きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

元天才外科医で最強の魔術師ドクター・ストレンジの活躍を描くマーベル・シネマティック・ユニバースMCU)の「ドクター・ストレンジ」シリーズ第2作。2016年に公開されたシリーズ第1作以降も、「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(18)、「アベンジャーズ エンドゲーム」(19)、そして「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(21)など一連のMCU作品で活躍してきたドクター・ストレンジが、禁断の呪文によって時空を歪ませてしまったことによって直面する、かつてない危機を描く。マルチバースの扉を開いたことで変わりつつある世界を元に戻すため、アベンジャーズ屈指の強大な力を誇るスカーレット・ウィッチに助けを求めるストレンジ。しかし、もはや彼らの力だけではどうすることもできない恐るべき脅威が人類に迫っていた。その脅威の存在は、ドクター・ストレンジと全く同じ姿をした、もう一人の自分だった。ドクター・ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチをはじめ、ストレンジの盟友ウォン役のベネディクト・ウォン、元恋人クリスティーン役のレイチェル・マクアダムス、兄弟子モルド役のキウェテル・イジョフォーら前作のキャストが再結集。物語の鍵を握る新キャラクターのアメリカ・チャベス役でソーチー・ゴメス、ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ役でエリザベス・オルセンも出演。「スパイダーマン」3部作(02、04、07)を大ヒットさせたサム・ライミが監督を務め、「オズ はじまりの戦い」(13)以来となる長編映画のメガホンをとった。(映画・comより)

久しぶりの洋画大作はお馴染みMCUの最新作でありドクター・ストレンジの単独作としては二作目となる『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』です。

ドクター・ストレンジと言えば『アベンジャーズ』シリーズでも存在感を示し、スパイダーマンの最新作でも登場していたのですっかりお馴染みな感がありますが、単独作としては意外にも二作目なんですね。

前作は日本での公開が2017年ともう5年経過する事に時間の早さを感じつつもT-JOY出雲にて鑑賞。5月11日の水曜日に見て参りましたが、平日にしては割と人が入っていましたね。

監督を手掛けたのは『スパイダーマン』三部作でお馴染みのサム・ライミ監督。スパイダーマンが代表的なだけにMCUの過去作も手掛けていたのかと思えば意外や意外。本作が初なんですね。『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』でサム・ライミスパイダーマントム・ホランドによるスパイダーマンが共演していたのが記憶に新しいところですが、遂にサム・ライミ監督がMCU参入!と言ったところでしょうか。

そんなサム・ライミ版『ドクター・ストレンジ』なんですが、いや〜大作でしたね〜!何と言ってもその映像表現ですよ!マルチバースを用いた空間的表現はドクター・ストレンジでしか出来ないなと感じましたし、お馴染みの魔術描写だって前作より圧倒的にスケールアップ!CGのレベルだって圧巻でしたし、ハリウッドの映像表現はここまで進化しているのかと唸らされるばかり。これを見るだけでも値千金かと僕は思います!正直、実写映画での表現とは思えないまるでアニメの様な…いや、アニメですらここまで高次元での表現は難しいのではないかというクオリティでしたね!その意味では配信を待つのではなく是非劇場で体感して頂きたいところです!

また、サム・ライミといえば『スパイダーマン』のイメージが強い監督ではありますが、ホラーも手掛けてきた人です。それが何と本作で遺憾なく発揮されている。今までこの手のアクション/ファンタジーの大作ではあまり見られないホラー的な演出ですが、本作ではこれが功を奏してまして、絶妙なスパイスとして機能してるんですよ。あ、でもご安心を!ホラーと言ってもガチな物ではなくホラー映画が苦手な人でも大丈夫かなというレベルです。

さて、ここまで映像や演出面で推しておきたいポイントを挙げてきましたが、ストーリーはというと。

これがね〜、意外と敷居が高いんですよ。MCUと言えば展開されるユニバースの線上でストーリーが進行する為の関連作品の予習がもはや必須と言えるかもしれません。となると『ドクターストレンジ』の1作目や『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』、『アベンジャーズ エンド・ゲーム』更に『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』まぁこの辺りを押さえていたら無難かな?と思いきやディズニープラスで視聴出来る『ワンダヴィジョン』の視聴も求められるんですよ。ちなみにこちらはドラマ版です。実は僕、映画に関してはある程度追ってきましたが、ドラマは弱いんですよね。そんな僕からすると本作の内容を理解するのにはかなりのハードルの高さを感じちゃいました。これは前にも話した事ですが、MCU作品って映画だけでも膨大なシリーズがあるんですよね。それだけ追うのもかなり大変なんですが、ましてやドラマを絡めてくるともう何が何やら?初心者に優しくない作りをし続けるのには辟易している所もあります。まぁ、それでも毎回安定した興行収入をあげるのには根強い固定ファンの多さを物語ってもいるんですけどね。

と、本作に関してなんですが、まとめるとこんな感じです。

映像表現だけで言えば現代の最先端の高レベル・高クオリティな物が間違いなく堪能出来ます!ここを見るだけの為に本作を見ても決して損はないと思います!更にはサム・ライミ監督のホラー的表現が良いアクセントになってるし、更にはゾンビの使い方にもチェックして頂きたい!

