きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

461個のおべんとう

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TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美によるエッセイ「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」を、「V6」の井ノ原快彦、関西ジャニーズJr.のユニット「なにわ男子」の道枝駿佑の共演で映画化。長年連れ添った妻との別れを決意した鈴本一樹。息子の虹輝は父と暮らすことを選んでくれたが、15歳という多感な時期を迎える虹輝に対し、一樹は罪悪感を抱いていた。高校受験に失敗した虹輝に、これまで自由に生きてきた一樹は「学校だけがすべてではない。自由に好きに育ってくれたらそれでいい」と思っていたが、虹輝は高校進学の道を選び、翌春に高校合格を果たす。学校の昼食は「父さんのお弁当がいい」と虹輝が言ったことから、一樹はミュージシャンでありながら息子のためにお弁当を作り続けることを決意する。一樹役を井ノ原、虹輝役を道枝がそれぞれ演じる。また原作者の渡辺が、一樹のバンドがライブを行うライブハウスのオーナー役でカメオ出演。監督は「キセキ あの日のソビト」の兼重淳。
(映画.comより)

それにしても秋ですね、食べ物に関する映画がよく公開されます。
特に今年は番組で扱ったものでも『みをつくし料理帖』、『とんかつDJアゲ太郎』そして今回扱う『461個のおべんとう』。
スクリーンを彩るおいしそうな料理が登場する映画。
そして毎週公開される映画の中からそれらの作品をチョイスする私の食いしん坊ぶりときたら(笑)

なんて話しはともかく内容について見ていきましょう。
あらすじで紹介されている様に離婚を機に高校生の息子のお弁当作りをする事になったシングルファーザー鈴本一樹。
そして彼のモデルこそがTOKYO No.1 SOUL SET渡辺俊樹さんです。
思春期の息子とのコミュニケーションツールとして始めたお弁当作りから父と子の繋がりを主題にした作品です。 
やはりといいましょうかここ最近この番組で映画内での料理話しがよく登場しますが、お弁当がおいしそうなんですよね。
とりわけ卵焼きの撮り方にはかなりのこだわりが感じられ、間違いなく鑑賞後には卵焼きが食べたくなるかと思います。
そしてそんな不器用ながらも愛のある父親を井ノ原快彦さんが演じられているのですが、これがまた良い雰囲気なんですよ。
仕事の音楽をする時、お弁当を作る時そして息子と接する時それぞれの表情が特徴的です。
息子の虹輝を演じた道枝駿佑さん。
すみません、自分がジャニーズのアイドルに疎い為ですが、今回初めて道枝さんの存在を知りましたが、井ノ原さんとの父子関係が見ていて清々しかったですね。

なんて話しをするとそもそも何故この映画をチョイスしたの?なんて話しですが、音楽シーンを楽しみにという点でしょうか。
TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺さんのエッセイを元に、となれば当然音楽シーンがないわけありません。
音楽業界の裏側を垣間見るシーンもあればライブシーンに関してはちょくちょく登場しますのでそこも要チェック!
個人的にはKREVAさんのラップが聴け、やついいちろうさんのDJが見れるというのは高ポイントです。
監督がGReeeeNのドキュメンタリードラマ映画『キセキ-あの日のソヒド-』をヒットさせた兼重監督とあって音楽のツボはかなり押さえていたなというのが個人的な印象です。
て事を考えたら先週の『とんかつDJアゲ太郎』に続いて二週連続で音楽×グルメな映画を取り上げてますね、ま、いいけど(笑)

それから今年は大躍進を見せている森七菜ちゃんの存在が本作でも存分に発揮されてましたね!
虹輝の友達という役での出演でしたが、一年遅れて高校に入学し、負い目を感じる虹輝の良き友達であり良い刺激を与える存在でした。
ただ、ラストの展開はちょっとないかな(笑)

さて、ここまで割と好意的にお伝えはしてきましたが、個人的には全体通して感じたのがややテンポが緩い感が否めなかったです。
弁当を通じた父と子の物語というハートウォーミングな内容だからこれくらいのテンポの方が良いという考えが出来なくもないですが、それ以外にも青春ストーリー、音楽ドラマ更には父・一樹のラブストーリーも?なんて詰め込んでる割には冗長的な感が否めず、完全に乗りきれたかというと正直イエスとは言えなかったのは事実。
良い映画ではあるしテーマやメッセージ性も明確なんだけど、見終わった後に余韻が残る程ではなかったかなと。
自分が映画に求めるものが大きすぎるのかもしれませんが。
或いは一人で見るか誰かと見るかそこでも変わってくるのかな?  

なんて最後はスッキリしないまとめになってしまいましたが、何度も言う様に映画自体は良い内容だったと思います。

それは是非あなたの目で確認して下さい!

