きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

RRR

日本でも大きな話題を集め、ロングランヒットとなった「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督が、英国植民地時代の激動のインドを舞台に、2人の男の友情と使命がぶつかり合う様を豪快に描くアクションエンタテインメント。
1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。
「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.がビーム、ラージャマウリ監督の「マガディーラ 勇者転生」にも主演したラーム・チャランがラーマを演じた。タイトルの「RRR」(読み:アール・アール・アール)は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。第95回アカデミー賞ではインド映画史上初となる歌曲賞にノミネートされた。(映画・comより)

公開後から映画ファンの間で大きな話題となっていたインド映画『R R R』。僕も気にはなっていたものの、結局その波に乗り遅れてしまいました。配信を待つしかないのかと落胆していましたが、2月3日からMOVIX日吉津で再上映。それに合わせて2月5日に見て参りました。

さて、映画について触れる前にインド映画と私なんですが、とんと縁がなく、何ならインド映画イコール陽気に踊るというイメージが先行してしまうくらいなんです(笑)

後で触れますが、この『R R R』もインド映画ならではの舞踏シーンは出てきますが、もっともっと深いテーマがあるんですね。これこそが分断からの解放。1920年代。イギリス統治下のインドの残酷な実態を描きながら二人の男性の葛藤が映し出されています。

さて、日本に住んでいると理解が乏しい事として帝国主義下における植民地の歴史です。そこでどの様に搾取され、不当な差別があり当地の人々が虐げられていたのか。有史以来他国からの植民地支配を受けていない我が国の場合、世界史の授業等で知識としては理解が出来ていても実態までは知らない。今作ははっきり言ってイギリスという国が大嫌いになりそうなくらいインドでの振る舞いなりが酷いものである事がわかります。それが冒頭から残酷な形で描かれるんですね。感情的に動かされやすい人は注意が必要です。胸糞場面のオンパレードです。特にイギリス軍の総統とその夫人のサイコパスっぷりは僕も怒りの感情をかなりセーブしましたからね。特に夫人がサイコパス発言をする度に僕は舌打ちをしてたくらいですよ、周りに聞こえていたかもしれませんが(笑)

まぁ、それだけにコイツらのラストにカタルシスがあって僕はガッツポーズしてしまいましたけどね。ある意味視点を変えれば僕の方がサイコパスな思考だったかもしれませんよ。

でもね〜、こういう胸糞シーンって必要なんですよね。如何に当時のイギリスが非道であったかをはっきり映し出しインド人が虐げられていたかを伝える意味でもね。これは当時の白人社会では当たり前だった価値観でもあるのですが、有色人種への差別が酷い。いけすかねぇ奴がダンスパーティーでその旨の発言をするのですが、インド人の給仕、黒人のバンドマンがその場面で映されます。そして有色人種である日本人としても憤慨してしまいます。でもね〜、ここからのカルチャーでのカウンターパンチがすごい効いてた!タンゴだワルツだで踊る白人貴族に向けてインド映画の真骨頂とも言えるインド舞踊で派手にミュージカルさながらに画面狭しと踊る場面ですよ!遂には会場に居た白人女性をも巻き込むビームとラーマの二人がめちゃくちゃカッコ良かった!これこそが今作の大きな見せ場ですよね!

さて、今作は友情か使命かが大きな物語のテーマになっているのですが、この扱い方がめちゃくちゃ引き付けられる物となっていました。ビームとラーマは無二の親友となるのですが、二人は立場が大きく異なるというか全体的に見ると敵対し合う環境に身を置いている。ラーマは組織の人間としてはビームを抑制せねばならないし、ビームは自らの目的の為にはラーマの所属する組織は憎き相手。だからこそ生まれる二人の葛藤が非常に突き刺さるものがあったし、それを打ち破るまでの過程がドラマチック。その脚本のうまさ等も際立っていたなと思います。

全体的に3時間の長尺でしたが、この脚本の組み立て方や伏線の張り方等が実によく出来ていた事もあって決して飽きさせないものでした!

それからアクションだって圧巻モノ!虎を使っての大乱闘にワイヤーアクション等等アクションの釣瓶打ち状態でアガリっ放しでしたね!とりわけイギリス産の銃の使い方が見事!産業革命によって成り上がりに上がったイギリスの工場で作られた大英帝国随一の最先端の武器ですよ。例の総統がクソみたいな理論を劇中で並べるわけなんですが、これを使いながらこれまで虐げてきた連中をぶっ倒していく様はスカっとする事必至だし、はっきり言って「ざまぁみろ!」なんて思っちゃいましたね。そして映し出された大英帝国を称賛する文言にかかる血しぶきが何とも印象的でしたね。

1920年代が舞台でしたが、その後の第二次世界大戦を経てインドは独立します。そのインド独立までにはこうした悲しい歴史があり、多くの血が流れた事を忘れてはいけないと思いました。

ラストシーンでは再びダンスシーンへと導かれていきますが、バックに出ていたのは実際にインド独立運動で立ち上がったいわばインドの英雄の方々だそうでして、こうした形での敬意とエンターテイメント性の追求が世界中の人々の心を掴んだのではないかと思います。

尚、私はインドも好きですしイギリスの文化は好きです。音楽特にロックは洗練されていますもんね。ただ、世界史的に見たイギリスについては複雑な気持ちになってしまいますね。

分断や差別のない世界である事を願います。

映画はとにかく最高な作品です!是非ご覧下さい!