きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

魔女がいっぱい

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バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督が手がけたファンタジー。「チャーリーとチョコレート工場」で知られる児童文学作家ロアルド・ダールの「魔女がいっぱい」を原作に、「プラダを着た悪魔」「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイが世界一恐ろしいと言われる大魔女(グランド・ウィッチ)を演じた。1960年代、とある豪華ホテルに現れた、おしゃれで上品な美女。しかし、彼女の正体は誰よりも危ない邪悪な大魔女(グランド・ウィッチ)だった。この世に魔女は実在し、世界中に潜んでいる。いつまでも若く、おしゃれが大好きな魔女たちは、人間のふりをして普通の暮らしを送りながら、時々こっそりと人間に邪悪な魔法をかけている。そんな魔女たちの頂点に立つ大魔女が、魔女たちを集め、ある計画をもくろんでいた。そして、ひとりの少年が偶然魔女の集会に紛れ込み、その計画を知ってしまうが……。「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロが製作と脚本に参加。「ROMA ローマ」のアルフォンソ・キュアロンも製作に名を連ねる。
(映画.comより)

久しぶりの洋画は魔女を題材にしたファンタジーです。
何て言えば西洋のおとぎ話ではよく登場するし、映画でもディズニー系等でも魔女というのは馴染み深い存在。
日本においても古くは『魔法使いサリー』に『魔女の宅急便』・『おじゃ魔女ドレミ』更にはゲームの女魔法使いと言えば古くからの魔女スタイルを取っていたりと様々な形で魔女は題材にされるものです。
そして魔法という特殊能力故に主人公として悪と戦う場合もあれば、悪役として主人公サイドを徹底的に苦しめるパターンもあるわけで果たして本作の魔女の位置付けは?と事前情報なしで見て参りました。
何よりアン・ハサウェイの演じる魔女があまりに気になりまして。

結果を先にお伝えするならば子供から大人まで楽しめるマジカルファンタジーストーリー。
クリスマスにもピッタリな作品かなと思いました。

まず、本作最大の見所はやはりアン・ハサウェイとなるわけですが、これまでの彼女のイメージと言えば『プラダを着た悪魔』や『マイ・インターン』等でのキャリアウーマン的な役であったり『アリス・イン・ワンダーランド』等ディズニーもので見せたプリンセスイメージが強いと思うんですよ。
ところが本作に関して言えば美しくも妖艶そしてどこまでも悪く、子供が見たらトラウマレベルではと感じさせ、これまでのイメージを確実に変える演技なんですよ。
そして彼女を悪役として見る機会がこれまでなかっただけにこれがどこまでも魅力的で新鮮!
60'sのマリリン・モンロー調の風貌と共に男女共に虜になる事必至かなと思います。

そしてCGやVFXの使い方が何とも見応えバツグン!
そこは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から『フォレスト・ガンプ』まで数々の名作を手掛けてきたロバート・ゼメキス監督だけあってお手の物といったところなんでしょう。
とりわけ本作の場合、魔法と非日常の空間を如何にして表現するかの手腕が問われるところだと思いますが、主人公の少年目線に立った目の前で起こっているトリッキーかつ不可解な現象を我々に見せつけてくれます。

それから本作の特徴を言うならば、『パディントン』とか『ピーター・ラビット』で見た様な動物アドベンチャー要素も加わっている点ですね。
詳しくは話せませんが、本作の軸となるのはある動物です。
その動物が大魔女を懲らしめる為にあれやこれやと動き回り、大活躍をするわけですが、その動物に思わず感情移入させる作りであったり、身体が小さいからこそのハンデそしてそれに伴う巨大な人間からの圧力がとにかくスリリングです。

それから本作のラストですが、誰もが予想するそれとは大きく異なります。
それをハッピーエンドとするのか否かは見ている人の判断に委ねるとして、テーマは見えてきます。
それは容姿のコンプレックスを如何に愛し、受け入れるかという点。
とりわけそれが登場する魔女との対比でより強い説得力を生み出します。
とりわけ本作の場合、誰もが絶望するであろう状況に陥れられ、しかもそれが救われる事にならない残酷な状況が前提としてあります。
しかし、愛し愛され必要としてくれる存在が近くにいる事でこれもまた悪くないという点。
実は本作のラストに近い状況のものがあって藤子不二雄A先生の『笑ウせぇるすまん』という作品があります。
喪黒服造という怪しいセールスマンが一見人の心を満たす行いをしますが、この喪黒との約束を破った人は必ず不幸な目に遭います。
一話完結のストーリーなのですが、昔ながらの銭湯が好きな男性の話しがありました。
喪黒に紹介された江戸時代さながらの銭湯にハマりますが、やはり戒めを破り彼は一生その銭湯で働きます。
実はこの銭湯は絵の中の世界でつまり彼は二度と表の世界には出れないんですね。
しかし、当の本人は毎日幸せそうにその銭湯で働き、そのストーリーは終わります。
一見すると不幸に見えても当人にとってはこの上ない喜びという事なんですね。

なんて思わぬところで『笑ウせぇるすまん』の話しになったので戻しますが、本作のラストはまさにこれ!
魔法にかかった子供達を一見にかわいそうと思いつつも、実は彼らは幸せも手にしている。
いや、どちらかと言うと子供向けのファンタジー作品ではあるけど何気に哲学的で深い!
ここ最近見た映画の中でもかなり感心させられましたね。

この年末年始の映画候補に加えてみては如何ですか?
オススメです!