とんかつDJ アゲ太郎

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テレビアニメ化もされたイーピャオ、小山ゆうじろうの人気ギャグ漫画を北村匠海主演で実写映画化。渋谷の老舗とんかつ屋の3代目・アゲ太郎は、弁当の配達で初めて足を運んだクラブで憧れていた苑子に出会う。キャベツの千切りばかりの日々を送っていたアゲ太郎は、音楽でフロアを盛り上げるDJたちのプレイに刺激を受け、これまで味わったことのない高揚感に心を動かされる。苑子のハートを射止めるため、アゲ太郎は、とんかつ屋の仕事もDJも精進し、豚肉もフロアもアゲられる「とんかつDJ」 になることを決意する。アゲ太郎役の北村のほか、山本舞香伊藤健太郎伊勢谷友介らが顔をそろえる。監督は自主映画「SLUM-POLIS」などで注目された「チワワちゃん」の二宮健。
(映画.comより)

今この映画を番組で取り上げるのはナイーブになりがちです。
出演者の不祥事はどうしても厳しい目を向けられがちですからね。
だけどその罪を犯したキャストには社会的に大きな非があるのは言うまでもないですが、監督をはじめとした製作陣及び共演者には何の罪もありませんし、むしろ彼も迷惑被られた被害者でもあります。
僕はこうした方々の名誉の為にも…なんて言うのはおこがましいですが敢えてこの作品を取り上げる事で興行的な影響を受けた点に何らかの救いになれば幸いかなと思っています。

というのは私自身学生時代にクラブDJをやっていたし、今でも趣味としてDJをやっています。
そんな身としてDJというともすれば一般層になかなか目が届かないカルチャーを映画にしてくれた事が嬉しくこの映画の公開を心待ちにしていました。
「DJって何をやるかわからない」とか「DJってレコード回してチェキチェキやってる人でしょ?」と思ってる方々に是非僕らDJのカルチャーを知ってもらいたいという思いは強くラジオ番組でもDJ MIXをオンエアしたりしてますね。
要するにDJとはクラブやディスコでレコードやCD最近だとPCとかUSBなんかもありますが流れる音楽を次々に繋いでお客さんを踊らせる人です。
しかし、自分の好きな曲だけを集めて次々に繋げば良いという事はなくその時その時のフロアの雰囲気とか選曲した曲の流れ更には繋ぎ方のテクニック等意外と求められるものは多いです。
つまり既存の音楽で自己表現し、それを駆使しながら現場の空気を読む能力が問われると言えばいいかもしれませんね。
そんなDJが映画の題材になるのは意外にありそうでなく、個人的な注目度はめちゃくちゃ高かったですね!
ストーリーはさる事ながらどんな曲が使われるのかキャストがどんなDJプレイをするか等々。
更にそこにとんかつというグルメ要素が加わる絶妙なグルーヴ感を期待しながら見に行きましたが、結果的には大当たりでした!

まず気になるDJ的な部分から注文するとクラブDJというアングラな世界の主役の光と陰を見事に映し出して決して華やかなだけではないという表現が見ていて共感出来ましたね。
きらびやかなクラブの人気DJ。
スポットライトを浴びながらフロアを湧かす華麗なプレイをする一方、お金はなくて住んでるアパートも追い出される始末。
リアルやな~。
ちなみに僕はアパートの追い出しこそなかったですけど常にお金はなかったですよ。
バイトして稼いでもすぐにレコードに消えちゃうんだもん(笑)
生活費よりレコードを優先しちゃうんですよ(笑)
で、レコード店での物色シーン。
僕らはレコ掘りと呼びますが、レコードラックに並ぶレコードを選ぶ時の手つきが早い早い。
これはジャケットを見ただけでアツいレコードかどうか一瞬で判断出来るDJの職業病みたいなものでいまだに僕はレコード店に行くとこれやってます(笑)
そんなDJあるあるがDJやってるとめちゃくちゃ共感するんですよね。
で、クラブのシーンで使われる楽曲について。
これは結構幅広く選曲されておりダンスミュージック好き以外の洋楽好きにも訴求するラインナップでしたね。
マルーン5ブルーノ・マーズから70's、80'sの懐かしドコロまで。
更に言えば映画館の大音量でしかもクラブのシーンで流れるもんだから僕なんかはかなりアガりましたよ!
出来る事なら椅子から立ち上がってその場で踊り出したいくらいでしたもん(笑)

以上の様にクラブやDJに馴染みがない人にもその文化がしっかりと伝わる様に表現されており音楽映画としても十分に堪能出来る内容でした。

そしてそこに加わるトンカツ描写ですが、これがね~めちゃくちゃ美味しそうなんですよ。
トンカツにも愛がないとこの撮り方は出来ねぇぞ~なんてニヤニヤしてました。
で、見事なのが、キャベツの千切りや卵を溶かす音、ジュ~ッととんかつを揚げる音それをリズムマシーンに落とし込み、ダンストラックにのせてサンプリングするというシーン。
これがめちゃくちゃカッコいいんですよ!
何とも言えないグルーヴ感があってね。
この発想はアリです(笑)