しかし、ストーリーに関してはかなり難解でハードルの高い作りとなっていたと言う事。

それでも極上のエンターテイメントに仕上がっていたのは間違いないし、アクションも楽しめるかと思います!

僕の印象としては映像は保証済み!ストーリーは1作目の方が楽しめました。


死刑にいたる病

「凶悪」「孤狼の血」の白石和彌監督が、櫛木理宇の小説「死刑にいたる病」を映画化したサイコサスペンス。鬱屈した日々を送る大学生・雅也のもとに、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人・榛村から1通の手紙が届く。24件の殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を訪れていた。手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。独自に事件を調べ始めた雅也は、想像を超えるほどに残酷な真相にたどり着く。「彼女がその名を知らない鳥たち」の阿部サダヲと「望み」の岡田健史が主演を務め、岩田剛典、中山美穂が共演。「そこのみにて光輝く」の高田亮が脚本を手がけた。(映画・comより)

『凶悪』、『孤狼の血』シリーズで日本の映画界に激震を与えた白石和彌監督の最新作。と、あれば見ないわけには行かない。私は本作に関しては公開前から楽しみにしておりました!

そして公開週の週末MOVIX日吉津にて見て参りました!こういう真に迫る様なヒューマンサスペンスというのは一定数のファンがいるものでして(私もその一人ですが)割と人は入ってましたね。中にはポップコーンとドリンクを手に入っていく人も見られましたが、果たしてそれを食べながら見る事が出来たのでしょうか。後述しますが、グロいシーンがご多分に漏れずあるんですよ。そりゃ白石和彌監督だしね(笑)

さて、本作ですが特定の元となっている事件はない様です。ただ、映画を見ているとあの事件に似ているなとか凶悪事件に詳しくなってくると思考が巡らされてくるんですよね。

で、映画のタイプとして拘置所内で死刑囚と面会して真相を暴いていくという点では正に白石監督の『凶悪』に近い物がありましたし、普段は人当たりの良いパン屋そして裏では…なんて点ではジョニーデップの怪演が光る『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を思い出しましたね。

キャストの演技ですが、とにかく阿部サダヲのイメージを180度変える様な怪演には引き込まれました。前述の様に表向きは人当たりが良く気さくなパン屋さんなんですよね。中年男性でありながら女子高生に話しかけても警戒されるどころか心を開いて何でも打ち明ける様な関係を築いていく。犯行現場は全て自宅という事を考えると自宅まで連れ込んでいける様な関係が築けるという人たらしぶりなんですよね。それだからこそのパン屋として気さくな笑顔を振りまく姿とシリアルキラーとして凄惨な殺人をする姿に恐怖を感じるわけですよ。ただ、ここで感じるのはシリアルキラーが社会に溶け込んで生活をしている事への恐怖なんですよね。側から見たらどう見てもいわゆる良い人にしか見えない男が隠す牙ですよね。

以前男女問わず白いソックスとヘルメットを装着した姿に興奮するという男が連続殺人事件を起こしました。その男は人が窒息をして苦しむ姿を見たいという欲情が抑えきれずに殺人を繰り返していたという事でした。性欲の吐口として連続殺人をしていたのですが、この映画における榛村の場合もまた、自身の欲望を満たす為に殺人を犯すんですよね。快楽殺人というんでしょうか。我々の感覚ではこういった連続殺人犯の心理なんて理解出来ないものがあります。「許せない」、「被害者がかわいそう」、「こんな奴は死刑で当然だ」この様な感情が湧くのは人間としては自然な事です。しかし、そこからひとつ踏み込んで犯人は何故この様な人物になったのか?とか事件を未然に防ぐ事が出来なかったのか?そういった事に思考を巡らせ、事件を知る学ぶ。そして自分の大切な人を守る為の知識を身につける。これこそが犯罪学を学ぶ意義ではないでしょうか。と真面目な話しになりましたので映画に戻しますね。

白石和彌監督ならではと言うべきでしょうか。手にかける描写も容赦なく出てきますが、こういうグロ描写に耐性のない方には鑑賞注意を強く呼びかけておきます。ちなみにグロにはある程度耐性のある僕ですが、『孤狼の血 LEVEL2』でのあのシーンに続き下をむいてしまいました。

