きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

総理の夫

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ベストセラー作家・原田マハの小説「総理の夫 First Gentleman」を、田中圭中谷美紀の共演で映画化。妻が日本初の女性総理になったことで、自身も史上初のファーストジェントルマンとして担ぎ上げられてしまった鳥類学者の夫が、政界という未知の世界で奮闘する姿を描いた。少数野党の党首を務めている凛子と結婚10年目を迎えた鳥類学者の相馬日和は、ある朝、凛子から「もし私が総理大臣になったら何か不都合ある?」と意味深な話を投げかけられる。質問の意図を探ってもはぐらかされた日和は、そのまま野鳥観察の出張に出かけ、ろくに電波の届かない孤島で10日間を過ごす。しかし、その間に世間は激変。凛子が史上初の女性内閣総理大臣に選出されていた。そのことで自動的に史上初の「総理の夫」となった日和は、微力ながらも妻の夢を全力で応援しようと心に誓うが、予想だにしない激動の日々に巻き込まれていく。最愛の妻と過ごす時間もなくなり大騒動の毎日に振り回される日和を田中、愛する夫に支えられながら国の未来のため信念を貫く凛子を中谷が演じる。監督は「チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」「かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」の河合勇人。 

(映画.comより)

自民党総裁選が加熱した9月23日公開。たまたま休日だったその日、僕は先週扱った『マスカレード・ナイト』と本作を二本鑑賞。番組でのレビュー用のブログ記事は総裁選の結果を待ってからと待機しておりました。というのも結果次第では本作が非常にタイムリーな映画になると思うし、喋る内容も変わってくるからです。結果はご存知の通り。どうやら日本初の女性首相の誕生はまだまだ先の話しかなと思いました。

しかしですよ!この映画で描かれているのは女性の総理大臣ではあるものの、主人公はその夫なんですね。もし日本で女性首相が誕生したらその夫は…という題材で120分が展開されるわけです。

総理大臣・相馬凛子を中谷美紀、そして主人公・日和を演じるのは田中圭、そして監督は『俺物語!』、『チア⭐︎ダン』、『かぐや様は告らせたい』の河合勇人監督がメガホンを取りました。

で、僕は思いました。河合監督と言えば上記の作品群でもわかる様に若者をターゲットにした青春映画や恋愛映画で名前を鳴らした方ですよ。更にはコメディをベースにした作品ですね。政治という題材との相性は果たして如何かな?と。予告編でもコメディ色が強いという印象でした。比較するイメージとしては三谷幸喜監督の『記憶にございません!』が念頭にはありました。

で、実際に始まってみると振り切ったコメディ…うん、いつもの河合監督節だ。更に言えばツッコミを入れたくなる様な強引な展開もあるし邦画が苦手な人が顔をしかめそうなわちゃわちゃ感もある。でも正直言えば『かぐや様は告らせたい』に比べたらマシかな?みたいな…。

ただ、こんなのはご愛嬌と私なんかは割り切って見るのですが、途中から流れが変わるんですよ。それは出産や育児、シングルマザーの仕事等女性特有の諸問題が打ち出されてからですね。中谷美紀さんが総理大臣を演じてはいるものの、作中での彼女の年齢がまだ若いという事もあって出産の壁が立ちはだかるんですよ。育休を取りたいけどその間の政務はどうするのか?という問題ですよね。また、貫地谷しほり演じる総理の元で働く女性はシングルマザーであり、政治に関わる社会では子育てと仕事の両立が難しいものとして立ちはだかったり。しっかりとコメディ然としつつも、社会問題を提起しているんですね。

それにしてもこの映画においては中谷美紀さんの存在感が圧倒的なんですよ!相馬凛子内閣組閣シーンでの大階段での彼女がめちゃくちゃキレイ!更に言えばカッコいいんですよ!中谷美紀さんの好きな役では『源氏物語 千年の謎』での紫式部なのですが、こういう聡明で凛とした佇まいの役がめっちゃ合う女優さんですよ。その一方では『嫌われ松子の一生』とか『自虐の唄』の様な薄幸な女性を演じてもハマりますしね。

一方の田中圭さんの一見頼りなさそうなんだけど専門分野にはめっぽう熱く、また妻凛子を尊敬しつつも、彼女を支える男性役も良かったです!

ただ、一方ではどうしても突っ込んでおきたい所はあるので触れておきます。

まずは野鳥観察の為に孤島に10日間滞在後、東京に戻ってから妻の総理就任を知るという辺り。そもそも孤島に出向く前日ゆっくりと妻と食事していたり、慌ただしさが全くないんですよ。そもそも10日後に総理大臣になる議員がそんなにのんびりも出来ないだろうし、さすがに選挙に出馬する事くらい政治に疎い人ましてや夫であれば知らないわけないだろ?

それから日和の実家って日本でも有数の大企業であり、つまりは大金持ちなんですよね。決して貧乏人のひがみを言うつもりはないけど、ここって非現実的かもしれないけど超絶庶民の家庭か思い切って『花より男子』のつくしちゃんくらいの極端な家庭状況にした方がストーリー的にギャップが生まれてより面白くなった、更に言えば見ている人の共感性も高かったんじゃないかな?

比較対象として『記憶にございません!』をあげましたけど、ギャグの運びや政治的な切り込み方、更にはストーリーの深み等はどうしても『記憶に…』に軍配が上がりますね。

ただ、青春題材以外の河合監督の作品としては粗があるものの、意欲的で楽しませて頂きました!

今後も様々な題材を映像に落とし込んでほしいなと思いました。