アゲ太郎を演じた北村匠海くんも良かったですね!
すっかりキミスイやふりふら等のイメージが付いている彼が挑む初のコメディですが、アゲ太郎のダサいけど愚直でまっすぐな奴感が見事に合ってましたね。
恋愛モノやシリアスなのもいいですが、今後もこういったコメディにバンバン出てほしいですね。
ヒロインはいつもの浜辺美波ちゃんではなく(笑)山本舞香さん。
これまでの作品だとヤンキーっぽかったりギャル路線だったりと跳ねっ返りなイメージの役が多かったですが、本作では渋谷のアパレル勤務のオシャレ女子。
渋谷の街やクラブという空間に絶妙にマッチしてましたね。
「米子からこんなコが出るんだ~、山陰もまだまだ捨てたもんじゃないぞ!」なんて見ておりました。

クラブやDJを知らないという方は多いでしょうが、原作がギャグ漫画であり本作も非常にコミカルに作られています。
音楽が好きならばこれを見てDJ機材を揃えてDJをしてみるなんて如何ですか?…ていうかそれを俺は望んでます(笑)

ちなみに本作はお腹を空かせて見る事を強くオススメします。
そして映画を見た後とんかつを食べに行って下さい。
めっちゃとんかつがうまく感じられます(笑)

劇場版鬼滅の刃 無限列車編

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週刊少年ジャンプ」で2016~20年に連載され、単行本1~22巻の累計発行部数が1億部を突破する吾峠呼世晴の大ヒット漫画をアニメ化した「鬼滅の刃」の劇場版。19年4~9月に放送され、炭治郎らが無限列車に乗り込む場面で終了したテレビアニメ版「竈門炭治郎 立志編」最終話のその後の物語が描かれる。大正時代の日本。鬼に家族を皆殺しにされ、生き残った妹の禰豆子も鬼に変貌してしまった炭治郎は、妹を人間に戻し、家族を殺した鬼を討つため、鬼狩りの道を進む決意をする。蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちは、短期間のうちに40人以上もの人が行方不明になっているという無限列車に到着する。炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助は、鬼殺隊最強の剣士の1人、煉獄杏寿郎と合流し、無限列車の中で鬼と立ち向かう。
(映画.comより)

遂にと言いますか社会現象真っ只中の『劇場版鬼滅の刃 無限列車編』です。
実は今回短評するにあたってはかなり緊張感があるんですよ。
社会現象となり、更に言えば信者の熱も非常に熱い故下手なコメントは出せないのでは?というプレッシャーですよね。
更に言えば私自身は今回の劇場版公開までは全く鬼滅そのものはノータッチ。
去年から盛り上がっている中でも全く作品に触れる事なく過ごしそこからのスタートです。
なのでコアなファンの方にはじめにお伝えしておきます。
あくまでライトな層に向けての内容です。
「『鬼滅』流行ってるけど全く見た事ないんだよね~」とか「いきなり映画から入っても厳しいよね~」と思いあぐねるそんな方々に向けた内容です。
コアな内容を期待しているのであればこの番組でなくともネット・YouTube諸々色んな方が発信している物を拾えると思います。
私の役目ではありませんので、細かいご指摘等に関してはご遠慮下さい。

さて、『鬼滅』初心者の私が本作鑑賞にあたって触れたものは原作の6巻までと二週連続で放映されたアニメの総集編。
この「無限列車編」の内容を楽しむ上で最低限抑えておきました。
誤解を恐れず正直に言うと前半部ってそこまでのれなかった自分が居たんですよね。
世代を問わず大ヒットとなる文字通りの社会現象作。
週刊少年ジャンプ』連載漫画で言えば例えば『ドラゴンボール』例えば『ONE PIECE』と看板を張る作品は数ありますが、どれもある程度の層に限定されていたのは事実であり、老若男女全てに支持されるという例はジャンプ史上初かも知れません。
つまりそれくらい稀有な例になってはいるものの、前半部のれなかった自分は居ました。
でも、そこで辞めるかどうかで大きく変わってくるのがこの作品の特徴でして、ストーリーが進むにつれて徐々にハマっていき気付けば没頭してしまう。
「あ~、これか!これが皆鬼滅にハマる理由か~」と気付いたら唸っておりました。
鬼対鬼殺隊というシンプルな構造はYouTubeSNS・オンラインゲーム等々多様化した現代のカルチャーでは至極スッキリしているし、登場人物だってごちゃごちゃしていない。
非常にコンパクトでわかりやすいんですよね。
更に本来敵である鬼にも鬼のストーリーがあり、見る人の感情に訴えかけてくる。
数多ある少年漫画において意外とありそうでなかったパターンだし、殺伐とした時代に人の感情を揺さぶるという展開は見事に合致するだろうなと感じました。

と、これが『鬼滅の刃』という作品全体を通しての私の印象です。
その上でのこの劇場版。
興行収入の記録が前例ない程驚異的な積み上げ方を見せていますが、全世界で公開されている映画のトータル興行よりも日本でのみ公開されている『鬼滅の刃』一本の興収が圧倒的に上回っているとあの『ニューヨークタイムズ』も報じた程です。
僕は10月21日エフエムいずもの生放送が終わり、松江東宝5で鑑賞して参りました。
普段平日の入りというのは人もまばらでそのお陰で僕もゆったりと鑑賞させて頂いているのですが、この時は(もちろん今も)違いました!
水曜日のお昼前だと言うのに目の前のフードコートにまで溢れる人の波。
正直山陰のシネコンでここまでの人を見るのは初めてかもしれません。
まぁ、あるとしてもお盆か年末年始くらいかな。
何度も言いますが平日・水曜日のお昼前です!

