きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

新解釈 三國志

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今日から俺は!!」「勇者ヨシヒコ」「銀魂」シリーズなど数々のコメディ作品を手がける福田雄一監督が、日本でも広く親しまれている中国の「三國志」に独自の解釈を加え、今回が初タッグとなる大泉洋を主演に迎えて描いた歴史エンタテインメント。いまから1800年前、中国大陸では中華統一をめぐって「魏」「蜀」「呉」の三国が群雄割拠していた。そんな世に、民の平穏を願う武将・劉備が立ち上がる。劉備ら各国の武将たちは激動の時代を駆け抜け、やがて魏軍80万と蜀・呉連合軍3万という、圧倒的兵力差が激突する「赤壁の戦い」が巻き起こる。人々を憂い、人望も厚い人物として知られる劉備だが、実は……。劉備を演じる大泉のほか、ムロツヨシ山田孝之佐藤二朗賀来賢人、橋本環奈、山本美月、岩田剛典、渡辺直美小栗旬福田組おなじみの顔ぶれを含めてオールスターキャストが集結。さらに名優・西田敏行が、「三國志」の新解釈を講義する歴史学者蘇我宗光役で福田作品に初出演した。主題歌は福山雅治が担当。
(映画.comより)

今や飛ぶ鳥を落とす勢いのヒットメーカー・福田雄一
今年公開された作品でも『ヲタクに恋は難しい』・『今日から俺は!!劇場版』とヒットさせてきました。
とりわけ今年はコロナによる異常事態が映画界にも襲いかかり春から夏にかけては劇場の休館そして再開後も新作がかからない為、旧作の再上映で繋いでいました。
しかし、『今日から俺は!!劇場版』の上映を皮切りに新作や延期されていた作品も相次いで公開。
再び映画館に人が戻っていきました。
今でこそ『鬼滅の刃』が国内興収最高記録を叩き出す大ヒットとなっていましたが、元々は『今日俺』のヒットがあったからこそであり、まさに映画界の救世主となったのは福田雄一監督なのでありました!
しかし、ヒットメーカーとは得てしてそういうものでしてコアな映画通程娯楽色の強い福田作品を否定する側面があるのも事実。
テレビで見るコントの延長の様なノリを映画で見る必要はあるのか?とかいつも同じ顔触れの内輪ノリの様でサムいとかね。
でもね、小難しい内容のモノばかりでは世の中つまらないですよ。
笑いを全面に出した作品となるとファミリーやカップルにも選択肢としてチョイスされやすい。
世の中の飲食店全てが高級料亭ばかりじゃない様にファーストフードを手軽に楽しめる風潮が映画にあっても良いのではないか。それが私の考えです。

さて、前置きが長くなりましたが、稀代のコメディメーカー・福田雄一三國志を扱う。
個人的な関心度はかなり高く公開直後の週末にMOVIX日吉津にて鑑賞しました。
日曜日という事もあり、かなり入ってましたね。
福田雄一のノリが好きそうな子供や若年層そして普段大河ドラマ等の歴史モノを好みそうなシニア層まで。
男女のバランスも半々くらいの客層でした。

のっけから大泉洋劉備が放つ福田雄一ワールド全開のセリフに笑いを誘われその後も「あ~お馴染みの流れね~」なんて終始ニヤニヤしながら鑑賞。
そして気付けばあっという間に二時間経っておりました。
で、この作品の面白いポイントとしては映画であってドキュメンタリーな所。
というのがNHK等でよく見る歴史系バラエティーをパロディとした様なつくりなんですよね。
西田敏行演じる歴史学者が作品全体のナビゲーターであり、そのテの番組で耳にする様な上品な女性のナレーションを入れ、そして実際に三國志のドラマパートへと導入していく。
そこにまた福田監督の遊び心が出ていて楽しめるんですよ。
金のかかったコント番組みたいな感じ?

