きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

任侠学園

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西島秀俊西田敏行がダブル主演を務め、社会奉仕がモットーの地元密着型ヤクザたちの奮闘を描いた今野敏の人気小説「任侠」シリーズを映画化したコメディ。義理と人情に厚すぎるヤクザ・阿岐本組。社会奉仕に目のない組長は次から次へと厄介事を引き受けてしまい、ナンバー2の日村はいつも振り回されてばかりだった。そんな彼らが、今度は経営不振の高校の建て直しに協力することに。学校には嫌な思い出しかない日村は子分たちを連れて仕方なく学園へ向かうが、そこで彼らを待ち受けていたのは、無気力・無関心な高校生と事なかれ主義の先生たちだった。それでも義理人情の正義を貫こうとする阿岐本組の情熱に、学園内の空気は徐々に変わっていくが……。共演に「フィッシュストーリー」の伊藤淳史、「サバイバルファミリー」の葵わかな、「きょうのキラ君」の葉山奨之

今回はかなり変わり種というのかな、さほどヒットしてるわけでもなく、話題の作品でもないそんな映画なんですが、たまにはそういう作品を見るのも一興かなと思い選択した次第です。
でもね、これが意外と面白かった!
俺の映画への選球眼決して間違ってなかったぞ、では早速お話ししましょう!

アウトローと学園、この組み合わせ。
そのプロット自体は決して新しいというわけではありません。
僕らの世代だと元ヤンキーの教師が問題を抱えるクラスを立て直す『G.T.O』なんてありましたし、ヤクザの娘である女教師・ヤンクミが生徒と真っ正面からぶつかり問題を解決していく『ごくせん』なんてところが浮かんできます。

ところがこの『任侠学園』の場合、ヤクザの組そのものが学校運営に携わり、尚且つその学校が『クローズ』の様な学園全体が弱肉強食の戦国時代の様なところではないというのがミソ。
よくあるヤンキーの更正が主ではないんですよね。

どこにでもあるフツーの学校。
生徒達も目立った問題児がいるというわけでもないんです。
ヤンキーも居ないし、いじめだってない。
でもそんな学校だからこそ表面的には見えない生徒達の問題が浮かび上がってくるんですよね。
そこに向き合うのが阿岐本組の面々なんですよ。


…なんて今サラッと面々と口にしましたけど、そこもポイントです。
『G.T.O』の鬼塚英吉や『ごくせん』のヤンクミの様に特定のアウトロー教師が問題を解決していくのではなく、集団で向き合っていくのが本作の特徴です。
一応、西島秀俊演じる日村という男が主体的に動きはするのですが、彼に手を貸す組の若い衆のサポートがあって初めて成立している、そんな構図です。
で、この阿岐本組。これがまたいいんですよ、ヤクザの組らしからぬアットホーム感。
西田敏行演じる組長の方針として社会奉仕をモットーに掲げながら活動して、地域の人達からは友達の様に声を掛けられる。
印象的なのはこの組長の「うちらはヤクザではあるが、暴力団ではない」という旨の発言。
社会からはぐれたアウトローな集団ではあるけど、カタギには手を出さないし、人の為に尽くす事を信条としている。
うん、確かに暴力は奮ってないから暴力団ではないわなぁ。
ただ、その一見温和な組長ですが、ここぞという時の迫力はホンモノ。
西田さんだけに『アウトレイジ』な雰囲気が漂うわけですよ。
西島さんもまた良いですよ!
学園の運営に難色を示しながらも、次第に生徒達の良きアニキとなっていく過程はまぁ、ありがちですけど嫌いではありません。
それから生徒役で光っていたのは葵わかなちゃんですね。
朝ドラの『わろてんか』のイメージが強い彼女ですが、ヤンキーではないけど、ちょっと突っ張ってて口の悪い少女を好演。
ホンモノのヤクザではある日村らを見ても「オッサン」と言ってのけるなかなかの胆力の持ち主。
そんな彼女にコワモテの日村が翻弄されたりいじられたりするわけですからね、映画を面白くさせるキーパーソンなんですよ。

その他、中尾彬光石研らのベテランを起用してますが、西田敏行中尾彬光石研とこの組み合わせ。
何か見覚えありませんか、ヤクザ映画で。
そう、『アウトレイジ』じゃないですか。
シリーズ二作目の『アウトレイジ ビヨンド』で顔を揃えた面々ですよ。
更にこの映画のキャッチコピーが「全員善人」ですからね。
監督の『アウトレイジ』愛を感じずにはいられませんよ(笑)

ちなみに教師先生は生瀬勝久さん。
この辺り『ごくせん』に寄せてますよね。
と、この様にキャスティングで路線の近い映画やドラマを連想させはしますが、パロディを入れない辺りは好感が持てます。

そしてもちろんコメディですから、ギャグも満載で終始楽しませてくれるのですが、この映画最大のテーマは踏み出せない人への応援なんですよ。
何かをやりたいと思っていてもなかなか足が動かない、そんな人はいませんか?
内にポテンシャルを秘めながらもそれを発揮する場に恵まれていない人はいませんか?
この映画はそんな人の背中を押してくれる様な作品でもあるのです。
ダンスコンクールに写真コンテストと得意なスキルを有しながらもそれを誰の目にも見せる事なくくすぶってる生徒の後押しする日村。
おせっかいかもしれないけど、でも確実に生徒達の心を動かす事は出来た!
あんた、下手な教師より立派な先生だよ!と見ていて何とも清々しい。

ただ、全体的にかなり楽しませてもらいましたけど、どちらかと言うとテレビドラマ向きかなという感じでした。
いや、悪い意味ではなくですよ。
生徒の心に寄り添いながら彼らの味方になる日村らの姿は良いんですよ。
はじめは反発の目を向けていた生徒達が次第に日村の思いに共感し、仲間になる。
学園ドラマの王道だと思うんですよ。
で、僕はそんな彼らの姿を毎週追いたいと感じました!
1クール12話で阿岐本組の学園問題劇を見た後、劇場版にスライドさせた方がよかったんじゃないかな。
いや、むしろその逆パターンでもいい。
この映画を機に深夜ドラマででもやってくれたら僕はチェックしますよ!

この映画をこのまま埋もれさせてしまうにはあまりに惜しい!
そんな事を思ったきんこんでした。