭徹尾飽きさせない映像表現で楽しませてくれます!

後、山本耕史演じるメフィラスのキャラクターが良かったですね!すげぇ人間臭いんだもん。ブランコに乗るわ斎藤工演じる神永新二と浅草の居酒屋で酒を酌み交わすどころか自分が誘っておきながらまさかの割り勘とかね(笑)出せよ(笑)更には日本の諺や慣用句が大好き。もっともこれは後々出てくる言葉のフリでもあるんですけどね。

1966年の『ウルトラマン』は当然、僕はリアルタイムで見たわけないですし、実は男子でありながら、これまでの人生でウルトラマンって触れてこなかったんですね。そんな僕からするとすごい新鮮だったし、男の子的ワクワク感を40過ぎて味合わせて頂きました!その意味では正に庵野さんのウルトラマンを見た事ない人に向けたインパクトの植え付けは大成功だったんじゃないかなって思います。

庵野さんの特撮愛に溢れていたし、ウルトラマンを知らない人も存分にその世界へ引き込んでくれました!個人的にはエンタメとして見た場合、『シン・ゴジラ』より楽しめました!

さて、ここまで賛否の賛の部分をお話しして参りました!

では否の面はどうかというと、まぁこれが楽しめた面でもあるんですが、長澤まさみ演じる浅見弘子巨大化の場面ですね。これは実際のウルトラマンでも同じ様なシーンがある様で言わば庵野さん流のオマージュでもあるんですが、確かに巨大な長澤まさみはパンチが効いてて迫力があった。更に巨大な長澤まさみが終始無表情なので画的にもシュールで思わず笑いが込み上げた。これはいいけど、この巨大長澤まさみの生足が捉えるアングルは今の時代どうよ?俺も男だから「見えないかな…」なんて期待…いや、「セクハラだ!けしからん!」と憤慨してしまいましたよ。庵野さん、長澤まさみが好きなのは十分わかったから、この令和の時代はこれはダメなんちゃいますか?

ま、最終的には否の部分も伝えはしましたが、やっぱり全体的には飽きる事なく楽しめました!

後、これは見た人と色々と意見交換をしたくなりますね!

オススメです!

大河への道

落語家・立川志の輔による新作落語「大河への道 伊能忠敬物語」を映画化。主演の中井貴一をはじめ、松山ケンイチ北川景子らキャストがそれぞれ1人2役を務め、現代を舞台に繰り広げられる大河ドラマ制作の行方と、200年前の日本地図完成に隠された感動秘話を描き出す。千葉県香取市役所では地域を盛り上げるため、初めて日本地図を作ったことで有名な郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にした大河ドラマの開発プロジェクトが立ち上がる。しかし脚本制作の最中に、忠敬が地図完成の3年前に亡くなっていたという事実が発覚してしまう。1818年、江戸の下町。伊能忠敬は日本地図の完成を見ることなく他界する。彼の志を継いだ弟子たちは地図を完成させるべく、一世一代の隠密作戦に乗り出す。「花のあと」の中西健二が監督を務め、「花戦さ」の森下佳子が脚本を手がけた。(映画・comより)

伊能忠敬。歴史の教科書にも必ず登場してくる偉人です。日本で初めて日本地図の測量をして、それをまとめ上げたという人物ですよね。しかし、そんな伊能忠敬が実は地図を完成させていなかったという史実から落語家の立川志の輔師匠が作り上げた創作落語が『大河への道 伊能忠敬物語』ですが、本作が映画化されたその背景が面白いんですね。

中井貴一さんがたまたまその落語を聞いたところ、感銘を受け映画化の話しを志の輔師匠に直談判。主演は自分じゃなくてもいいから企画やプロデュースという形態ででもこの作品を映画化したいという情熱を持ったプレゼンを行い、映像化実現へ向けて動き出したという事です。

とは言え今の時代、堅苦しい時代劇というのはなかなか受け入れられない。そこで取った手法が喜劇調の現代劇と忠敬の意思を継いだ名もなき人々の地図作成に向けたサクセスストーリーを融合させるというものでした。

時代劇と現代劇をひとつの作品で融合させるという非常に珍しい手法。果たしてこれがどの様に展開されるのか私も楽しみにしながら5月25日。水曜サービスデーを利用してT-JOY出雲で見て参りました!