なんて言うとこんな声が聞こえてきそうですね。
「だったらテレビでやればいいじゃん!」と。
更に身近に一人はいるであろう三國志大好きな三國志ガチ勢の「三國志をコントみたいにするな!」みたいなね。

そんな皆さん、まぁまぁ熱くならないで!
そもそもこの映画どの層に向けてますか?
そう、福田雄一大好き層とりわけ『銀魂』とか『今日俺!!』なんかでハマったエンタメ大好きな一般層ですよ。
偏見かもしれませんが、その層が例えば横山光輝の『三國志』読みますか?
吉川英治司馬遼太郎読みますか?
予備知識ゼロの状態から『レッドクリフ』の二作見ますか?
その他、三國志の漫画・小説・映画等数多ありますが興味ない人はとことん見ないでしょう。
そう、そこなんですよ!
人に今さら聞けない三國志福田雄一の手によって分かりやすくコメディ映画に落とし込んで理解しやすくしている点に意義があるんですよね。

その点で言うと三谷幸喜の『清須会議』にも共通するものがあります。
で、現に西田さん演じる歴史学者蘇我宗光さんも「これを機に本物の三國志も手に取ってみて下さい」というメッセージもあります。
歴史をポップに学ぶという僕が理想とするエンタメがここには詰まっていますね。

それから古典的な題材を現代風にアレンジしてコメディにするという方向性で言えば昭和前半期における軽演劇のそれに近いものを感じてこれまた私的には好感触でもあります。
例えば西遊記忠臣蔵新撰組鞍馬天狗等々史実に基づきつつも面白おかしく脚色するというのは古くからある手法だしライトな層へ訴求する上では非常に効果的なアプローチだと思います。
これを機に福田監督の『新解釈』シリーズが定番化したら面白いかななんて思ったりもします。

それからキャスト陣が楽しそうですよね。
福田組お馴染みの佐藤二郎・ムロツヨシ賀来賢人・橋本環奈は元より小栗旬山田孝之山本美月等々過去の福田作品にも出てた面々。
でも何気に渡辺直美さんがめっちゃパンチが効いてましたね。
そしてシークレットキャストの無駄遣いっぷりもインパクト大でした!

間違いなく年末年始に楽しめる作品かと思います!
家族揃っての鑑賞にオススメです!

天外者

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三浦春馬が主演を務め、近代日本経済の基礎を構築し希代の“天外者(てんがらもん)=すさまじい才能の持ち主”と称された偉人・五代友厚の人生を描いた歴史群像劇。「利休にたずねよ」「海難 1890」の脚本・小松江里子と監督・田中光敏がタッグを組み、オリジナルストーリーで描き出す。江戸末期、ペリー来航に衝撃を受ける日本。新たな時代の到来を察知した青年武士・五代才助(後の友厚)は、攘夷か開国かの内輪揉めには目もくれず、世界に目を向けていた。そんな中、遊女はるとの出会いから「自由な夢を見たい」との思いに駆られた彼は、誰もが夢見ることのできる国をつくるため、坂本龍馬岩崎弥太郎伊藤博文らと志を共にする。五代の盟友・坂本龍馬を三浦翔平、後に三菱財閥を築く岩崎弥太郎西川貴教、初代内閣総理大臣となる伊藤博文の若かりし頃を森永悠希、遊女はるを森川葵がそれぞれ演じる。
(映画.com)

三浦春馬さんが亡くなり間もなく半年を迎えます。
改めて言うまでもないですが、日本映画界にも多大な貢献をされ、俳優としての短い生涯を終えました。
そんな三浦春馬さん最後の出演作であり主演を努めた本作の主人公・五代友厚
商都・大阪の礎を築き、近代経済に大きな影響を与えた人物にも関わらず歴史の教科書にも載らないですし、知名度も高くありません。
そんな五代友厚の伝記映画である本作は監督が田中光敏、脚本小松江里子
これまでにも時代劇を中心に製作されてきた方々ですが、とりわけ私が好きなのは『利休にたずねよ』でして、この映画をきっかけに千利休に魅かれたものです。
そして本作は舞台を幕末に坂本龍馬伊藤博文岩崎弥太郎といった超有名人も登場しての一代記です。
ちなみに僕が見に行ったのが12月13日
MOVIX日吉津での午前の回。
平日ではありましたが、まずまずの人入りでした。
年齢層は比較的年配が多かったのですが、若い方も目にしました。
性別は三浦春馬さんへの想いが深いであろう女性が圧倒的に多かったですね。

では作品についてお伝えさせて頂きます。
まず、何と言っても三浦春馬さんを語らずにはいられませんね。
薩摩の下級武士であった青年期にはじまり明治維新を経ての経済人へと成長していく様。
青年から壮年~中年への変遷を三浦春馬さんの演技を通じ見届けていく流れとなります。
言うまでもなく魅了されていきますね。
喜怒哀楽全ての表情に訴えかけてくるものがありますし、その佇まいから漂う貫禄そしてこの姿を目にするのもこれが最後かとふと現実に戻る瞬間に感じる悲しさ。
見る人は誰しもこの心境へと至るのではないでしょうか。
もっとも三浦春馬さんが亡くなった直後に見た『コンフィデンスマンJP プリンセス編』でもやはり似たものを感じましたが、この作品の場合五代友厚という人物の佇まいがより三浦さん自身と重なり、胸に訴えかけてくるものがあります。
エンドロール後のメッセージには落涙必至かと思いますので決してエンドロール終わるまで席を立たない事を強くオススメします!