尚、阿部サダヲさんですがコメディのイメージが強い役者さんですが、それに反してシリアルキラーの役は以前からやりたかったそうですよ。

一方、榛村の証言を元に事件の真相を追及すべく奔走する大学生の雅也を演じた岡田健史。抑圧された少年時代を過ごし現在はいわゆるFラン大学に通っている彼。教育熱心だった彼の父親はそれが気に食わないとあり、祖母の葬式にすら顔を出して欲しくないと思っていたりもする。一方で学校生活もうまくいっておらず友達も居ず、学内でも浮いた存在。鬱屈した日々を過ごす中で榛村からの冤罪証明の依頼を受けるんですね。これを見ると彼の境遇が実は事件を起こす側になってもおかしくない。それくらい屈折の毎日が描かれているんですよね。最終的に溜め込んでいた物が爆発して…なんて展開があるのですが、榛村という猟奇的な事件を起こした死刑囚に目が行きがちなのですが、事件の加害者に瀕する立場として彼が描かれているのではないかと思いました。もっとも彼の場合、榛村との違いとして通り魔的犯行を起こすタイプの境遇に近いかなと感じました。

個人的には非常に見応えのある作品だと感じました。粗を探せば突きたい部分も確かにありますが、白石監督の過去作が好きであれば今回も期待に応えてくれた或いは期待を上回る様な作品だと保証します!

毎度ながら見る人を選びますが、僕は好きです!

オススメです!

ホリック ×××HOLiC

創作集団「CLAMP」の大ヒットコミック「xxxHOLiC」を、「Diner ダイナー」「ヘルタースケルター」の蜷川実花監督が実写映画化。人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が見えてしまう男子高校生・四月一日君尋(ワタヌキ・キミヒロ)。その能力のせいで孤独な人生を歩んできた彼は、能力を消し去って普通の生活を送りたいと願っていた。そんなある日、一匹の蝶に導かれて不思議な“ミセ”にたどり着いた彼は、妖しく美しい女主人・壱原侑子(イチハラ・ユウコ)に出会う。侑子は四月一日のどんな願いでもかなえてくれると言い、その対価として彼の“一番大切なもの”を差し出すよう話す。侑子のもとで暮らしながらミセを手伝うことになった四月一日は、様々な悩みを抱えた人たちと出会ううちに、思わぬ大事件に巻き込まれていく。孤独な高校生・四月一日神木隆之介、ミセの女主人・侑子を柴咲コウが演じる。「センセイ君主」の吉田恵里香が脚本、「ミッドナイトスワン」の渋谷慶一郎が音楽を担当(映画.comより)

蜷川実花監督と言えば色彩美豊かな映像表現とひと癖もふた癖もある原作を選びながら蜷川実花ワールドをこれまでに展開してきました。父親譲りの独創性の高い作風はこれまでの『さくらん』、『ヘルタースケルター』、『Diner ダイナー』、『人間失格 太宰治と三人の女たち』を見てきた人であれば誰もが認める事でしょう。かくいう私もこれまでの作品は全て目を通しており、その都度インパクトを感じながら楽しく鑑賞して参りました!

そんな僕だからこそ本作の公開も楽しみにしておりました。原作は読んだ事ないですが、きっと蜷川実花の極彩色溢れる映像世界に今回も魅了されるであろうと胸高らかに5月のファーストデイにMOVIX日吉津で見て参りました。ゴールデンウィークの前半でしかも日曜日とあり、たくさんの人で賑わっていましたが、本作に関してはまぁまぁの人入り。やはりコナン君がダントツ人気というのは疑い様がないみたいです。

さて、鑑賞後しばらくはお馴染みのコッテリとした極彩色の映像を堪能。蜷川実花ワールド今回も裏切らない!とりわけ侑子の居るミセはその雰囲気が非常に映えていましたね。非常に濃い赤や紫、青等が入り混じる色彩に侑子の存在感が光ります!

その侑子を演じた柴咲コウがまた何とも妖艶で美しいんですよね!如何にも怪しいミセの中に佇む謎の美女というミステリアスさ。もちろん他の女優さんが侑子を演じても魅力的なんでしょうが、本作においては柴咲コウの新たな魅力を引き出していた様でした。

神木隆之介くんもまた特殊な能力を秘めた高校生という役ではありましたが、こういうミステリアスなシチュエーションに遭遇した役柄は見事に合いますよね。『屍人荘の殺人』もそんな感じでしたよね。ただ、いつまで高校生役やるんだ問題は個人的には気になっちゃいました。

で、前半の展開はとにかくスリリングで見応えがありましたね!望みを叶える変わりに対価を払うというミセのシステムに乗っ取り女性は願望を成就させるのですが、ある縛りを破る事によってとんでもない目に遭ってしまうという『笑ウせえるすまん』を思わせる破滅的展開で一気に作品世界へ引きずり込んでいきます。

