きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝



1992年のアニメ放送開始から30周年となる「クレヨンしんちゃん」の劇場版30作目。おなじみのギャグを満載しながら繰り広げられる忍者アクションと、しんのすけの出生にまつわる謎をテーマにした物語が展開する。5年前の雨の日、野原ひろしとみさえの間に赤ちゃんが生まれた。ひろしが考えた名前のメモは濡れてほとんど読めなくなっていたが、かろうじて読めた文字から「しんのすけ」になった。それから5年の歳月が流れたある日、野原家にちよめと名乗る女性が訪れ、自分がしんのすけの本当の親だと主張する。突然のことにひろしとみさえは戸惑うが、身ひとつでやってきたちよめを追い返すわけにもいかず、ひとまず彼女を家に泊めることに。するとその夜、謎の忍者軍団が野原家を襲い、ちよめとしんのすけが連れ去られてしまう。「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃」「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし」などを手がけてきた監督の橋本昌和、脚本のうえのきみこら、これまでのシリーズを支えてきたスタッフが集う。(映画・comより)

クレヨンしんちゃんの映画がGWに帰ってきました!ここ二年は異例の9月公開、7月公開と変則的な公開スケジュールが続いてましたが、3年振りの4月公開。コナンくんがあってしんちゃんがあってとこれがGWの興行として定着してるわけですからやっぱりこうでないとですね。

さて、そんなしんちゃんの最新作の題材は忍者です。日本では昔から扱われてきた題材ですのでこれがクレヨンしんちゃんとどの様に融合するのか見所です!

忍者を題材にした脚本、とは言えいつものしんちゃんやカスカベ防衛隊の面々を忍者にした活劇を展開するという事であればよくあるパターンと言うか割とアイデアとしては安易だと思います。しかし、ここがうまいなと思ったのは脚本です。野原家と本作に登場する忍者一家その家族の物語として仕上げた辺りはよく出来ていたし、しかもストーリーとしてかなりの盛り上がりがありました。しんちゃん出世にまつわるエピソードだってこれまであまりよく知らなかったし、もし出生時のアクシデントから実はしんちゃんが…という発想は非常によく練られていたし、面白く作られているなと感心しました。しかも、ヒロシのうっかりエピソードでチラッと登場してくるキャラクターが本作で核となるわけですが、この見せ方だって初めは何て事ないいち登場人物からの…という展開は映画としても非常に盛り上がりを意識した作りとなっていました。

また、しんのすけ達が暮らすカスカベと掟に縛られる忍者の里の対比だってよく描かれていましたね。不自由なく子供達がのびのびと遊ぶカスカベそして長い歴史の中での因習と掟が中心となる忍びの里の窮屈な暮らし。だけどそこで暮らす人達にとってはそれが当たり前で誰もこれが不自然な事だとは思っていないんですよね。

で、これって映画を見てる僕たち、つまりは今当たり前の様に日本で暮らす我々を置き換えてみても成立する話しではないかなと思いました。今、我々の生活は当たり前の様に自由を謳歌しながら好きな事を出来る環境ではあります。でもその一方では見えないルール言い換えれば社会性と呼んでもいいかもしれませんが、何かに縛られてはいないかと言う事ですよね。人の顔色や体裁を気にする、空気を読む、目上の人に逆らってはいけない等等我々の暮らしでは至る所に見えない物に縛られていたりもします。当然破ってはいけない事もあるし、もっと緩和してもいいんじゃないの?という物だってある。だけどもっと本来の自分をさらけ出してもいいんじゃないの?というメッセージを感じました。

そしてこれを最もよく現したシーンというのが子供がダダをこねるというところでした。抑圧された環境の中で育った忍者の子供は子供らしいふるまいすらも許されません。幼い頃から忍術の鍛錬に明け暮れ、同年代の子供が好むハンバーグやウィンナーも食べれない環境に身を置いています。一見するとしっかりして利発そうに見える男の子が初めてダダをこねて見せた辺りは僕もたまらず涙が出ちゃいました。よく我慢したね、頑張ったねなんてもはや親の心境ですよ(笑)

そして親と言えば親御さん目線で家族について考える作りになってるんですね。生みの親と育ての親という普遍的なテーマもそうですし、もしも自分の子供が姿形変わっても変わらぬ愛情を注げるか等等。

クレヨンしんちゃんの映画が今や子供向けといういち方向でのアプローチではなくなっているというのは、これまでにも語ってきましたし、僕なんかが今更言う事でもないでしょう。しかし、本作でもやはり強いメッセージ性や深いテーマが盛り込まれていて唸らされましたね。

そして大人向けと言えば、随所に登場してくる昭和的ギャグがたまんないんですよね。ネタバレになるのでお伝えはしませんが、元ネタわかるの40代以上だろ?というレトロギャグが笑いを誘うと同時に親世代へのアプローチにも相変わらずぬかりがないしんちゃんの製作チームに今回もしてやられました(笑)

今回も満足な内容でした!エンドロール後には来年公開の新作を予兆させる映像がチラッと流れましたが、来年も期待しながら映画を楽しみにしたいと思います!