坂本龍馬を演じた三浦翔平さん・岩崎弥太郎西川貴教さん・伊藤博文森永悠希さん等の主要キャストの布陣も素晴らしかったですね!
坂本龍馬の豪放快活な雰囲気も良かったですが、岩崎弥太郎を演じた西川貴教さんは普段のミュージシャンのイメージと違い、維新を生き抜いた一人の男としての恰幅がありました。
森永悠希さんも『ちはやふる』のつくえ君のイメージ止まりだった僕ですが、若き伊藤博文の雰囲気と見事に合っておりましたね。

で、これはあくまで僕が感じた事ですが、どこかNHK的それでいて大河ドラマの持つそれではなくむしろ夜10時とかにやってそうな時代劇感がありましたね。
落ち着いたテイストでゆったり鑑賞するにはもってこいの作品だと思います。
また、幕末から明治にかけての激動期の持つ雰囲気が作品全体から伝わる様なつくりは引き込まれました。
ただ、一方では五代友厚の一代記を中心に見せればより作品に深みが生まれたのに少々サイドストーリーを詰め込んだり安易なお涙頂戴に走ってしまった感は否めませんでしたね。
ちょっとそこが勿体ないというのが正直な印象です。

なんて最後にちょこっとだけ言いたい事を言わせて頂きましたが、歴史にそこまで詳しくない方でも楽しめる人間ドラマとなっています。
ラストシーンは三浦春馬さんの姿と重なり、客席からは涙をすする声も聞こえてきました。
三浦春馬さん最後の姿をしかと劇場で目に焼き付けて下さい。
2020年の締めくくりに鑑賞を強くオススメします!

魔女がいっぱい

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バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督が手がけたファンタジー。「チャーリーとチョコレート工場」で知られる児童文学作家ロアルド・ダールの「魔女がいっぱい」を原作に、「プラダを着た悪魔」「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイが世界一恐ろしいと言われる大魔女(グランド・ウィッチ)を演じた。1960年代、とある豪華ホテルに現れた、おしゃれで上品な美女。しかし、彼女の正体は誰よりも危ない邪悪な大魔女(グランド・ウィッチ)だった。この世に魔女は実在し、世界中に潜んでいる。いつまでも若く、おしゃれが大好きな魔女たちは、人間のふりをして普通の暮らしを送りながら、時々こっそりと人間に邪悪な魔法をかけている。そんな魔女たちの頂点に立つ大魔女が、魔女たちを集め、ある計画をもくろんでいた。そして、ひとりの少年が偶然魔女の集会に紛れ込み、その計画を知ってしまうが……。「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロが製作と脚本に参加。「ROMA ローマ」のアルフォンソ・キュアロンも製作に名を連ねる。
(映画.comより)

久しぶりの洋画は魔女を題材にしたファンタジーです。
何て言えば西洋のおとぎ話ではよく登場するし、映画でもディズニー系等でも魔女というのは馴染み深い存在。
日本においても古くは『魔法使いサリー』に『魔女の宅急便』・『おじゃ魔女ドレミ』更にはゲームの女魔法使いと言えば古くからの魔女スタイルを取っていたりと様々な形で魔女は題材にされるものです。
そして魔法という特殊能力故に主人公として悪と戦う場合もあれば、悪役として主人公サイドを徹底的に苦しめるパターンもあるわけで果たして本作の魔女の位置付けは?と事前情報なしで見て参りました。
何よりアン・ハサウェイの演じる魔女があまりに気になりまして。

結果を先にお伝えするならば子供から大人まで楽しめるマジカルファンタジーストーリー。
クリスマスにもピッタリな作品かなと思いました。

まず、本作最大の見所はやはりアン・ハサウェイとなるわけですが、これまでの彼女のイメージと言えば『プラダを着た悪魔』や『マイ・インターン』等でのキャリアウーマン的な役であったり『アリス・イン・ワンダーランド』等ディズニーもので見せたプリンセスイメージが強いと思うんですよ。
ところが本作に関して言えば美しくも妖艶そしてどこまでも悪く、子供が見たらトラウマレベルではと感じさせ、これまでのイメージを確実に変える演技なんですよ。
そして彼女を悪役として見る機会がこれまでなかっただけにこれがどこまでも魅力的で新鮮!
60'sのマリリン・モンロー調の風貌と共に男女共に虜になる事必至かなと思います。