で、内容に関して言えば炭治郎を初めとしたメインキャラクターの紹介部分もあるので実は所見でもそれなりに楽しめます!
で王道のバトルシーンにおいても大スクリーンだとまあよく映える映える!
これはアニメ所見の時から思いましたけど、劇伴の挿入が絶妙なんですよね。
ここぞと言うタイミングで流れる音楽の使い方がどこまでもエモい!
感情を揺さぶられる事必至です!
アニメをきっかけにブレイクしたとは言われますが、ここにもそのヒントはあるのかななんて感じましたね。
そもそもこの無限列車編は原作に描かれてるんですよね。
当然本作公開前から原作を読んでる人は内容を知ってるわけじゃないですか。
となるとそういう人達をも感動させるには?というのはかなり大きな課題だったハズですが、作画の上質さ・声優陣の演技・そして劇伴の使い方等々あらゆる面での工夫が求められるわけでそれに応えるのは並大抵のものではなかったハズです。
しかし、その全てが圧倒的にレベルが高く極上のエンターテイメントに仕上がっていたのにはアニメファンではなく映画ファンである僕もかなり満足しました。
何と言ってもキャラクター一人一人の写し方は圧巻の一語に尽きるのですが、何と言っても煉獄さんには泣かされます。
リピーターになる人も多いという事ですが、この煉獄さんに持ってかれる人は相当数居るでしょうね。
僕もその一人でして、本作鑑賞終了後是非続きも見たいと鑑賞意欲がかき立てられました。
そしてそんな僕その後は漫画喫茶で全巻読破。
そう、確実にライトな層にも響き新規ファンを更に拡大していくのは想像に難くないなと感じた次第です。
ちなみに先日某中古本店に出向いたところ『鬼滅の刃』は全て品切れとなっていました。
これから年末年始も控え更なる大ヒットが見込まれます。
コロナ禍の映画業界のみならずエンターテイメント界はたまた日本経済をも救っている『鬼滅の刃』。
まだ見ていないという方、是非この波に乗ってみては如何でしょうか?

みをつくし料理帖

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映画プロデューサーとして「犬神家の一族」「セーラー服と機関銃」など数々のヒット作を手がけ、「天と地と」「汚れた英雄」などでは自ら監督としてメガホンを取った角川春樹の8作目となる監督作品。ドラマ化もされた高田郁による同名人気時代小説を、テレビドラマ版「この世界の片隅に」の松本穂香主演で映画化。享和二年の大坂、仲の良い幼なじみだった8歳の澪と野江を大洪水が襲う。数年後、大洪水で両親を亡くし、野江とも離れ離れになってしまった澪は江戸に暮らしていた。蕎麦処「つる家」の店主に助けられ、天性の料理の才能を見いだされた澪は女料理人として働き、さまざまな困難に立ち向かいながらも店の看板料理を生み出していった。その味が江戸中の評判になっていったある日、吉原・翁屋の又次がつる家にやってきた。又次の用件は、吉原で頂点を極めるあさひ太夫のために澪の看板料理を作ってほしいというものだった。澪役を松本、野江役を「ハルカの陶」の奈緒、又次役を中村獅童がそれぞれ演じる。
(映画.comより)

鬼滅の刃 無限列車編』が記録的大ヒットとなる中、『鬼滅』と同日に公開されたのが、本作です。
社会現象的なモンスター映画の陰に隠れがちですが、そんな中でも確実に良作は生み出されているわけでして、そんな作品をこそ取り上げるのが映画番組としての使命でもあるかなと感じる次第です。
さて、久しぶりに時代劇の紹介ですが、本作は原作があり、映像化となると2017年にドラマ放映されそしてこの映画版へ繋がっていきます。
ドラマ版では黒木華さんが主演ですが、映画版は松本穂香さん。
朝ドラ『ひよっこ』で注目を集め、『この世界の片隅に』のドラマ版、最近では『青くて痛くて脆い』でかなり重要な役を務め映画ファンの注目を集めたのも記憶に新しいところ。
そして、澪の幼なじみ野江を『事故物件 恐い間取り』で亀梨和也演じる主人公の若手芸人・ヤモメの恋人役を演じた奈緒さんです。
そして監督は数々のヒット作を世に送ってきた名プロデューサー・角川春樹
本作が角川監督最後の作品と謳われている所も映画ファンの注目を集めています。

