きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

映画すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ

サンエックスが展開する人気キャラクター「すみっコぐらし」を劇場アニメ化した「映画 すみっコぐらし」シリーズ第3弾。本上まなみが前2作に続いてナレーションを担当した。
ある日、森のはずれでつぎはぎだらけの古い建物を見つけたすみっコたち。そこはおもちゃを作る工場だった。すみっコたちもおもちゃ作りをすることになり、手先の器用なしろくまはミシン、ぺんぎん?は虫メガネで検品など、それぞれの得意なことをいかしておもちゃ作りがスタート。しかし、その工場にはなにやら不思議なことがあって……。
監督は、テレビアニメ「宇宙なんちゃら こてつくん」「猫のダヤン」など知られる作田ハズム。脚本は、劇団「ヨーロッパ企画」の俳優・脚本家で、シリーズ第1作「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」も手がけた角田貴志。主題歌をPerfumeが担当。(映画・comより)

番組で扱うのは初の映画「すみっコぐらし」。ただ、僕は決して今回見るのが初めてというわけではなく1作目、2作目共にアマゾンプライムビデオで視聴していまして、いずれも大感動!それを持っての今回は劇場鑑賞をしようという事で見て参りました!

11月8日の水曜日。エフエムいずもでの自分の担当番組終了後、Tジョイ出雲にて見て参りました!子供向け作品ではありますが、平日のこのタイミングを狙ったのか大人の男女が数名。そんな中で僕も鑑賞したという次第です。

さて、これまですみっコぐらしに触れてこなかったにお伝えします。今作が映画としては三作目ですが、事前の予備知識は必要ありません。冒頭でイントロダクションがあり、本上まなみさんのナレーションによりキャラクターや物語の設定は理解出来る様になっています。ひとつお伝えするならばナレーションは前二作には本上さんと共にイノッチこと井ノ原快彦さんが担当していました。今回も当初はクレジットされていましたが、例の問題を受けて直前で降板の発表があったという事。この辺り差し替え等かなり裏側は大変だった事でしょうね。結果的に本上さん一人がナレーションをする事になりましたが、決して井ノ原さんを否定するつもりはないですが、結果的に一人であっても問題ないいやむしろ良かったのではとさえ思いました。

さて、映画の本編に触れていきましょう。すみっコぐらしって基本は出てくるキャラクターは話しません。すみっコ達が共に暮らす中でのやり取りを動きや漫画の吹き出しの様な物が示し、その動向をナレーションが伝えてくれます。だからこそなのかは知りませんが、出てくるすみっコ達がただひたすらに可愛くて愛らしくてたまらなくなるんです。今作でもやはりこれが健在でしてすみっコ達がわちゃわちゃしているだけで笑が浮かんできそうです。

で、物語の流れを大きく変える様に出てくるおもちゃ工場と可愛いクマの工場長。ぬいぐるみを作る所から始まりロボットや車のおもちゃを作り皆が楽しくおもちゃを作ります。この辺りが超楽しくてすみっコ達に案内してもらいながら社会科見学をしている様。だけどここからなんですよ。

おもちゃ工場って割とリアルな会社や工場に寄せていて朝にラジオ体操をしたり商品開発のプレゼンをしたり能力主義的なところがあって毎日その日のMVPを決定していったりと。果てはクマ工場長の経営者としての焦りから能力主義に拍車がかかったり失敗したすみっコに叱責したりと次第にブラック化していくんですよ。うわ〜、マジか〜、すみっコぐらしでも大人のリアルな社会写しますか〜。

というのは今年のクレヨンしんちゃん映画を思い出して下さい。初の3Dアニメという事で話題になりましたが、内容はというと現代の格差社会といわゆる無敵の人を生み出すそんな実情を描いていましたよね?僕は割と肯定的には見ていましたけど、当然否定派もいるわけで。その意見としては子供向けなのに生々しいとか残酷過ぎるというもの。

話しをすみっコぐらしに戻せばこの工場って超ブラックだし所謂社畜みたいな人をうむ社会をモロに描いている。ブラックな環境は良くないという風潮はここ近年大きくなっていてそこには過労死や自殺者やうつ病の発症更にはパワハラやセクハラ等様々な労働の現場から生まれた被害者や犠牲者が居てそれらが積み重ねられて近年の健全化が進んでるんですよね。なのにこの映画のおもちゃ工場なんて旧来にそれじゃないかなんて否定的な意見が出てきそう。何なら僕なんかはすみっコぐらしの製作の裏側って実はかなりブラックなのかななんて心配になりましたよ。

ただこれらの描写って決して今の社会を現しているのではなくて物語の上では実はかなり重要なものでして後の話しに繋がっていきます。

そしてこの後の話しに僕は一気に心持っていかれちゃいました。それは建物にも魂があるという事です。

かつては多くの人が行き交い栄えていたのにいつしかその役目を終え何十年も放置され朽ちた建物って身近にありませんか?それはある建物は会社として或いは病院として学校としてもちろん工場もあるし個人の家もあります。

廃墟好きという人は一定数いるものでしてそういった人達にはこれらの建物は魅力を感じられます。何故なら私が廃墟好きだからです(笑)

でも建物の本来の役割って一部のマニアな人から好奇的関心を寄せられるのではなく人を出入りさせそこで集まる人達の生活の場面を作る事なんです。建物にコケが生えて草木が覆い茂り敷地には雑草が繁殖するそんな事を建物は意思があれば望んでいないんですね。この辺り‥廃墟が悲鳴をあげてるという点ね。ここ見たら「すずめの戸締り」と共通してましたね。

そして建物もそうだしこのおもちゃ工場で作られたおもちゃだってそう。子供の頃に買ってもらったおもちゃだってその内遊ばなくなり埃を被りその内捨てられてしまう。

要は物を大切にしない人へのメッセージとなっていたんですね。この辺りって「トイストーリー」っぽくて考えさせられましたね。

この深いメッセージと共にすみっコ達に今回も僕は涙が止まらなかったんですよ。なんて考えたストーリーなんだと。前述の工場でのブラックぶりは決して能力主義や生産主義を肯定しているのではなくかつてのおもちゃ工場には人が集まりそこから生まれたドラマを描いていたんですね。建物としての生は人が集まる事、そして死は誰も立ち寄らなくなり朽ちていく事なんだと。

実はうちの近所で長らく空き家になっていた屋敷が取り壊されました。また親戚の祖父が一昨年亡くなり、自宅が先日片付けられました。また祖父は歯科医院をやっていたのですが、診療所も近く取り壊すそうです。そう考えるとこれらの建物は主を亡くしそして自らも建物としての生命を全うして成仏させてもらえる幸せ者なのかもしれない。

そんな事を考えながらシアターを後にした僕。今馴染みのある建物だっていつかは役目を終える日がくるかもしれない。その日までその建物に感謝しそして物を大切にしていこうと強く思いました。

今回も素晴らしい内容でした!

是非劇場でご覧下さい!