そしてCGやVFXの使い方が何とも見応えバツグン!
そこは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から『フォレスト・ガンプ』まで数々の名作を手掛けてきたロバート・ゼメキス監督だけあってお手の物といったところなんでしょう。
とりわけ本作の場合、魔法と非日常の空間を如何にして表現するかの手腕が問われるところだと思いますが、主人公の少年目線に立った目の前で起こっているトリッキーかつ不可解な現象を我々に見せつけてくれます。

それから本作の特徴を言うならば、『パディントン』とか『ピーター・ラビット』で見た様な動物アドベンチャー要素も加わっている点ですね。
詳しくは話せませんが、本作の軸となるのはある動物です。
その動物が大魔女を懲らしめる為にあれやこれやと動き回り、大活躍をするわけですが、その動物に思わず感情移入させる作りであったり、身体が小さいからこそのハンデそしてそれに伴う巨大な人間からの圧力がとにかくスリリングです。

それから本作のラストですが、誰もが予想するそれとは大きく異なります。
それをハッピーエンドとするのか否かは見ている人の判断に委ねるとして、テーマは見えてきます。
それは容姿のコンプレックスを如何に愛し、受け入れるかという点。
とりわけそれが登場する魔女との対比でより強い説得力を生み出します。
とりわけ本作の場合、誰もが絶望するであろう状況に陥れられ、しかもそれが救われる事にならない残酷な状況が前提としてあります。
しかし、愛し愛され必要としてくれる存在が近くにいる事でこれもまた悪くないという点。
実は本作のラストに近い状況のものがあって藤子不二雄A先生の『笑ウせぇるすまん』という作品があります。
喪黒服造という怪しいセールスマンが一見人の心を満たす行いをしますが、この喪黒との約束を破った人は必ず不幸な目に遭います。
一話完結のストーリーなのですが、昔ながらの銭湯が好きな男性の話しがありました。
喪黒に紹介された江戸時代さながらの銭湯にハマりますが、やはり戒めを破り彼は一生その銭湯で働きます。
実はこの銭湯は絵の中の世界でつまり彼は二度と表の世界には出れないんですね。
しかし、当の本人は毎日幸せそうにその銭湯で働き、そのストーリーは終わります。
一見すると不幸に見えても当人にとってはこの上ない喜びという事なんですね。

なんて思わぬところで『笑ウせぇるすまん』の話しになったので戻しますが、本作のラストはまさにこれ!
魔法にかかった子供達を一見にかわいそうと思いつつも、実は彼らは幸せも手にしている。
いや、どちらかと言うと子供向けのファンタジー作品ではあるけど何気に哲学的で深い!
ここ最近見た映画の中でもかなり感心させられましたね。

この年末年始の映画候補に加えてみては如何ですか?
オススメです!

サイレント・トーキヨー

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「アンフェア」シリーズなど手がけた秦建日子ジョン・レノンオノ・ヨーコの楽曲「Happy Xmas(War Is Over)」にインスパイアされて執筆した小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」を映画化したクライムサスペンス。佐藤浩市石田ゆり子西島秀俊らの豪華キャスト陣を迎え、「SP」シリーズの波多野貴文監督がメガホンをとった。クリスマスイブの東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたという一本の電話がテレビ局にかかって来た。半信半疑で中継に向かったテレビ局契約社員と、たまたま買い物に来ていた主婦は、騒動の中で爆破事件の犯人に仕立て上げられてしまう。そして、さらなる犯行予告が動画サイトにアップされる。犯人からの要求はテレビ生放送での首相との対談だった。要求を受け入れられない場合、18時に渋谷・ハチ公前付近で爆弾が爆発するというが……。
(映画.comより)

クリスマスシーズン真っ只中。
街にはクリスマスソングが流れイルミネーションが輝く一年最後の大イベントに浮き足立つそんな季節が今年もやって来ました。
クリスマスソング数多ありますが、日本ではド定番の山下達郎から近年ではback numberの『クリスマスソング』MARIAH CAREYWHAM!なんて何十年経ってもこの時期に必ず耳にするものです。
そして忘れてならないのがLENNON & YOKOの『HAPPY Xmas(WAR IS OVER)』ですよ!
ベトナム戦争の最中、世界中の戦争がなくなり誰もが平等にクリスマスと新年を祝える時が来る様にと願いが込められた反戦を唄うクリスマスソング。
製作から50年近く経ちますが、今なおJOHNの願う様な世界にはなっていない現状ではありますが、世界平和を願う気持ちは今なお世界中の人々の胸に響いています。
そんなクリスマスの名曲をモチーフに書かれた小説の映画版です。