ここまでは実に面白かったです、そうここまでは。全体で110分の尺内の前半30分くらいですね。

じゃあそれ以降はどうかというとこれが正直ね〜、しんどかったですね。

ここまでお話しした30分というのは物語の世界観を伝える為のいわば説明描写なんですよね。で、実際に引き込まれていき期待値もグングンと上がっていくんですよ。

で、ここからなんですが、神木くん演じる四月一日を巡る話しに変わっていくんですよ。これまで人と打ち解ける事が出来なかった四月一日にも仲間が出来る。ここまではいいのですが、その後に遭遇するアクシデントのシーンですね。はっきり言って地味なんですよ。詳しくは話しませんが、同じシーンの繰り返しなんですね。もちろんそれにはきちんと意味があるんですが、この下りがあまりにしつこいんですよ。一度見せればわかる内容ですが、これを何度も見せられると飽きてくるし、「この後話し進むの?」ってはがゆくなってきます。

で、ようやくこのループから脱したと思ったら吉岡里帆演じる女郎蜘蛛とのあれこれが始まるし、これこそがハイライトシーンなんですよね。

ただ、蜷川実花監督がこういうバトル物が不得手なのかどうにもアクションの撮りが弱いんですよね。『Diner ダイナー』の時は割と良かったんですけどね。ただ、女郎蜘蛛の衣装とか色気は良かった!この女郎蜘蛛に限らずだけど女性のキャラクターはかわいいキャラはとことんキュートを突き詰め、セクシーなキャラはまるで男性の嗜好を心得ているかの様にツボを刺激してくる。一方、男性のキャラクターは世の女性全てを虜にするかの如くセクシー&イケメンに撮る。これまでの蜷川実花作品でもそうでしたが、蜷川実花さんのアーティスティックな感性はやはり際立ったものがありますよね!

それだからこそ勿体ないんですよね。せっかくキャストを上手く活かしてアートな世界観を構築しているのに肝心のストーリーや展開等がそれについていけてないというのが。ずば抜けた才能のある方だからこそその辺りを磨けば更に質の高い作品を生み出せるのでは?というのが僕の感想です。

ちなみに僕の好きなキャラクターは橋本愛ちゃんが演じた座敷童です。四月一日の事を好きになるのですが、正直現世には居ない妖怪であってもこんな座敷童になら取り憑かれたいと思った僕ちゃんでした(笑)

今回はやや辛口になってしまいましたが、蜷川実花さんの作品は今後も見続けていきたいと思っています。『ヘルタースケルター』や『Diner ダイナー』の様な作品とまた巡り会いたいと心から思ってます!

カラフルな色彩とイケメンや美女を見たいという方にはオススメです!

是非ご覧下さい!


映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝



1992年のアニメ放送開始から30周年となる「クレヨンしんちゃん」の劇場版30作目。おなじみのギャグを満載しながら繰り広げられる忍者アクションと、しんのすけの出生にまつわる謎をテーマにした物語が展開する。5年前の雨の日、野原ひろしとみさえの間に赤ちゃんが生まれた。ひろしが考えた名前のメモは濡れてほとんど読めなくなっていたが、かろうじて読めた文字から「しんのすけ」になった。それから5年の歳月が流れたある日、野原家にちよめと名乗る女性が訪れ、自分がしんのすけの本当の親だと主張する。突然のことにひろしとみさえは戸惑うが、身ひとつでやってきたちよめを追い返すわけにもいかず、ひとまず彼女を家に泊めることに。するとその夜、謎の忍者軍団が野原家を襲い、ちよめとしんのすけが連れ去られてしまう。「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃」「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし」などを手がけてきた監督の橋本昌和、脚本のうえのきみこら、これまでのシリーズを支えてきたスタッフが集う。(映画・comより)

クレヨンしんちゃんの映画がGWに帰ってきました!ここ二年は異例の9月公開、7月公開と変則的な公開スケジュールが続いてましたが、3年振りの4月公開。コナンくんがあってしんちゃんがあってとこれがGWの興行として定着してるわけですからやっぱりこうでないとですね。

さて、そんなしんちゃんの最新作の題材は忍者です。日本では昔から扱われてきた題材ですのでこれがクレヨンしんちゃんとどの様に融合するのか見所です!