さて、タイトルが示す通り本作は時代劇という形態で展開される料理映画です。
故に登場してくる料理は全て手が混んでおり美味しそう。
茶碗蒸しひとつの写し方にも力が入っており、お昼時に鑑賞しようものならお腹がなるなんて事もありそうです。
かといってお腹を満たしてから見ても料理の美しさがなかなか伝わらないなんてなりかねないのでその辺が難しいですけどね(笑)
で、料理を通した一人の女性の成長談としては非常に丁寧に描かれております。
元々上方出身の彼女が江戸で上方の味付けで料理を提供しても受け入れられなかったりそしてそこに苦悩する姿。
また料理が評判となり、人気店となるもライバル店の妨害に合ったり等と必ずしも順風満帆にならない辺り物語としての波乱が見る人の心を引き付けていきます。
しかし、そういった困難を乗り越えていく逞しい女性を松本穂香さんが堂々と演じてられるのが印象に残ります。
最近見た映画を引き合いに出しますが、『青くて痛くて脆い』においての彼女も確かに良かったのですが、こうした女の一代記的な作品の方がより彼女の魅力をうまく引き出しているのではないかと個人的には感じました。
それが僕の目から見た主人公・澪の印象ですが、一方の野江を演じた奈緒さんも良かったですね。
彼女は悲劇的な運命から吉原の遊女となるのですが、『事故物件』で見せたあの儚げな雰囲気が本作でも見事にマッチしています。
吉原についてを歴史的に調べると如何に彼女が絶望的な状況に落とし込まれているのかよく分かるところなんですが、今まさに自分の居る場所は地獄の渦中に居り、この二度と出られぬ無限地獄をさ迷いながらもしかし生きる事に希望を託す姿を彼女の表情から読み取れます。

総じて言えば澪と野江のキャスティングがこの上なくハマっていたというところでしょうか。
そしてそんな若い二人を支える豪華キャスト陣。
石坂浩二、渡辺典子、薬師丸ひろ子反町隆史藤井隆中村獅童浅野ゆう子窪塚洋介等々。
ベテラン勢が豪華に脇を固め、作品の世界観を作り上げています。
反町さんなんて登場するのは僅かな時間なんですよ。
あの反町さんをこの為だけに使うなんて贅沢な~なんて『ビーチボーイズ』や『G.T.O.』を見てた世代の僕なんかは思っちゃいましたね。
う~ん、ポイズン(何のこっちゃ・笑)
個人的には唯一芸人さんで出演していた藤井隆さんの演技が良かったです。
『南総里見八剣伝』の作者・式亭三馬を演じていましたが、決して口数は多くないし天の邪鬼な性格なんですよ。
でもそれがまた良い味を出してまして。
前に『決算!忠臣蔵』を扱った時の岡村隆史さんを思い出しました。
岡村さんも藤井さんもバラエティーでのイメージが強いですけど、テレビを離れた所だとめちゃくちゃ物静かというのはよく知られた話し。
で、『決算!』の岡村さんてめちゃくちゃ寡黙な武士なんですよね。
でもそちらの方がより素の岡村さんに近いのであって故に役とも見事に合っているのでは分析をしました。
で、『みをつくし』における藤井さんもまたより素に近いキャラクターであったが故に演技が自然というか式亭三馬って実はこんな人だったのでは?と思わせてくれるんですよね。

ちなみにこの豪華なキャスト陣。
皆さんいずれも過去の角川映画を支えてきた面々という事で角川監督のキャストに対する感謝と敬意が詰まった作品と言えるかもしれません。

決して派手ではありませんが、これぞ古き良き日本映画のお手本と言えるかもしれません。
チェーン店で手軽に飲むカフェオレよりも純喫茶で煎れたてのコーヒーを飲見たいというあなたへオススメの作品です!
是非劇場でご覧下さい!

82年生まれ、キム・ジヨン

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平凡な女性の人生を通して韓国の現代女性が担う重圧と生きづらさを描き、日本でも話題を集めたチョ・ナムジュのベストセラー小説を、「トガニ 幼き瞳の告発」「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチョン・ユミとコン・ユの共演で映画化。結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨンは、母として妻として生活を続ける中で、時に閉じ込められているような感覚におそわれるようになる。単に疲れているだけと自分に言い聞かせてきたジヨンだったが、ある日から、まるで他人が乗り移ったような言動をするようになってしまう。そして、ジヨンにはその時の記憶はすっぽりと抜け落ちていた。そんな心が壊れてしまった妻を前に、夫のデヒョンは真実を告げられずに精神科医に相談に行くが、医師からは本人が来ないことには何も改善することはできないと言われてしまう。監督は短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。
(映画.comより)