さてこの映画、開始数分で度肝を抜かされる映像が登場してきます。
きらびやかに東京の街を照らす東京タワーの爆破シーンです。
この衝撃的な映像で一気に作品世界に心が誘導されていく事でしょう。
その後も渋谷のスクランブル交差点での爆破シーンが登場するのですが、本作最大の見せ場がこのシーンと言っても過言ではありません。
クリスマスの夜。
浮かれた若者達が集う渋谷の町。
話題のYouTuberにSNSにあげるべく自撮りで浮かれる若い女性、仕事帰りのOLにカップル。
都会の若者達のごくあり触れた光景がそこにはあります。
そして一斉にカウントダウンを済ませるとクリスマスを祝う賑やかな場面から一転。
阿鼻叫喚の地獄絵図と化していく光景がスローモーションという手法で生々しく映し出されていきます。
本来僕は日本映画において使われるこのスローモーションが苦手なのですが、こと本作に関してはうまく機能していましたね。
つい今まで正常な姿をしていた人々が惨劇に巻き込まれる事により、残酷な姿を露にさせられるその過程がリアリティーたっぷりに表現され思わず息をのんでしまいました。
とりわけ自撮りの少女の姿はより衝撃的でしたね。
笑顔で渋谷駅から出た彼女がほんの数分後には全身から血を流すその過程がまざまざと映し出されるわけですからね。
で、この衝撃的な映像から浮かび上がるのが平和ボケしている現代人への警鐘そのものでしてとりわけ渋谷に集まるいわゆるパリピ的な若者が浮かれはしゃぐ光景は我々地方に居る人でもニュース映像等を通じてこれまでよく目にして来ました。
そもそもこの映画で渋谷に集まっている連中というのは犯人の爆破予告を受けその爆破する様を見たいという不純な好奇心からですからね。
「まさか自分が巻き込まれるわけがない」という根拠のない確信。
そして巻き込まれて初めて気付く自らの愚かさ。
今まさにコロナ禍においての「自分がコロナにかかるわけがない」という根拠のない自信と重なる部分もあり、映画を通じての現代人への警鐘がはっきりと見てとれました。

とこの様に迫力あるシーンで心を掴まれる本作なのですが、惜しまれる点が多々ありまして結果手放しで満足出来ない面は否めません。
というのが、クライムサスペンスというジャンルでありながら、犯人の犯行への動機がなかなか伝わりずらいのと約100分という映画としては比較的短い尺の中に詰め込み過ぎた結果散漫になってしまったきらいがあるんですよ。
その結果、ラストはやや駆け足な展開になり半ば無理矢理な幕切れをさせてしまったのが勿体なかったなというのが正直な感想です。
石田ゆり子佐藤浩市西島秀俊広瀬アリス等々豪華な顔触れを揃えるのは良いですが、それぞれの人物描写が今ひとつ浅く中には「この人要るの?」なんて思ったのもまた事実。
そして後半で急いで広げた風呂敷を畳む作業に追い込まれた結果、とりあえず事件は解決しましためでたしめでたしという流れがあっても心には響かない。
せっかくエンドロールで『HAPPY XMAS』が綺麗に流れるのであれば余韻を味わいながら同曲を聴きたかったですよ。
結局、渋谷の爆破シーン「が」凄い映画という印象しか残らないんですよね。

しかし、メッセージ性はありましたし、現代日本を舞台にした平和とは何か?戦争とは何か?の問題提起をする姿勢は感じられました。
今の時代にはテーマとしては良かったと思います。