忍者を題材にした脚本、とは言えいつものしんちゃんやカスカベ防衛隊の面々を忍者にした活劇を展開するという事であればよくあるパターンと言うか割とアイデアとしては安易だと思います。しかし、ここがうまいなと思ったのは脚本です。野原家と本作に登場する忍者一家その家族の物語として仕上げた辺りはよく出来ていたし、しかもストーリーとしてかなりの盛り上がりがありました。しんちゃん出世にまつわるエピソードだってこれまであまりよく知らなかったし、もし出生時のアクシデントから実はしんちゃんが…という発想は非常によく練られていたし、面白く作られているなと感心しました。しかも、ヒロシのうっかりエピソードでチラッと登場してくるキャラクターが本作で核となるわけですが、この見せ方だって初めは何て事ないいち登場人物からの…という展開は映画としても非常に盛り上がりを意識した作りとなっていました。

また、しんのすけ達が暮らすカスカベと掟に縛られる忍者の里の対比だってよく描かれていましたね。不自由なく子供達がのびのびと遊ぶカスカベそして長い歴史の中での因習と掟が中心となる忍びの里の窮屈な暮らし。だけどそこで暮らす人達にとってはそれが当たり前で誰もこれが不自然な事だとは思っていないんですよね。

で、これって映画を見てる僕たち、つまりは今当たり前の様に日本で暮らす我々を置き換えてみても成立する話しではないかなと思いました。今、我々の生活は当たり前の様に自由を謳歌しながら好きな事を出来る環境ではあります。でもその一方では見えないルール言い換えれば社会性と呼んでもいいかもしれませんが、何かに縛られてはいないかと言う事ですよね。人の顔色や体裁を気にする、空気を読む、目上の人に逆らってはいけない等等我々の暮らしでは至る所に見えない物に縛られていたりもします。当然破ってはいけない事もあるし、もっと緩和してもいいんじゃないの?という物だってある。だけどもっと本来の自分をさらけ出してもいいんじゃないの?というメッセージを感じました。

そしてこれを最もよく現したシーンというのが子供がダダをこねるというところでした。抑圧された環境の中で育った忍者の子供は子供らしいふるまいすらも許されません。幼い頃から忍術の鍛錬に明け暮れ、同年代の子供が好むハンバーグやウィンナーも食べれない環境に身を置いています。一見するとしっかりして利発そうに見える男の子が初めてダダをこねて見せた辺りは僕もたまらず涙が出ちゃいました。よく我慢したね、頑張ったねなんてもはや親の心境ですよ(笑)

そして親と言えば親御さん目線で家族について考える作りになってるんですね。生みの親と育ての親という普遍的なテーマもそうですし、もしも自分の子供が姿形変わっても変わらぬ愛情を注げるか等等。

クレヨンしんちゃんの映画が今や子供向けといういち方向でのアプローチではなくなっているというのは、これまでにも語ってきましたし、僕なんかが今更言う事でもないでしょう。しかし、本作でもやはり強いメッセージ性や深いテーマが盛り込まれていて唸らされましたね。

そして大人向けと言えば、随所に登場してくる昭和的ギャグがたまんないんですよね。ネタバレになるのでお伝えはしませんが、元ネタわかるの40代以上だろ?というレトロギャグが笑いを誘うと同時に親世代へのアプローチにも相変わらずぬかりがないしんちゃんの製作チームに今回もしてやられました(笑)

今回も満足な内容でした!エンドロール後には来年公開の新作を予兆させる映像がチラッと流れましたが、来年も期待しながら映画を楽しみにしたいと思います!

名探偵コナン ハロウィンの花嫁

青山剛昌原作の大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版25作目。ハロウィンシーズンの東京・渋谷。コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。しかし、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。降谷零と、すでに殉職している松田陣平、萩原研二、伊達航、諸伏景光の4人を含めた、通称「警察学校組」と呼ばれる5人がストーリーの鍵を握る。(映画・comより)

ハイ、やって来ました!毎年恒例の『劇場版名探偵コナン』。25作目の作品になりますが、思えば私。この内の半分以上は劇場鑑賞しております。もっとも一作目から見続けている人だっているでしょうから大した自慢にはなりませんが…。で、この最新作も迷う事なく公開直後に鑑賞。4月16日土曜日午後の回。MOVIX日吉津はポップコーンの購入にも長蛇の列が出来る程賑わっておりました。

さて、ここ近年のコナン君と言えば興行収入もとてつもない数字を連発しており、すっかり春の風物詩として定着した感が非常に強いです。とりわけコナンくんプラスのメインキャラをフィーチャーした形を取っており、それがより人気を高めるのに功を奏しているのかななんて思います。今年は警察学校組と呼ばれる五人のストーリーを軸にコナンらお馴染みの面々が大活躍する流れになります。

特徴としては王道のサスペンス要素はもちろんのこと、アクション・ラブストーリー等が織り込まれている点。…なんて言えばあれやこれやを入れ過ぎて散漫になるきらいがありそうですが、そこはご心配なく。110分の尺にこれらが非常にバランス良く織り込まれている為、決して飽きさせない。つまりはテンポが良いんですよね。松田刑事を中心とした過去シーンと現在をクロスするシーンも非常にスムーズだし、正直近年のコナン映画の中でも個人的にはかなり好きな方かもしれません。