さて、『パラサイト』以来の韓国映画です。
いつもの如く原作は末読なんですが、韓国では2016年に出て大ベストセラーとなった小説が元ですね。
MOVIX日吉津での平日午前の鑑賞でしたが、客層はやはりと言うべきか女性中心でしたね。
それでは内容について触れていきましょう。
男性はこうであれ女性はこうであれ、なんて旧時代的な価値観。
韓国においての儒教的価値観の悪しき面が浮かび上がってくる内容。
でもこれって韓国に限らずここ日本にだってこの慣習って残っていますよね?
しかし、時代は常に変わっているわけでして、封建的な思考は本来淘汰されて然るべきなのですが、悲しいかなそれが残ってしまっているのが現代です。
東アジアにおいての儒教的思想により先人達は歴史を築いてきたわけですし、その歴史を毛頭否定するつもりはありません。
しかし、これがこと現代に置き換えると人の運命を翻弄し、時にそれが精神をも蝕んでいく悲しい現実があります。
本作の主人公の女性キム・ジヨン
彼女はまさにその運命に翻弄され、自らの身の置き場に悩まされてしまいます。
元々は優秀で仕事も出来、社会的評価の高かった彼女は何故苦しまなければならないのか見れば見るほど心苦しくなるその描写は2020年見るべき一本ではないでしょうか。
また、心の病を描いていますが、そこからも感じるべきテーマが浮かび上がってきます。
自分の知人や友人にも鬱病に悩まされている人がいますし、実は意外かもしれませんが、僕自身が心療内科に通ってた時期があります。
心の病ってはたから見ると身体が健康だからこそなかなか人には伝わらなくてそれがより苦しい部分もあるんですよね。
彼女に関して言えば義母のそれは見ていて非常に苦しいけどだからといってその義母を責める事も出来ない。
この辺り残酷で胸をえぐられそうなんだけど、確実に見ている人に訴えかけてくるシーンでした。
で、映画全体で見ても彼女に害のある人物が居ないんですが、だからこそタチが悪いんですよ。
強いて言えば彼女を苦しめていたのは閉塞的で息苦しい世の中であり、突き刺さる第三者の目・世間体と言い換えてもいいと思うそれなんですよね。
その点から見るとこの映画って今年らしさが非常に強いんじゃないかな?
コロナ禍による閉塞感、有名芸能人が相次いで自殺したりとかメンタルを崩しやすい年ですもんね。
実は僕自身、これまで伏せてましたけど、今年の夏から秋口にかけてややバランス崩しかけてました。(会う人からは全くそんな風には見えなかったと思います。)
幸い僕にはラジオという人生のライフワークがあるだめ、救われているんですが、それがなかったら割とマジでヤバかったかもしれません。
ちなみにこの間SNSを丸々放置してました。
どこかで世間と距離を置きたかったのかもしれません。
あ、今は大丈夫ですよ(笑)

なんて自分の話しになってしまいましたけど、これは誰しもがなる可能性はあるし、この映画では一人のアラフォー女性の人生を通じてリアルに描かれています。
でもそんな彼女が心の声をいや、何ともやりきれないその感情を露にするシーンなんかは非常に強い印象を残してくれました。
とあるカフェでの失敗。
後ろに並ぶ客からの心ない蔑視と中傷が彼女に向けられた時、たまらず彼女がぶつける感情。
これっていじめの構図にも近いんだけど、誰しもが後ろの客になる可能性はあるし、それをただ眺める傍観者にもなり得たりする。
しかし、中傷を浴びせられた彼女の心を誰が汲み取る事が出来ようかそれを突き刺す様に投げ掛けるこのシーンは本作において誤解を恐れずに言うとハイライトと言えるかもしれません。

さて、本作でメガホンを取ったのはキム・ドヨン監督。
48歳の女性監督なんですが、実は本作が初監督作品との事。
元々女優さんだったそうですが、結婚して家庭に入り役者業を引退。
2017年に大学院で映像技術を学び本作での監督デビューに至るそうです。
こういった点からも主婦のリアルを徹底的に描き切れているし、主演のチョン・ユミさんの表情の写し方は非常に見応え抜群でした!
女性の支持の高い作品であるのはわかりますが、男性にも見て欲しいです。
独身の僕が言うのも何ですが、パートナーとの関係を見つめ直す意味でも是非参考にして頂ければと思う次第です。

浅田家!