STAND BY ME ドラえもん2

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国民的アニメ「ドラえもん」初の3DCGアニメーション映画として2014年に公開され、大ヒットを記録した「STAND BY ME ドラえもん」の続編。前作から引き続き監督を八木竜一、脚本・共同監督を山崎貴が担当し、原作漫画の名エピソード「おばあちゃんのおもいで」にオリジナル要素を加えてストーリーを再構築。前作で描かれた「のび太結婚前夜」の翌日である結婚式当日を舞台に、のび太としずかの結婚式を描く。ある日、優しかったおばあちゃんとの思い出のつまった古いクマのぬいぐるみを見つけたのび太は、おばあちゃんに会いたいと思い立ち、ドラえもんの反対を押し切りタイムマシンで過去へ向かう。未来から突然やってきたのび太を信じて受け入れてくれたおばあちゃんの「あんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃった」という一言で、のび太はおばあちゃんに未来の結婚式を見せようと決意する。しかし、未来の結婚式当日、新郎のび太はしずかの前から逃げ出してしまい……。大人になったのび太の声を前作から続いて妻夫木聡が担当し、おばあちゃん役は宮本信子が務めた。
(映画.comより)

2014年に公開されたあの『STAND BY ME ドラえもん』から6年。
3DCGによるドラえもんが帰って来ました!
周知の通り、当初は今年8月に公開予定だったのがやはり新型コロナの影響で延期となっての公開です。
思えば今年は例年の3月から延期され8月に『ドラえもん のび太の新恐竜』が公開。
そして来春には『のび太の小宇宙戦争』が控えていたりと一年間でドラえもんの映画が三作公開される異例なケースとなります。

で、この6年振りの『STAND BY ME ドラえもん』の新作なんですが、僕は些か不安な面がありましてそれは山崎貴監督のここ数年での3DCGアニメーションが脳裏をよぎったんですよね。
とりわけ昨年夏のドラクエがあまりに衝撃的過ぎて果たして本作は大丈夫なのか?と感じておりました。

しかし、結論から言うと最高に泣けて最高に感情が高ぶるそして最高に誰かを愛したくなる素晴らしい内容でした!

まず、予告編でも登場していたのび太のおばあちゃんですよね。
ドラえもん』の原作を読んだ事ある人ならおわかりの様におばあちゃんが出てくる回はまず泣けるんですよね。
それがわかっていたからこそいや、わかっていながらやはりおばあちゃんが出てくるだけで目がじわじわっときちゃいまして本編開始数分で早くも僕の目からは涙が流れておりました。

その後も原作でおなじみのストーリーや新たに加えられたエピソードも全てにおいてハートフル。
子供の頃に読んでた『ドラえもん』の記憶が引き出され、終始映画に没頭しておりました。

そして今回最大のハイライトはやはり静香ちゃんとの結婚エピソードです!
大人になったのび太が結婚に怖じ気づいて逃げ出すなんてスネ夫じゃないけど「のび太らしいや・笑」なんて笑いたくなるんですが、でもそんな大人のび太が人間臭くてたまらなくいとおしくなります。
そして思います!
「男であれば静香ちゃんみたいな女性と結婚出来たらこれ以上の幸福はないぞ!羨ましいぞ、のび太~」なんて。
俺が独身だから尚更思うのかな?
で、これは是非カップルで見て頂きたい!
「付き合って数年、そろそろ結婚も視野に…でも彼氏がなかなか踏ん切りつかなくて」なんて数年前の俺みたいな彼氏を持つ彼女さん、いやがおうにも彼氏を連れていってあげてみて下さい!
ある意味『ゼク◯ィ』を見せるより強力かも(笑)
クリスマスも控えてるしね。

それからのび太誕生のシーン。
これまた原作ではお馴染みの話しですが、若き日の父・のび助と母・玉子がのび太が誕生した日二人でのび太の将来を希望を込めて話すんですよね。
その時に僕は思いました。
「40年ばかし前、若き俺の親父とお袋は俺にどんな想いを託してくれたんだろう。」
そんな事を考えたらまた目から溢れんばかりの涙が。
ちなみに帰宅後、うちの母親に聞いたら「帝王切開で産んだからそれが大変だったという事しか考えてなかったわ~てへぺろ・笑」との事でした(笑)
まぁ、そんな俺の話しはともかくですよ。
誰しもがこの世に誕生した時があるわけです。
その時に両親は色んな想いを託してくれたんだろうなぁという子供の視点そしてお子さんをお持ちの場合はその子が生まれた時を思い出して目頭が熱くなるのではないかななんて思います。

そして仲間ってホントに素晴らしい!
ジャイアンスネ夫出来杉くんとは大人になってからも交流があり、結婚式前日に独身最後の夜を共にします。
作中には描かれないもののきっと思い出話しに花が咲いた事だろうなぁ。
そして子供時代もちゃんと登場するんですが、ジャイアンってやっぱりアツいヤツ!
そんなシーンが登場すると今更だけどのび太って良い友達持ってるよな~・暴力と破壊的な歌は除いてね(笑)
俺も結婚式前夜は仲間と飲みたいって心から思いました。
その日はいつになる事やらですがww

後、細かい描写にも目を引かれる所がありましてそれはおばあちゃんの部屋。
先立ったのび太のおじいちゃんの写真が部屋に飾られてるんですよね。
このおじいちゃん、息子ののび太父・のび助には滅法厳しいのですが、未来から来た孫ののび太はデレデレになる古き良き日本のおじいちゃんなんですよね。

出産・結婚・仲間・祖父母の思い出等々人生のドラマが詰まっています!
ドラえもん好きならずとも感動の作品かと思います。
是非劇場でご覧下さい!