それから今回に関しては原点回帰の様なコナン君大活躍という辺りが光りますね!例えば赤井一家であったり安室さんであったり怪盗キッドであったりとここ近年の作品だとその映画の核となるキャラクターに見せ場があり、コナン君がやや控え目だった印象。もちろん本作では警察学校組を中心に据えながらもしっかりとコナンの見せ場も用意してあり、全方向に向けてのアプローチがしっかりなされていた印象ですね。

それからお馴染みの阿笠博士のクイズだってあるのですが、今回は忘れた頃にぬるっと登場。このパターンも新鮮でしたね。

本作には2年以上の製作期間があったので、製作側も全く意図しなかったであろうロシアとの関わり。これは公開延期となったドラえもん映画を扱った時に現在の国際情勢と思わぬ形でリンクしてしまったとお伝えしましたが、まさかのコナンでも…というのが正直、驚いたしハロウィンの渋谷であわや爆破事故?なんて辺りが昨年のハロウィンの日の夜からしばらく続いた場当たり的なジョーカー事件とも繋がる様でこれもまた偶然とは言え、驚きを得なかったところです。

核となるキャラクターがロシア人という事で今はデリケートになりがちなんですが、本作でお伝えしたい事があるので、そこに触れていきます。少しネタバレが含まれてしまいますので、これから鑑賞予定の方は一度引き返して頂いてよろしいですか?


ハイ、よろしいでしょうか?

爆破事件を食い止めるのは日本人とロシア人なんですね。ハロウィンの渋谷での事件を戦争に置き換えて考えるとこんな見方が出来ませんか?日本とロシアが戦争を食い止める為に奔走していると。

ウクライナの人もロシアの民間人もどちらも平和を願っている誰だって戦争なんかしたくない。早く終わってほしい。平和を誰もが願っている中でロシア人達が爆発を止める姿に胸を打たれた。

復讐に燃える人物だって復讐を誓うが故の動機はある。だけど暴力や破壊的衝動は何も生まないという事を暗に伝えているんですよね。

僕は今回の内容は『ドラえもん』の時がそうだった様に非常にタイムリーなテーマだと思いました。

それから人の死生観について見せてるのも印象的でした。松田刑事は3年前に殉職してこの世にはいない。しかし、降谷さん・警察学校組・佐藤刑事と松田とゆかりの深い面々の思い出で生き続けるそんなそれぞれの松田刑事のドラマを綺麗にまとめながら見せてくれていましたね。

また、BUMP OF CHICKENの主題歌『クロノスタシス』について。実はコナンのイメージと合わなくない?なんて意見がありまして、僕も確かに!なんて思っていたんですよ。ところが実際に映画で耳にすると印象が変わりましたね。なるほど曲だけ聴くといつものBUMPなんだけど、作品にこれ程寄り添った楽曲もないかなと感じました。これは是非映画を見た上で感じて頂きたいところです!

と、この様に見所満載な名探偵コナンの最新作。『ドラえもん』に続いて思わぬ形でロシア・ウクライナ情勢にリンクしてしまいましたが、こんな時だからこそ見て頂きたいですね!


ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

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大ヒットファンタジーハリー・ポッター」シリーズの前日譚で、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第3弾。魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュートが、恩師のアルバス・ダンブルドアや魔法使いの仲間たち、そして人間(マグル)と寄せ集めのチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。その中で、ダンブルドアと彼の一族に隠された秘密が明らかになる。ホグワーツ城ホグズミード村など、「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみの場所も多数登場。原作者J・K・ローリングが引き続き自ら脚本を手がけ、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」以降の全シリーズ作品を手がけるデビッド・イェーツ監督がメガホンをとる。ニュート役のエディ・レッドメイン、若き日のダンブルドアを演じるジュード・ロウほか、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、エズラ・ミラー、カラム・ターナーら「ファンタビ」シリーズおなじみのキャストも集結。グリンデルバルド役は前作までのジョニー・デップに代わり、デンマークの名優マッツ・ミケルセンが新たに演じる。(映画・comより)

ハリーポッターシリーズのスピンオフとして制作されたファンタビこと『ファンタスティック・ビースト』全5作の内、遂に三作目が公開となりました!実を言うとこのワタクシ、『ハリーポッター』シリーズって見てないんですね。しかし、このファンタビに関しては2016年の1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』続く2018年の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』とこれまで見て参りました。実はハリーポッターシリーズではあるものの、ファンタビに関しては別の世界線で描かれているので全く問題はありません。

