きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

湯を沸かすほどの熱い愛

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末期ガンの宣告を受け、最後の時を迎えるまで献身的に家族の為に生きた女性のヒューマンドラマ。
宮沢りえの熱演が高く評価され、日本アカデミー賞をはじめ、数々の映画賞でも好成績を残しました。

夫・一浩(オダギリジョー)と共に銭湯を営んでいた双葉(宮沢りえ)。しかし、夫の蒸発により銭湯を休業しパン屋のパートで娘の安澄(杉咲花)を支えていた。ある日、勤務中に倒れた双葉。病院で検査を受けた結果、末期ガンで余命宣告をされ…。

当初は当然ながら落ち込む双葉なんですが、その後の行動力がとにかくスゴい!病人とは思えない程のバイタリティーで自分がすべき事に手をかけていきます。
まず、いじめに悩む娘の阿澄をいじめに立ち向かうべく激励し、(その結果阿澄はインパクト大な抵抗を学校で行う)蒸発した夫を連れ戻す。事もあろうか連れ子まで連れてくる夫だが、自分の娘の様に受け入れ銭湯を再開させる。
その後、阿澄と連れ子の鮎子と旅行に出掛け(その旅行も重要な意味を持ちます。)更に自分の実母に会いに行く(そのくだりが何ともやりきれないです。)
この様に残された時間内で自分と家族のあらゆる問題を解決していく双葉の姿には胸を打たれます。

本作においてのポイントをいくつかおさえておくとまず、伏線の回収が実に卓越しております。
前半、とある人物から双葉と安澄の元へカニが送られてくるシーン、道を尋ねる聾唖女性に安澄が手話で案内をするシーン。
「カニのくだりいる?」とか「何で安澄は手話が出来るの?」
その答えが旅行でのエピソードで明かされた時のシナリオ構成への驚きと言えば近年の日本映画でも群を抜いてた感があります。

また、ふと目を疑う様な強力なインパクトを与える演出がこの映画を語る上では欠かせないものとなっており、例えばいじめで制服を隠されてしまった安澄がとる精一杯の抵抗としてあらわれるのが教室でそれまで着ていた体操服を脱ぎ出し下着姿になるシーン(双葉からもらった勝負下着!)
旅行先の飲食店で会計を済ませた後、双葉がレジの女性をビンタするシーン。
いずれも一瞬何が起こったのかと混乱する様な描写なんですが、このシーンを挿入する事により、ひとつのエピソードを効果的に演出として強い印象を与えます。

さて、この映画。脚本も演出も宮沢りえをはじめとしたキャストの演技も非常に素晴らしくかなり満足度の高い作品です。しかし、どうしても気になってしまう点があるので最後に触れておきたいと思います。

娘・安澄のいじめに対しての双葉の対応が正解か否か問題です。
安澄はいじめに対しての恐怖から不登校の意思を示すシーンがあります。
それを奮い立たせ学校へ行かせ、前述の下着一枚での抵抗へと繋がります。
結果的に安澄の元へ制服は返され何となく一件落着っぽい雰囲気だったのですが、その後いじめがなくなったかどうかは別問題ですよね。
そもそもクラス内で下着一枚になる女生徒なんて男子からはビッチ扱いされ、女子からは異端児扱いでかえっていじめが悪化しそうなものなんですが。
安澄が不登校の意思を見せた時、敢えて学校行かせないという選択肢だってアリだと思うんですよ。
高卒資格取るとか大検取らせて進学するとかね。
或いは安澄にやりたい事があればその世界に飛び込んでみるとかもいいと思います。
とかく日本ではどんなに苛酷な環境でも逃げずに戦うという価値観が美徳とされる風潮があります。
大人であろうと子供であろうとね。
しかし、逃げるという選択肢を選び次に向かうというのは間違った価値観ではないと思うし、その方がより自分らしく生きていける可能性があるのも事実だと思います。
確かに周囲の目は黙っていないと思います。
しかし、少なくとも自殺するよりはいいんじゃないですか?
要は逃げた後、自分自身がどれだけ頑張れるかです。
逃げる事を怖がらず逃げるという戦い方だってあると声を大にして言わせて頂きます。


なんて映画と違う観点で熱くなっちゃいましたね、結論「逃げるは恥じたが役に立つ」です。

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