ドクター・デスの遺産 BLACK FILE

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人気作家・中山七里の小説「ドクター・デスの遺産」を映画化したクライムサスペンス。安楽死を手口にする連続殺人犯に挑む刑事役で綾野剛北川景子が共演し、「神様のカルテ」「サグラダリセット」などを手がけてきた深川栄洋監督がメガホンをとった。終末期の患者ばかりが次々と不審な死を遂げる事件が相次ぎ、捜査に乗り出した刑事の犬養と高千穂は、依頼を受けて患者を安楽死させる「ドクター・デス」と呼ばれる医者の存在にたどり着く。しかし、そんな矢先、重度の腎臓病に苦しんでいる犬養の一人娘の沙耶香が、ドクター・デスに安楽死を依頼してしまい……。
(映画.comより)

さて、いきなりですがあなたは人間の生と死について本気で考えた事はありますか?
「おいおい、どうした?」なんて突っ込みはさておき(笑)
仏教では人間が生きる上で七つの苦を与えたとされています。
その七つの苦の内に「生苦」・「死苦」の二つが入るわけでしてそれほど生きるという事は苦しくまた死してこの世を去る事もまた苦しみであるというわけです。
とはいえ普段生活をしていると生きるという事の意味をさほど深く考えなかったりするもの。
メシを食らい睡眠を取り、大切な人と談笑をする、子供の成長を見守ったり趣味に没頭したり日々の仕事に精進する実はそれって全て恵まれてる事なのに当たり前に感じるとその有り難みを改めて考える事がないかもしれません。
でも例えばの話しあなたが病に苦しんでいたら?
その日暮らす事もままならない程お金に悩まされていたら?
いじめ・虐待に悩まされ心の拠り所がなかったら?
ここではじめて「生きるって何だろう?」「人は死んだらどうなるんだろう?」なんて思考に至るのではないでしょうか?
実は今でこそラジオで元気に喋ってる俺だってこんな事考えた事あるんだよね。
人は気楽に「元気出せよ」とか「頑張ってね」とか「その内良い事あるよ」とか一見ポジティブだけど当人をメチャクチャ苦しめる言葉を投げ掛けてきます。
もちろん本人は良かれと思って言ってくれてるのはわかるし、その度俺は「ありがとう」と取り繕ってきました。
でも言ってくれた人には悪いけどこれで元気にはなれないんですよね、ガチに落ちてる時は…

なんてこのままだと自分語りに終始しそうなので話しを映画の方に向けますね。
精神的に苦しんでいる時に脳裏によぎったのは「このまま安楽死出来ないかな?」なんですよ。
これはあくまで一例ですが、長い闘病により家族にこれ以上迷惑をかけたくないという心理に陥った時、安楽死という制度があれば選択する人は少なくないかと思います。
そうです、本作の主題はこの安楽死についての是非です。

ドクター・デスを名乗る医者。
彼は患者の命を救うのではなく、苦しむ患者を楽にさせる為安楽死を行うわけです。
しかし、それは安楽死が認められない現代にあっては殺人でもあるわけでこの法に基づく正義として許すわけにはいかないと奔走するのが綾野剛演じる刑事の犬養と北川景子演じる高千穂。
この男女のバディがドクター・デスの正体を暴く為、また彼の行いが殺人であると断罪し真実を暴く為の操作をしていくそんなプロットです。
この二人のチグハグなバディ関係が時には微笑ましく時には頼もしくストーリーを盛り上げてくれますが、とにかく見ていてスリリングそして見ているこちらに問題を提起してくれる内容は見応えがありました。

しかし、その一方ではご都合主義な面が悪目立ちしてしまい、映画全体の足を引っ張ってしまった感は否めませんでしたね。
映画を見れば見る程突っ込みたくなる様な展開、サスペンスであり見ている側にも推理させる様な要素が必要かと思うのですが、意外とあっさりわかる黒幕の正体等々そこはぬかりなく作って欲しかったなというのが正直な感想です。
見終わった後に「いや~、北川景子キレイだった~」以上の感想を引き出してくれよ~…なんて言うと偉そうですが。

