きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

劇場版きのう何食べた?

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よしながふみの人気漫画を西島秀俊内野聖陽の主演でドラマ化して話題となった「きのう何食べた?」を、ドラマ版のキャスト&スタッフで映画化した劇場版。雇われ弁護士の筧史朗(シロさん)とその恋人で美容師の矢吹賢二(ケンジ)にとって、2人でとる夕食の時間が日々の大切なひとときとなっている。ある日、史朗の提案で、賢二の誕生日プレゼントとして京都旅行に行くことに。賢二は京都を満喫していたが、道中に史朗からショックな話を切り出されてしまう。この京都旅行をきっかけに、2人はお互いの心の内を明かすことができなくなってしまい……。シロさん役の西島、ケンジ役の内野をはじめ、山本耕史磯村勇斗マキタスポーツ梶芽衣子らドラマ版のキャスト陣に加え、「SixTONES」の松村北斗が出演。 

(映画・comより)

あくまで僕のイメージなんですが、グルメと映画というと何となく相性があまり良くないイメージがありまして、グルメを題材にした映画で大ヒットした作品って何かあったかな?なんて思っちゃいます。確かにありますよ、これまでにも多くの作品が。ただ、如何に美味しそうな料理が出てもそれを映画館のスクリーンで見たいかと言うとう〜んなんて唸っちゃいます。

ところがそんな偏屈な僕の思いなんてどうでもよくて現在大ヒット中なのが、この『きのう何食べた?』です。元々はテレビ東京系の深夜ドラマ。ドラマの劇場版は数あれど何故この映画がヒットしているのかこの目で確かめたくて、見て参りました!

元々はドラマではあるものの、放送時間は40分程度のショートドラマという事でこれが果たして約二時間に渡る映画との相性はどうなのか?途中で中弛みする事はないのか?心配はありましたが、これは杞憂でしたね。

結論から言いますが、非常に脚本がよく出来ていた。決して派手なシーンはないものの、日常の延長に居る様な二人の男性カップルを軸に料理と人生をテーマにした様な内容。タイプは違いますが、『かもめ食堂』の様な美味しそうな料理と味わい深い人間模様に特徴のある作品だと思いました。

ちなみに私はドラマにも原作にも触れていません。しかし、鑑賞してすぐにキャラクターや物語の設定は理解出来ました。つまり、一見さんにも大変優しい作りになっていたとお伝えしておきましょう。

弁護士ではあるものの自分で事務所を構えているわけではないいわゆる雇われの弁護士西島秀俊演じるシロさん、そして同じく自らサロンを経営してはいない美容師である内野聖陽演じるケンジ。この二人の男性カップルが同じ食卓を囲みながら愛を育んでいくストーリーです。

LGBTという言葉がすっかり馴染んだ感のある昨今において中年二人のカップルのやり取りに思わず笑いが溢れます。正直、ドラマを見ずに本作に触れた僕としては冒頭の内野聖陽さんのいわゆるオネエ言葉にいかにもなありきたりなキャラ設定だななんて顔をしかめてしまいまさたが、違うんですね。あくまでシロさんと二人で居る時のキャラであり、職場や外の世界ではまた違う。よくよく見れば細かいキャラ付けされてるんですよ。

そして二人で行く京都旅行。京都に馴染み深い私としては、二人が行くうどん屋さんのカレーうどんがめちゃくちゃ美味そうでどこのお店か気になっちゃいましたよ。そしてそんな京都旅行もそこそこにその後は終始、二人を軸にしたストーリー展開。

あわやの二股か?とか中年ならではの人生の岐路についての描写、はたまた肉親との関係等が描かれます。

そして何と言っても出てくる料理のまぁ美味しそうな事美味しそうな事。あくまで料理が軸になってるわけだからその料理に写し方には相当なこだわりが感じられましたし、何より高級料理とかではなく、誰でも家庭で手軽に作れそうなんですよね。だから料理が好きな人が見たらレシピが欲しくなるかもしれない。ちなみに僕はハーゲンダッツを載せたアップルトーストと田中美佐子さんが作ってた肉料理が食べたかったです(笑)

また、美容師のケンジが勤める美容院でのとあるカップルの描写を入れる事でゲイカップルと違う男女カップルならではの恋愛の機微が感じられた一方、弁護士のシロさんのパートではホームレスの殺人事件や冤罪について等別テーマが盛り込まれておりました。

また、この二人はかなりのプラトニックな関係なんですが、僕はこれはこれで良かったかななんて思ってます。二人を繋ぐものは生々しい性行為ではなく、結局は料理なんですね。二人で食卓を囲み美味しい料理を口にする。それ以上に特別な物は求めないんだけど、実はこれが究極の心の繋がりなんですよ。で、これは何も同性カップルに限った話しじゃなくて異性であっても結局同じなのではないでしょうか。セックスはもちろん大事なんだけど、本当にカップルを結びつけるものは結局はお互いの心。それがこの二人の場合は料理であり、また違うカップルには違ったそれがあり。この映画全体からはそういう普遍的なテーマが描かれている様に思いました。

また、中年ならではのテーマとしては先述の社会的立場の岐路という点もそうだし、病気というものもありましたね。お年柄健康診断で何かが見つかってもおかしくない。それを気遣うお互いの様子も印象的でしたし、何かがあった際に思いやれる存在の大切さなんかもこの映画からは感じられる事が出来ました。

結局は美味しい料理と大切な人。これが何より人生を豊かにさせてくれるんですね。


美味しい映画を楽しませて頂きました!

ごちそうさま!