きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

恋妻家宮本

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2017年1月公開作。『家政婦のミタ』などのヒット作を持つ遊川和彦による初の劇場公開監督作。阿部寛天海祐希の夫婦役も話題となりました。

料理好きな中学教師・宮本洋平(阿部寛)はファミレスに行っても即決で注文が出来ない様な優柔不断な男。ある日、学生時代に読んでいた本を読み返そうと『暗夜行路』を手に取ると、ある物が本に挟まれていた。それは妻・美代子(天海祐希)が書いた離婚届だった。

何気ない日常から妻の離婚届を発見し、展開されるホームコメディと言うと近年だと『家族はつらいよ』の一作目を思い出すのですが、『家族は…』の橋爪功吉行和子という熟年離婚という響きに生々しさを感じさせてくれる大ベテランお二人に比べると阿部さんと天海さんはスマートでスタイリッシュな印象を感じるので熟年離婚のイメージとしてはややリアルさに欠けるかなと感じます。

なんて初っぱなからツッコんじゃいましたが、これはフツーに良い話しです。
ただし、いち教師を主人公とした学園ドラマとしてです。
洋平は優柔不断で頼りない男という設定ですが、これは彼の職業・教師としても同様です。
生徒をアダ名で呼んだりして生徒との距離を近づけ様とする洋平。自分では生徒から慕われている人気教師と思い込んでる洋平なのですが、細かい所への思慮にかけ、クラスのお調子者(を演じている)ドンの複雑な心理を汲み取る事が出来ず、洋平が顧問をつとめるサバイバル料理部へ部員を入部させる事しか頭にありません。
そんな洋平に女子生徒のメイミーからは「教師に向いてない」なんて言われる始末。
しかし、複雑な家庭環境のドンの為に卵料理のレシピを渡したり(洋平流の卵かけご飯がメチャメチャうまそう!)入院する母親の為、一緒に料理を作って弁当を持って行ってあげたりと少しおせっかいであっても一人の生徒の為にハートフルな行動を起こす「めっちゃいい先生」なんです。
見直したメイミーからも「教師に向いてるかも」なんて前言撤回されちゃいます。(何で上から目線なんだよとツッコミたくなりますがさておき)
全編通してもこの生徒とのエピソードにかなりの尺を使ってましたね。
仮に『クッキングティーチャー』みたいな(あくまで仮ですよ)タイトルの全12話の連続ドラマなら結構人気でたかもしれませんよ。(映画ではなくドラマね!)

つまり…裏を返せば…。

どうしてもテレビドラマの域を越えないんですよ。


そもそも夫婦の危機がテーマの映画なのに、全然危機感がないんですよね。
冒頭ではファミレスで食事をし、帰宅後にはワインを空けてみたり、これからは「お父さん、お母さん」ではなく下の名前で呼ぼうなんて話してみたり。出来ちゃった結婚でいわゆる新婚さんらしい生活がなかったからこれからは新婚気分で…なんてフツーにラブラブな夫婦ですからね。

結局離婚届を見つけてからの一連のエピソードは洋平の一人相撲でもあるのですが。
真相が判明してからのくだりも違和感を感じてまして、何かあった時の切り札として離婚届を用意してるってそれ、夫としての信用なくね?
「今は何も問題ないけどこれからは何があるかわからない。その時がきたらすぐに出せる様に準備をしておく」って事でしょ?
世の奥様方はそんな事してるんですか?
それから洋平が料理教室仲間の真珠(菅野美穂)と飲みに行くくだり。
佐藤二郎演じる夫と不仲の真珠がその原因をセックスにあると判断し、洋平に「試してほしい」とラブホまで行きます。まぁその時点でツッコミたいのですが、百歩譲るとして試しにしたセックスの相性が良くてセフレにでもなってたらどうしてたんだよ。ゲス不倫の始まりですよ(笑)離婚の原因を自分で作ってる事になるじゃないですか?
結果的に真珠の夫が倒れたという知らせにより病院に駆けつけた事でゲス展開は避けられたのですが。

後、洋平と美代子の若い頃の描写について。
現在50歳の洋平、双葉夫妻は前述の通り学生時代に出来ちゃった結婚をします。
それが20代前半と考えると1987~1990年頃という事になります。
しかし、その時代の空気感を全く感じないんですよ。世はバブル真っ只中。そんな中、地味な服装でファミレスでデートです。(そもそも毎回食事がファミレスってどうなんだ問題がありますが、それは置いといて)
彼らがいわゆるバブルのパブリックイメージから外れた青春時代を過ごしていたとも言えますが、それならそれでファミレスの客として遊び疲れたボディコン・ワンレンギャルがぐったりしてる描写があったり店内BGM にLINDBERGの『今すぐKiss Me 』が流れていたり(あくまで一例ですよ)細かい時代を写す描写があればよかったんですけどね。そもそもこの時代にも地味な若者には地味な若者なりのファッションはあったでしょうに。


エンディングでは吉田拓郎の『今日まで、そして明日から』が起用されています。
その曲のチョイス自体は良いと思います。
ただ、問題はエンディングの演出と曲の使い方ですよ。
イントロが流れて「おっ、拓郎」と思ったら歌い出すのは阿部寛ですからね。
「お前が唄うんかい!」て『ごっつええ感じ』の今ちゃんのツッコミ思い出しましたよ(笑)
その後は出演者一人一人が1フレーズずつ唄い繋ぎ最後は『ウィ・アー・ザ・ワールド』さながらの大合唱。
何を思ってそんなミュージカルみたいにして閉めようと思ったのでしょうか?
ノリが古臭いし、そもそもミュージカルにするタイプの曲ではないでしょうに。

とまぁ良くも悪くもテレビドラマでしたね。ドラマならそこそこ面白いけど映画で見るタイプではないという。遊川さんがドラマの人だからという事なんでしょう。
ちなみにデニーズがやたらよく出るなと思ったら『ファミレス』という原作がある様です。

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