きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ドクター・デスの遺産 BLACK FILE

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人気作家・中山七里の小説「ドクター・デスの遺産」を映画化したクライムサスペンス。安楽死を手口にする連続殺人犯に挑む刑事役で綾野剛北川景子が共演し、「神様のカルテ」「サグラダリセット」などを手がけてきた深川栄洋監督がメガホンをとった。終末期の患者ばかりが次々と不審な死を遂げる事件が相次ぎ、捜査に乗り出した刑事の犬養と高千穂は、依頼を受けて患者を安楽死させる「ドクター・デス」と呼ばれる医者の存在にたどり着く。しかし、そんな矢先、重度の腎臓病に苦しんでいる犬養の一人娘の沙耶香が、ドクター・デスに安楽死を依頼してしまい……。
(映画.comより)

さて、いきなりですがあなたは人間の生と死について本気で考えた事はありますか?
「おいおい、どうした?」なんて突っ込みはさておき(笑)
仏教では人間が生きる上で七つの苦を与えたとされています。
その七つの苦の内に「生苦」・「死苦」の二つが入るわけでしてそれほど生きるという事は苦しくまた死してこの世を去る事もまた苦しみであるというわけです。
とはいえ普段生活をしていると生きるという事の意味をさほど深く考えなかったりするもの。
メシを食らい睡眠を取り、大切な人と談笑をする、子供の成長を見守ったり趣味に没頭したり日々の仕事に精進する実はそれって全て恵まれてる事なのに当たり前に感じるとその有り難みを改めて考える事がないかもしれません。
でも例えばの話しあなたが病に苦しんでいたら?
その日暮らす事もままならない程お金に悩まされていたら?
いじめ・虐待に悩まされ心の拠り所がなかったら?
ここではじめて「生きるって何だろう?」「人は死んだらどうなるんだろう?」なんて思考に至るのではないでしょうか?
実は今でこそラジオで元気に喋ってる俺だってこんな事考えた事あるんだよね。
人は気楽に「元気出せよ」とか「頑張ってね」とか「その内良い事あるよ」とか一見ポジティブだけど当人をメチャクチャ苦しめる言葉を投げ掛けてきます。
もちろん本人は良かれと思って言ってくれてるのはわかるし、その度俺は「ありがとう」と取り繕ってきました。
でも言ってくれた人には悪いけどこれで元気にはなれないんですよね、ガチに落ちてる時は…

なんてこのままだと自分語りに終始しそうなので話しを映画の方に向けますね。
精神的に苦しんでいる時に脳裏によぎったのは「このまま安楽死出来ないかな?」なんですよ。
これはあくまで一例ですが、長い闘病により家族にこれ以上迷惑をかけたくないという心理に陥った時、安楽死という制度があれば選択する人は少なくないかと思います。
そうです、本作の主題はこの安楽死についての是非です。

ドクター・デスを名乗る医者。
彼は患者の命を救うのではなく、苦しむ患者を楽にさせる為安楽死を行うわけです。
しかし、それは安楽死が認められない現代にあっては殺人でもあるわけでこの法に基づく正義として許すわけにはいかないと奔走するのが綾野剛演じる刑事の犬養と北川景子演じる高千穂。
この男女のバディがドクター・デスの正体を暴く為、また彼の行いが殺人であると断罪し真実を暴く為の操作をしていくそんなプロットです。
この二人のチグハグなバディ関係が時には微笑ましく時には頼もしくストーリーを盛り上げてくれますが、とにかく見ていてスリリングそして見ているこちらに問題を提起してくれる内容は見応えがありました。

しかし、その一方ではご都合主義な面が悪目立ちしてしまい、映画全体の足を引っ張ってしまった感は否めませんでしたね。
映画を見れば見る程突っ込みたくなる様な展開、サスペンスであり見ている側にも推理させる様な要素が必要かと思うのですが、意外とあっさりわかる黒幕の正体等々そこはぬかりなく作って欲しかったなというのが正直な感想です。
見終わった後に「いや~、北川景子キレイだった~」以上の感想を引き出してくれよ~…なんて言うと偉そうですが。

ただ、安楽死という問題を提起し、考える機会になればそれでいいかなと。
そこにより深みがあればより良い作品になったのではないかというのが勿体なくもあり口惜しい点かなと思います。