監督は前作に引き続き、デヴィッド・イェーツ。『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』以降全ての作品を手掛けてきた監督。原作者のJ.K.ローリングと共に長きに渡ってシリーズの製作を手掛けてきたシリーズには欠かせない方ではありますが、前作の「黒い魔法使い」の評価が低く、本作の製作では脚本の見直し等かなりの時間を要したとの事。今後の続投に関しては、本作の評判次第という事も公言されてる様ですが、ここまで来たら最後まで手掛けて欲しいところですね。

さて、そんな本作は果たして如何なものでしょうか。特段魔法シリーズの大ファンなわけでもないですが、公開後、最初の日曜日。MOVIX日吉津にて字幕版を鑑賞して参りました。

1作目から見ていると登場するキャラクターにも馴染みがあるものでして、ニュート以下仲間のキャラクターと久しぶりに再会したかの様な感覚。そして今回もまた、魔法を操る際のCGやVFXもやっぱり見応えを感じます。魔法という共通点で言えばマーベルのドクターストレンジにも言えますが、ハリウッド映画はホントグラフィックの使い方がうまいなぁなんて関心しちゃいます。当たり前なんですが、僕らは実際に魔法を使う人に会った事なんてないし、無論魔法だって見た事がない。だけどもし本当に魔法というものが存在していたら…考えたらワクワクしちゃうかもしれませんが、あたかも目の前で魔法を目撃したら…そんな擬似体験を映画館だからこその表現で楽しませてくれるわけですね。デヴィッド・イェーツ監督の手腕が正に光ります!

いや〜、いい映画でした〜!

というわけで今回の「きんこんのシネマ放題」は『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』を紹介しました、以上「きんこんのシネマ放題」のコーナーでした!

…ってダメ?

いやね〜、この作品を心から楽しんだという方、それから『ファンタビ』ファンの皆さん、ごめんなさい!ここから正直辛口です!

実を言うとワタクシ、今回の『ファンタビ』楽しめなかったんですよ〜。何故?それを整理してお伝えしていきますね。

まず、グリンデルバルドよ、何故キャスト変わる問題ね。今回のマッツ・ミケルセンが悪いわけではないし、彼は彼で存在感を見せつける素晴らしい演技をされていたと思いますよ。でもね〜、せっかく前作でジョニーデップのグリンデルバルドが確立したというのに残念なんですよ。風格漂う悪役としての魅力で言えばやはりジョニーデップにどうしても軍配が上がってしまうし、僕個人の印象としてはやはりジョニーデップに続投していて欲しかった!

次にダンブルドアの秘密というサブタイトルを付けて煽りに煽った割には引き伸ばし過ぎなきらいが否めないし、肝心のその秘密というのも「えっ?それで?」と突っ込んじゃいそうなもの。前述の様に製作にあたって何度も脚本の手直ししたわけですよ。その結果としてはあまりにも薄味で正直楽しめなかったし、何日かしたら忘れてしまいそうな内容なんですよね。壮大なネタバレになりますから流石に内容にまでは触れませんが、それが僕が感じた事ですね。

で、これは本作だけに限らず最近のハリウッド映画でありがちなんですが、二時間半だとか三時間の様な長尺が当たり前になってきてますよね。それ自体が悪いとは思いませんが、尺を使う割には内容がさほど印象に残らない様な作品が多い気がするんですよね。むしろ二時間以下の短めの尺に内容を凝縮してくれた方が個人的には良いと思うんですけどね。

なんてダラダラ文句を並べて締めるのは後味悪いので最後に良い点をひとつ。ジェイコブはやっぱり憎めない(笑)今回はそんなジェイコブも遂に…!なんてシーンが用意されてます。ジェイコブに心が和んだそんなきんこんでございました!


CODA コーダ あいのうた

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家族の中でただひとり耳の聞こえる少女の勇気が、家族やさまざまな問題を力に変えていく姿を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画「エール!」のリメイク。海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。テレビシリーズ「ロック&キー」などで注目の集まるエミリア・ジョーンズがルビー役を演じ、「愛は静けさの中に」のオスカー女優マーリー・マトリンら、実際に聴覚障害のある俳優たちがルビーの家族を演じた。監督は「タルーラ 彼女たちの事情」のシアン・ヘダー。タイトルの「CODA(コーダ)」は、「Children of Deaf Adults=“耳の聴こえない両親に育てられた子ども”」のこと。2022年・第94回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞の3部門にノミネートされ、同3部門を受賞。ルビーの父親フランク役を務めたトロイ・コッツァーは、男性のろう者の俳優で初のオスカー受賞者になった。(映画・comより)

『ドライブ・マイ・カー』の国際長編映画賞受賞、そして大きな波紋を呼んだウィルスミスの一件。今年のアカデミー賞は普段映画を見ない層にも話題になった出来後があったわけですが、オスカー受賞となったなった作品を忘れちゃいけません。これが本作『コーダ   あいのうた』ですよ。日本での公開は今年の1月。ほとんどの劇場で上映が終了していたのですが、今回の受賞で再上映&全国300館を超える劇場で拡大上映。それを考えるとアカデミー効果の大きさが改めてわかりますね。