ただ、安楽死という問題を提起し、考える機会になればそれでいいかなと。
そこにより深みがあればより良い作品になったのではないかというのが勿体なくもあり口惜しい点かなと思います。

罪の声

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実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬星野源の初共演で映画化。平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子
(映画.comより)

グリコ・森永事件。
昭和後期、バブル前夜の日本を震撼させた凶悪事件にして未解決事件として今なお語られるわけですが、同事件をモチーフにしながら完全なオリジナルストーリーで展開される社会派作品です。
件の事件当時僕はまだ幼児でしたが、当時連日の様に報道されていたニュース内容は子供心に衝撃を感じました。
とりわけ犯人として想定されていたキツネ目の男の不気味なモンタージュはトラウマになりそうなくらい脳裏に焼き付いています。

そんなグリコ・森永事件を下敷きとして果たしてどんな構成で映画が展開されるのか期待と同時に140分という長尺に果たして僕の集中力は持続するのかの不安もありましたが、結果から申します。
メチャクチャ作品に没頭してしまいその上映時間すらも短く感じられました。
つまりメチャクチャ作品に引き込まれていたとお伝えしておきましょう。

本作のポイントとして押さえておきたいのは昭和史に残る劇場型犯罪である同事件の犯行の動機は?事件の真相は?その後の顛末は?
まずはそのジャーナリズムな視点で描かれる前半部分。
小栗旬演じる新聞記者の阿久津の事件に関連したとされる人物への取材で次々に暴かれていきます。
時同じくしてこの事件に自分の意としない形で関わらされていた京都のテーラーである曽根俊也(星野源)。
彼が何故この事件に巻き込まれていたのかの謎を解く為、彼もまた独自で取材を続けます。
ここでは新聞記者というジャーナリストとしての目線で事件を追及する阿久津の目線と不遇な形で事件に関わっていた刑事でも記者でもない言い方は悪いですが、素人目線で謎を追う曽根この二人の捜査を見ている僕らは見守っていきます。
しかし、彼ら二人が出会ってからバディ関係を築いてからの事件を取り巻く人間ドラマの深追いがこの作品の本質的な部分を見ているこちらに投げ掛けてきます。
そしてこのドラマがあまりに残酷で悲しい。
ここで出てくるのが曽根以外に事件に巻き込まれてしまった姉弟のストーリーです。
実はここの辛さに関しては筆跡に尽くしがたいものがありまして、是非作品を直接見て頂くしかないとだけお伝えしておきます。
で、やはりここでも対比したいのが曽根の現状とこの姉弟の事件後の顛末なんですよ。
かたや曽根は父の跡を継ぎ、テーラーを経営。
決して派手な生活ではないものの妻と娘に恵まれ幸せに暮らしている。
だけど一方の姉弟は幸せな暮らしが一転。
反社会的な組織の監視下で地獄の様な暮らしを強いられてしまう。
「悪いのは彼らではないのに…何故彼らはこんな目に遭わなければならないのか」と強い憤りと共に胸が苦しくなりますけど
そして曽根自身もまた自らの恵まれた境遇すらをも呪おうとするシーンが印象に残ります。

ここまでの流れから浮かび上がるのは親の犯罪に子供を巻き込む事での悲劇があまりにも残酷に描かれているわけですが、親は一時の金銭欲や社会への不満その他犯罪の動機は数あるでしょう。
しかし、親が身勝手に犯罪に手を染めたとしても罪のない子供を巻き添えにするとその子供は一生の十字架を背負い生きなければならない言い換えれば子供の未来そのものを絶やしてしまう行為であるという強いメッセージ性が浮かんできます。

ケースは違いますが、よく凶悪犯罪を犯した子供に関しては耳にする事ってありますよね。
就職・結婚等人生のあらゆる局面において不利に働くと。
当人が罪を犯したわけでもないのに身内が犯罪者という事から社会的に抹殺されて自殺する人も居ます。

本作はいち娯楽作品としての映画ではあるものの犯罪と親子関係という問題を強く投げ掛けた社会的メッセージの非常に強い作品だなと感じました。
正直作品的には重いかもしれませんが、鑑賞後には確実に心に響くものがあります。
こういう作品こそ劇場でご覧頂きたいというのが私の感想です。