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様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で注目を集めた写真家・浅田政志の実話をもとに、二宮和也妻夫木聡の共演、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督のメガホンで描いた人間ドラマ。4人家族の次男坊として育ち写真家になった主人公・政志を二宮、やんちゃな弟をあたたかく見守る兄・幸宏を妻夫木が演じ、家族の“愛の絆”や“過去と今”をオリジナル要素を加えつつ描き出す。浅田家の次男・政志は、幼い頃から写真を撮ることが好きだった。写真専門学校に進学した政志は、卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを本人たちがコスプレして再現する写真を撮影。その作品は見事、学校長賞を受賞する。卒業後、地元でパチスロ三昧の3年間を送った後、再び写真と向き合うことを決意した政志が被写体に選んだのは、やはり家族だった。様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催したところ、気に入った出版社が写真集を出版。プロの写真家として歩み始める政志だったが、全国の家族写真の撮影を引き受けるようになり、その家族ならではの写真を模索・撮影するうちに、戸惑いを感じ始める。そんなある日、東日本大震災が起こり……。
(映画.comより)

私個人非常に好きな映画がありまして、それが『湯を沸かすほど熱い愛』なんですね。
若くして病に冒されこの世を去る銭湯の女将を宮沢りえさんが演じ、劇場で鑑賞しながらボロボロ涙を流したものです。
その『湯を沸かすほど熱い愛』の中野量太監督の最新作という事で期待を胸にこの『浅田家!』を鑑賞しましたが、結論から言います!

今年見た邦画の中でもトップクラスと断言出来る良作でした!
実は本作の予告編を見た時、些かの不安があったんですよ。
消防士・極道・レーサー等浅田家の面々のコスプレ写真が全面に押し出されるばかりで果たして内容はどうなのかなと。
しかし、それらはほんの部分的な面に過ぎず、内容そのものは非常に深みのあるものでした。

前半は二宮和也演じる浅田政二という人はどの様に写真家としてのキャリアをスタートさせる事になったかという彼の半生を中心にストーリーが展開されていきます。
その過程で登場してくるのが件の家族のコスプレ写真となるのですが、ともすれば予告編ではちょっぴり恥ずかしくなる様なあの写真がストーリーの中で見ると微笑ましく見えてくるんですね。
それでいてコメディ映画を見る様なテンポの良さも相まって笑いを誘ってくれます。
だけど順風満帆ではなく、写真家としての大成は険しいもの。
政二は三重から東京へ行き、カメラマンのアシスタントをするもなかなか目が出ず、くすぶり続けるのですが、彼を支えるのが黒木華演じる幼なじみの彼女。
この二人にはカップルという生々しさを秘めたものではなく、共にひとつの事を成し遂げる同志の様にも見え、好感が持てます。
下積み特有の泥臭さもないので、爽やかすら感じられます。
そんな姿を見るからこそ写真家として評価を受ける辺りに共感性が生まれたりもするんですよね。

と、この様に前半は浅田家の家族の様子と政二の写真家物語が小気味良いテンポで描かれ、映画自体非常に楽しめます。

後半は前半のポップな流れから一転。
岩手県に住むある家族との交流を起点にした東日本大震災被災地の場面が中心となっていきます。
菅田将暉演じる一人のボランティアの青年と出会い、写真を通したボランティア活動を始める政二が一人の少女と出会い、そして家族や彼が向き合う写真を見つめ直すという展開。
本作においての映画的な深さと言えばやはりこの後半部にありまして、少女の家族そして写真という題材がひとつに結び付く辺りに目頭が熱くなっていきます。

本作はあくまで浅田家を主とした家族モノなんですが、それ以外に登場する家族というのも非常に印象的なんですよね。
被災地で出会う少女の家族もそうですし、余命僅かな男の子を抱える家族等々。
家族ひとつひとつにドラマがあってそれを残す為の写真がある。
今やデジタルの時代でスマホひとつで簡単に写真も撮れるのですが、かつては行楽地にお父さんがカメラを携えてその時その時の思い出を収めてくれていたもの。
何だかそんなノスタルジックな事を考えたら無性に昔のアルバムを見たいなんて思っちゃいましたよ。

さて、家族そして写真という主題のある本作。
冒頭のシーンから印象的。
内容は割愛しますが、ひとつの帰結点からスタートし、そこから過去を紐解いていくという映画的な手法かなと思い、ストーリーを追っていくとラストの方で冒頭のシーンへ帰結します。
そこでのサプライズに「あっ、やられた~」なんて笑みがこぼれてしまう事に。
最近見た作品で言えば『青くて痛くて脆い』に通じる意外性を楽しむというエンタメ要素ですかね。
笑いあり涙ありなんて月並みな表現に終始してしまいますが、この作品はまさにその典型とも言える内容でした。
良い映画を楽しませて頂きました!
是非劇場でご覧下さい!

トロールズ ミュージック☆パワー

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ボス・ベイビー」「ヒックとドラゴン」のドリームワークス・アニメーションによるミュージカルアドベンチャーアニメ「トロールズ」のシリーズ第2弾。歌と踊りとハグが大好きな妖精トロールズが暮らすポップ村で、元気いっぱいなみんなの女王として日々を過ごすポピー。実はトロールズの村はかつて王国として繁栄していたが、音楽のジャンルごとに6つに分裂した過去があった。自分たちとは違うジャンルの歌や踊るをするトロールズがいることに興味を抱いたポピーだったが、ロック村の女王バーブが、ほかの村を乗っ取ろうとしていることを知る。ポピーは世界を守るために仲間とともに旅に出るが……。監督は前作「トロールズ」で共同監督を務めたウォルト・ドーン。ポピー役は「ピッチ・パーフェクト」シリーズなどで歌声を披露してきたアナ・ケンドリック。ブランチ役を務めるジャスティン・ティンバーレイクが、音楽プロデューサーも担当している。日本語吹き替えキャストは上白石萌音ウエンツ瑛士のほか、仲里依紗、兄弟お笑いコンビ「ミキ」の昴生亜生らが務める。
(映画.comより)