大河ドラマ伊能忠敬を、基本的には戦国時代や幕末が扱われ易い大河ドラマにおいてはなかなか難しいのかも知れません。

しかし、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』は平安末期〜鎌倉時代。更に2024年は紫式部を主人公にといった具合にここ近年は変わりつつある。だけど、伊能忠敬は確かに地味な感があります。だけどその辺りも劇中に突っ込んでいます。ただ、測量の為に日本中をくまなく歩くとなれば江戸時代版ロードムービーになっちゃいますもんね(笑)

そういったツッコミ点を見ている人に指摘される前に提示しちゃう辺りは如何にも創作落語っぽいし、思わずニヤッとしちゃったのも事実です。

他にも現代劇パートにおいての中井貴一松山ケンイチという実際の大河でも主演を務めた二人がまるで息の合ったコントユニットの様に軽妙なやり取りをして楽しませてくれます。中井貴一さんの場合、三谷幸喜作品でこれまでにもコメディ演技をされてこられましたが、松山ケンイチさんとなると『デトロイト・メタル・シティ』以来じゃないですかね。コメディも非常に板に着いてまるんですよね。

また、北川景子さんのバリバリ出来る女イメージが現代パートでは非常に活きていましたし、時代劇パートでは凛とした強さとして表現されていました。

その他、個性豊かなキャスト陣が現代と江戸時代で一人二役こなしながらストーリーを盛り上げてくれていました。

江戸時代では11代将軍・徳川家斉を現代では千葉県知事を演じていた草刈正雄さんと中井貴一さんが向かい合った時なんかは三谷幸喜作品『記憶にございません!』を思い出しましたね。

伊能忠敬大河ドラマ化プロジェクトに奔走する現代劇パートはとにかくコミカルにテンポ良く展開されており、コメディ映画が好きな僕としては非常に楽しませて頂きました!

一方の江戸時代パート。こちらはガチな大河ドラマっぽさと『プロジェクトX』的なヒューマンドラマが実に見応え抜群でした!伊能忠敬亡き後、彼の意思に共鳴した人々が三年間の間で地図を完成させるまでのプロセス。それは決して容易なものではありません。幕府からの援助を受け、地図作成へ動いている以上忠敬本人が亡くなったという事は決してばれてはいけません。彼の死を隠し援助の費用を得るという事がバレると打首になる可能性だってある。そんな中で彼らはこのスリリングなプロジェクトに向けて動くわけです。怪しむ人物も登場するし、忠敬の影武者も用意しなくてはならない。様々な困難を乗り越え、完成した地図を見た時はそれまでのプロセスを見続けたからこその感動がそこにはありました。日本地図を見て涙を流したのは生まれて初めてだしこれからの人生でもそうそうないだろうなと思います(笑)

現代劇と時代劇の融合というものに対して実を言うといささか不安があったのですが、ここまでうまくまとまっていたらケチの付けようがありません!この映画の評判が良いのも納得でした!

それから伊能忠敬という人が日本地図を作り出したというのは我々はよく知ってる所。しかし、彼がどの様にして測量をしたのかとか人物像を知らないという人は多いと思います。そもそも伊能忠敬が現在の千葉県出身だったなんて事もあまり知られてないし、地元の人は愛着を込めて「ちゅうけいさん」と呼ぶなんて事も僕は初めて知りました。伊能忠敬について興味を持たせてくれるし、劇中にも登場する伊能忠敬記念館にも行ってみたくなりますよ。更に中井貴一さんが演じた高橋景保という人物についても興味が湧いてきます。

また、伊能忠敬が主題ではあるものの、もうひとつ見逃せない点がありましてそれがラジオなんですよ!立川志の輔師匠も本作には出演してらっしゃるんですが、これがラジオパーソナリティの役で出てるんですよ。映し出された局の雰囲気や扱う話題からして千葉県のコミュニティFMかななんて思いました。この番組をお聴きのリスナーさんは皆さんラジオがお好きだと思います!そういう視点でも是非本作を見て頂きたいですね!

伊能忠敬大河ドラマに!これを大きなテーマに、そこからぶれさせずに現代と江戸時代を結ぶ人間ドラマとなっていました!時代劇が苦手という人は多いと思いますが、この作品は非常に鑑賞し易く万人に自信を持ってオススメ出来る作品だと思います!