さて、ワタクシ。ミーハーなワタクシ。公開直後は全く見る作品の選択肢にも入っていなかったのですが、今回の公開拡大を機に4月のファーストデイを利用してT-JOY出雲にて鑑賞。春休み中とあって『シング』や『ドラえもん』を見に来たキッズや『余命10年』を見に来た若者を横目に劇場へ。見事に年齢層高めのしかも比較的一人客が多かった印象。長期休暇中にこういう客層だと心なしか安心感があります。

泣ける映画が良い映画だ!なんて陳腐な事を言うつもりは毛頭ありません。でもね、この作品は感受性の強い人程心に刺さるであろうし、僕も並びで見ていたお一人様のお姉様も感極まっていたんでしょうね。後半になればなる程涙をすする声が僕の耳にも入ってきました。

ろう者の中で一人健常者として家族の通訳となる一人の少女・ルビー。なんて言うと「障がいを題材にしたお涙頂戴系ね、」なんて冷ややかな事を言う御仁が居そうなんですが、まぁ待って待って。

確かに聴覚障がいを題材にはしています。でもこの作品ってそれだけではないんですよ。

自分以外の家族が皆ろう者という事で彼女は学校でも奇異な目で見られたり、心ない事を言われたり、はたまた彼女のボーイフレンドになりそうな男の子に学校で彼女の両親の◯◯をネタにされたりと辛い日々を過ごします。一方で漁業で生計を立てる家族に交じり自らも漁に出たり時には家族の通訳として会合に参加したり。思春期の女の子にとってはなかなかハードな日々です。

そんな彼女が歌を通して自らが成長し、そして人を幸せにしていくハートフルなストーリー。更には大切な家族との別れ。見えて来ましたよね。そうなんです。コーダであるルビーと家族のお話しなんです。

我々から見れば彼女は特殊な環境に身を置いているかもしれない。だけど彼女にとっての日常はそれであり、両親と兄は彼女にとっては大切な家族なんです。

しかし、彼女が歌と出会う事でその活動と家族の時間のバランスを取らないといけなくなる。彼女に指導する熱心な音楽教師とのレッスンだって遅刻になってしまわざるを得ない状況だし、事情を知らない先生からすれば自らが買ってるのに自主練もしないし、常に遅刻をする時間にルーズな子という見方になってしまう。そこに悩まされる彼女の葛藤がこのレッスンシーンと家でのシーンではっきりと写し出されています。

僕の好きな映画で『くちびるに歌を』という作品があります。新垣結衣演じる講師が中学の合唱部に指導をするのですが、その中で生徒の一人が知的障がいを持つ兄の世話をする為、練習に参加出来ないというシーンがあるんですね。まさしくこのルビーという少女の置かれた境遇というのがそれで障がい者と健常者の家族が何かに打ち込む事の難しさをはっきりと伝えてくれています。

それでも歌に打ち込み成長していく彼女の発表会のシーンは非常に心を打つものがありました。

両親と兄も彼女の発表会にはもちろん足を運びます。しかし、彼らにはルビーの歌声が聞こえません。繊細で透き通った歌声が会場を包みます。そして、ろう者である彼らの視点からの会場の様子が写し出されます。ルビーの歌声に聴き入る観客達、涙を流す人だっている。でも確実に人の心を捉えている娘・妹の姿は彼らの視界には入っているわけであり、彼らもまたその光景に感動を覚えるのです。

僕はこのシーンこそが本作最大のハイライトシーンだと思いますね!劇場内を包む静寂の時間、およそ二分はあったでしょうか。この場面を見た人はきっと強く胸を撃ち抜かれた事でしょう。少なくとも僕はそうでした。

そしてラストに待ち受ける名シーン。それは親離れ・子離れという普遍的なテーマです。これまでルビーと家族の歩みを見てきたからこそ強く心が揺り動かされる。それを決してくどくならずにナチュラルに見せてくれるからより味わい深い作りになってましたね。

それから本作は音楽を大々的に扱った作品でありながら、音楽の自己主張が控えめ。でもそれがかえって良かった。ストーリーの邪魔をしない程度の劇版にルビーの歌だって決してエモーショナルで過剰ではない。それでいて芯の強さは感じる歌声なんですよね。また、劇中の重要場面で使用される楽曲だって良いトコついてくるんだよね〜!選曲センスが光ります!

とこの様に見所満載な作品でした!アカデミー作品賞受賞も納得の素晴らしい出来!これを見ない手はありません!

是非ご覧下さい!