実はこの作品、二作目になるんですね。
というのも前作は本国・アメリカでは劇場公開されたものの日本では劇場で未公開。
試聴するにはソフト或いは配信サービスのみとの事で一般的に知られていない様です。
しかし、この二作目の方はアメリカでは新型コロナの影響で劇場未公開。
ソフト化はされている様ですが、その辺りでトラブルに発展しているとか。
そして日本では劇場公開とあいなったわけで前作と逆転現象が起こっている様です。

さて、そんな本作ですが、実は僕は前作未鑑賞。
しかし、結果的にはかなり満足感のある内容でした!
というのもこの作品。
音楽が好きなら間違いなく楽しめる内容となっておりまして、使用楽曲がかなり豪華!
最新ドコロからMCハマーやシンディ・ローパーの様な懐かしいトコロまで。
選曲の幅広さで言えばイルミネーション作の『シング/SING』に匹敵するかもしれません。
ただ、『シング/SING』は動物達が歌という表現で音楽を全面に打ち出していたのに対し、本作では音楽そのものが意思を持ち、それを軸にストーリーを展開していくところ。
そしてそのストーリーというのが非常にメッセージ性があり、かなり深いものがありました。

本作に登場するトロールズの村それぞれが音楽のジャンルで分かれており、そこに暮らすトロールズは各ジャンルの音楽を好み暮らしているわけです。
しかし、ロック村の女王・バーブが全ての村をロックで征服しようという野望を持ち、動きます。
何となく勢いのあるロックを悪役に仕立てるわかりやすさもいいですが、それぞれの村が特色があっていいんですよね。
カントリー・テクノ・クラシック・ヨーデル等がありますが、それぞれの村が共通して自分達の愛するジャンルが絶対と信じて疑わない事そして他ジャンルは認めないという排他的な所があるんですよね。

これ、まさに我々人間の音楽的嗜好そのものを現していますよね。
人はそれぞれに好きなジャンルとかアーティストがあり、それを徹底的に好みます。
だけどどうでしょう?
それ以外の音楽ジャンルの接し方については。
「歌のない音楽は…」「洋楽は苦手…」「アニソンはちょっと…」「演歌は年寄りが聴くもの…」とか偏見を持っていたり。
僕の友人でも居ましたよ。
「ヒップホップは音楽じゃない!」とか「ユーロビートはヤンキーが聴くもの」みたいなね(笑)
かくいう僕だってある特定のジャンルが苦手で自分の番組ではかけないなんてこだわりがあったりします(何のジャンルかは言いませんが・笑)

それって自分の好きなジャンルが好き過ぎて他ジャンルが苦手。
まだそこでとどめておけばいいのにわざわざ悪態をつく必要とかともすればそのジャンルやアーティストを好きな人の人格まで批判するのは間違ってますよね。
本作ではまさにそんなメッセージが盛り込まれておりました。

そしてこれはあくまで音楽を引き合いに出してはいるものの大きく人の価値観の多様性を認めるという事が置き換えられますよね。
人が好む音楽って実はその人自身のパーソナルな部分を反映していて
好きな音楽=その人
という価値観を象徴しているものでもあるんですよね。
すなわちその人の嗜好や性格を理解し、その人を尊重しましょうという事。
多様性のある時代だからこそ色んな人の価値観を認めていきましょうというメッセージなんですよね。
更にアメリカで製作された映画なので人種的な問題やマイノリティへの理解とか『ズートピア』に通じる様なテーマと言えるかもしれません。

更に本作で興味深いのは音楽史の本質的な部分にも切り込んでいるところですね。
主人公の女の子・ポピーはポップ村の女王。
そんな彼女はキラキラした音楽が大好きでポップミュージックこそが絶対と信じて疑わないわけです。
しかし、彼女は音楽の歴史を突きつけられます。
ポップミュージックそのものがこれまでの歴史で他ジャンルを駆逐し、大きくなっていったという事。
実は本作でロック村がしようとしていた事そのものをかつてのポップミュージックがしてきたというのですが、こんにち隆盛を極めるポップミュージックはまさにそうなんですよね。
クラシック・ジャズ・ブルース・カントリー等の音楽から主導権を奪い音楽の中心になっていったという歴史。
これを彼女がどう受け止めるかは作品を見て頂くとしてこんにちの音楽への皮肉や警鐘も織り混ぜたその作りは唸らされました。

子供向けではあるものの、大人が見てももちろん楽しめるとりわけ音楽好きな方なら見るべき一本です!
強くオススメします!