きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

みをつくし料理帖

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映画プロデューサーとして「犬神家の一族」「セーラー服と機関銃」など数々のヒット作を手がけ、「天と地と」「汚れた英雄」などでは自ら監督としてメガホンを取った角川春樹の8作目となる監督作品。ドラマ化もされた高田郁による同名人気時代小説を、テレビドラマ版「この世界の片隅に」の松本穂香主演で映画化。享和二年の大坂、仲の良い幼なじみだった8歳の澪と野江を大洪水が襲う。数年後、大洪水で両親を亡くし、野江とも離れ離れになってしまった澪は江戸に暮らしていた。蕎麦処「つる家」の店主に助けられ、天性の料理の才能を見いだされた澪は女料理人として働き、さまざまな困難に立ち向かいながらも店の看板料理を生み出していった。その味が江戸中の評判になっていったある日、吉原・翁屋の又次がつる家にやってきた。又次の用件は、吉原で頂点を極めるあさひ太夫のために澪の看板料理を作ってほしいというものだった。澪役を松本、野江役を「ハルカの陶」の奈緒、又次役を中村獅童がそれぞれ演じる。
(映画.comより)

鬼滅の刃 無限列車編』が記録的大ヒットとなる中、『鬼滅』と同日に公開されたのが、本作です。
社会現象的なモンスター映画の陰に隠れがちですが、そんな中でも確実に良作は生み出されているわけでして、そんな作品をこそ取り上げるのが映画番組としての使命でもあるかなと感じる次第です。
さて、久しぶりに時代劇の紹介ですが、本作は原作があり、映像化となると2017年にドラマ放映されそしてこの映画版へ繋がっていきます。
ドラマ版では黒木華さんが主演ですが、映画版は松本穂香さん。
朝ドラ『ひよっこ』で注目を集め、『この世界の片隅に』のドラマ版、最近では『青くて痛くて脆い』でかなり重要な役を務め映画ファンの注目を集めたのも記憶に新しいところ。
そして、澪の幼なじみ野江を『事故物件 恐い間取り』で亀梨和也演じる主人公の若手芸人・ヤモメの恋人役を演じた奈緒さんです。
そして監督は数々のヒット作を世に送ってきた名プロデューサー・角川春樹
本作が角川監督最後の作品と謳われている所も映画ファンの注目を集めています。

さて、タイトルが示す通り本作は時代劇という形態で展開される料理映画です。
故に登場してくる料理は全て手が混んでおり美味しそう。
茶碗蒸しひとつの写し方にも力が入っており、お昼時に鑑賞しようものならお腹がなるなんて事もありそうです。
かといってお腹を満たしてから見ても料理の美しさがなかなか伝わらないなんてなりかねないのでその辺が難しいですけどね(笑)
で、料理を通した一人の女性の成長談としては非常に丁寧に描かれております。
元々上方出身の彼女が江戸で上方の味付けで料理を提供しても受け入れられなかったりそしてそこに苦悩する姿。
また料理が評判となり、人気店となるもライバル店の妨害に合ったり等と必ずしも順風満帆にならない辺り物語としての波乱が見る人の心を引き付けていきます。
しかし、そういった困難を乗り越えていく逞しい女性を松本穂香さんが堂々と演じてられるのが印象に残ります。
最近見た映画を引き合いに出しますが、『青くて痛くて脆い』においての彼女も確かに良かったのですが、こうした女の一代記的な作品の方がより彼女の魅力をうまく引き出しているのではないかと個人的には感じました。
それが僕の目から見た主人公・澪の印象ですが、一方の野江を演じた奈緒さんも良かったですね。
彼女は悲劇的な運命から吉原の遊女となるのですが、『事故物件』で見せたあの儚げな雰囲気が本作でも見事にマッチしています。
吉原についてを歴史的に調べると如何に彼女が絶望的な状況に落とし込まれているのかよく分かるところなんですが、今まさに自分の居る場所は地獄の渦中に居り、この二度と出られぬ無限地獄をさ迷いながらもしかし生きる事に希望を託す姿を彼女の表情から読み取れます。

総じて言えば澪と野江のキャスティングがこの上なくハマっていたというところでしょうか。
そしてそんな若い二人を支える豪華キャスト陣。
石坂浩二、渡辺典子、薬師丸ひろ子反町隆史藤井隆中村獅童浅野ゆう子窪塚洋介等々。
ベテラン勢が豪華に脇を固め、作品の世界観を作り上げています。
反町さんなんて登場するのは僅かな時間なんですよ。
あの反町さんをこの為だけに使うなんて贅沢な~なんて『ビーチボーイズ』や『G.T.O.』を見てた世代の僕なんかは思っちゃいましたね。
う~ん、ポイズン(何のこっちゃ・笑)
個人的には唯一芸人さんで出演していた藤井隆さんの演技が良かったです。
『南総里見八剣伝』の作者・式亭三馬を演じていましたが、決して口数は多くないし天の邪鬼な性格なんですよ。
でもそれがまた良い味を出してまして。
前に『決算!忠臣蔵』を扱った時の岡村隆史さんを思い出しました。
岡村さんも藤井さんもバラエティーでのイメージが強いですけど、テレビを離れた所だとめちゃくちゃ物静かというのはよく知られた話し。
で、『決算!』の岡村さんてめちゃくちゃ寡黙な武士なんですよね。
でもそちらの方がより素の岡村さんに近いのであって故に役とも見事に合っているのでは分析をしました。
で、『みをつくし』における藤井さんもまたより素に近いキャラクターであったが故に演技が自然というか式亭三馬って実はこんな人だったのでは?と思わせてくれるんですよね。

ちなみにこの豪華なキャスト陣。
皆さんいずれも過去の角川映画を支えてきた面々という事で角川監督のキャストに対する感謝と敬意が詰まった作品と言えるかもしれません。

決して派手ではありませんが、これぞ古き良き日本映画のお手本と言えるかもしれません。
チェーン店で手軽に飲むカフェオレよりも純喫茶で煎れたてのコーヒーを飲見たいというあなたへオススメの作品です!
是非劇場でご覧下さい!